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act2 約束は守りましょう
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しおりを挟む「う、わ…まだ残ってる。」
月曜日の朝、出勤の支度をする私は鏡の前で思わず声を漏らした。そこに映ったのは隠しきれないキスマークの跡。歯形までついて、服だけでは隠しきれそうにない。真夏だというのにスカーフを巻いてなんとか誤魔化すしかなかった。
(エリスさんに流されて色々好き放題されたけど…これ以上好きにさせたらもうこの村には居られなくなる気がする…)
今日は隣接する小学校の授業も受け持ったためこれの元凶と顔を合わせることなく、午前中の授業が終わった。フルで授業をしたため、やっと訪れた昼休み。念願のお昼ご飯の時間だとウキウキしているととんでもない言葉が耳に入ってそれどころではなくなる。
「用務員のスチュアートさん見たんだけどさ、首筋にキスマークいっぱいついてて…よっぽど独占欲強い彼女いるんだなあの人」
何の気なしに言ったであろう同僚の話に飲みかけのコーヒーを噴き出した。こっちが暑い思いして隠してるのに彼はそんな気全くないようだ。
「えっ、あの無愛想で…言葉悪いですけどもっさりした感じのスチュアートさんの彼女って…どういう人なんだろう」
「でも獣人族のなかでもいい体はしてるよなぁ」
好き勝手に話している職場の雰囲気に耐えきれず弁当を持って駆け足で用務員室へと向かった。そのまま勢いよくドアを開けると呑気に相変わらずすごい量の昼ごはんをつまんでいるところだった。
上半身は全開、ほぼ半裸で首にタオルも巻いていない。首筋のキスマークは丸見えだ。
「な、なななな…っ、なんて格好で仕事してるの!!!!」
会心の一撃を喰らわせずにはいられない。見てすぐに頭に拳を落とした。
「いってーな…暑いんだからしょうがないだろ…」
「せめて首にタオルくらい巻いてキスマーク隠してよ!職員室で噂になってるじゃん!」
「噂ァ?」
心底めんどくさそうにサンドイッチを食べながら話を聞くエリスさん。そういうの興味なさそうなのは分かるけどもう少し関心を持って欲しい。
「独占欲の強い彼女にめちゃくちゃキスマークつけられてるって…」
「はっはっはっ…おもしれぇな、そんなこと言ってんのか。お前もその暑っ苦しいスカーフ外して俺の証見せつけてやれば?」
「馬鹿なこと言わないで!」
楽しそうに笑いながら言う彼が憎たらしい。そもそも彼の首に沢山のキスマークを付けたのも眠くてしょうがない時に「もっと付けないとちんこねじ込む」と半ば脅されながらつけたものだ。
「まぁもう知られちまったんならしょうがないだろ、独占欲の強い彼女サン」
「だ、誰が!」
「まぁまぁ落ち着いてメシ食えよ。腹減ってるだろ」
たしかにお腹は減ってる。しかも目の前でこれだけの弁当を見たらお腹の虫が豪快に鳴った。渋々自分の弁当を開けてもそもそと食べ出した。
「でもそういや前に俺お前と付き合ってんのかって聞かれたことはあったわ」
「なっ…」
「だって俺に話しかけてくるやつなんて全くいないのに毎日飽きもせず2年も俺の体求めて来るんだから誤解されてもしょうがないだろ。俺は体目当ての美術馬鹿には興味ないって返したけどな」
「言い方…っ!他にもっとあるでしょ!」
そんな風に周囲に思われていたのかと思うと周りが見えないような行動をするのはやめようと胸に刻んだ。
「まぁ、ベッドの中であんなに可愛い姿見た今となっては、お前が彼女ってのも悪くないな」
「私は付き合うならもっと優しくて思いやりのある人がいいです!」
「あぁ?優しくしてヤってんだろ…」
あれで優しいつもりなのだろうか。あんなに淫語と辱めが飛び交うセックスが。
「予鈴鳴ったら起きるからそれまで膝貸せ、膝。それまで寝るから」
さっきまであったご飯はあっという間に空になっていてエリスさんは私の返事を聞く前に勝手に私の膝に頭を乗せて寝始めた。
避けようとしてもしっかり体重をかけられて既に夢の中に落ちている。もう諦めるしか無さそうだ。
「私のこと体目当てって…エリスさんに言われたくない」
そう文句を言いつつも先程の言葉が頭の中を流れた。
(お前が彼女ってのも悪くないな)
恋人関係ってどういうものか分からないけど…エリスさんと…恋人になったら…
「いやいやないない」
甘やかしモードの彼が常時そのままなら文句はないが。優しく私を撫でて、甘い言葉で甘やかして、蕩けるくらいのキスをしてくれる彼。
そういう女性の扱いに慣れてるところを見ると付き合ってたこととかもあるんだろうなと考えたりしてなんだか胸の奥がぎゅうと締め付けられた。
「…?なに、今の…」
よく分からない感覚に首を傾げているとエリスさんが何か寝言を言っているのが聞こえた。
「と、う…さん…っ」
普通なら聞き逃すであろうその寝言。だけどそう言う彼の表情があまりにも険しくて、私の心臓は大きく鳴った。
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