我儘女に転生したよ

B.Branch

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互助組合は危険な所です

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「五十二番の番号札をお持ちの方、窓口にお出でくださ~い」

ザワザワとした屋内に朗らかな女性の声が響く。

、、、銀行?
互助組合ギルドの門を潜ると、そこはあまりにも以前と様変わりしていた。

えっと、、、入る建物間違えてないよね?
辺りを見回してみる。うん、互助組合ギルドですね。
"男子三日会わざれば刮目して見よ"って感じ?ちょっと、違うか。

頑張ったんでしょう。並々ならぬ努力と熱意(怨念?)の跡が見えます。
受付のお姉さん達限界来てたっぽいからね。
それがこの大変革をもたらしたのだろう。

数日前に見た無秩序な様子や滞った行列は、ここ王都の互助組合ギルドから姿を消していた。
窓口にはにこやかな笑顔で働くお姉さん達。流石にソファはないが、用紙が記入出来るテーブルと簡易の椅子。そして、冒険者に説明等をする案内係達。
うん、まんま銀行だね。私の提案の所為でこうなったんだろうけど。

「、、ナさん!」

銀行の、いな互助組合ギルドの番号札は何処だろうと思っていると、突然横から衝撃が来た。

う、何!?アナコンダ!?凄い締め付けで、骨がキシキシいっている。まさか互助組合ギルド内で襲われるなんて!
ベルタが散々言っていた危険とはこの事だったのか!
イタタタタ、、、ギブです、、、ガク。

「え!?ちょっと、イーナさん!?大丈夫ですか!?」

ようやく締め付けが無くなったと思ったら、次はガクガクと揺さぶられる。
息もつかせぬ連続攻撃、、、やはり互助組合ギルドは油断しては駄目な場所でした、、、

「何をしておる!恩人を殺す気か!」

「違いますよ!ちょっと感謝の抱擁をしただけです!」

ぐったりした私の前で男女の言い争いが始まる。
男の方は先日の互助組合ギルド長だ。そして、女の方は恐ろしい大蛇の化身、ではなく(多分?)、勿論、互助組合ギルドの受付嬢クラーラさんだった。

「グルル」

ディーターが心配そうに体を寄せて来る。
一般のか弱い(見た目はね)女性に危害を加える訳にいかなかったようで、申し訳無さそうにしている。

「大丈夫よ。骨は折れてないみたい」

「イーナさん、酷いです!こんな細腕で抱き付いただけで骨が折れる訳ありませんよ!」

クラーラさんが自分の腕を見せながら抗議の声を上げる。
見ると、クラーラさんの腕は確かに華奢で、何処にあの大蛇の如き怪力が潜んでいるのか不思議になる。
ベルタとは別の意味で敵に回してはいけない人だと覚えておこう。

「クラーラさん、良かったらこれ皆さんで召し上がってください」

取り敢えず、賄賂のロールケーキを差し出しておく事にする。
ストレスが溜まりまくっていた受付のお姉さん達の為に持って来たものだ。
あ、でも大蛇にはお酒だったかな!?失敗した?

「まあ、ありがとうございます!食べ物ですか?」

「ええ、お菓子です。すみません、お酒じゃなくて、、、」

「お酒?お菓子の方が嬉しいに決まってますよ!甘い物は贅沢品で滅多に口に出来ませんから」

良かった。"クラーラさん大蛇の化身疑惑"は払拭出来ていないが、やっぱり女子には甘い物のようだ。

「よいのか?そんな貴重な物を貰っても。こちらの方が互助組合ギルド改善の件で世話になった礼をせねばならんのに」

「そうでした!こちらから何かお礼をしようと思っていたのにこんなお土産を貰ってしまって、、、しかも、さっきは力を込め過ぎちゃってごめんなさい、、、」

互助組合ギルド長の言葉にクラーラさんも申し訳無さそうに項垂れる。

「いえ、私は大した事はしていませんから。少し気になった点を指摘しただけですよ」

「いや、お主の案でどれ程皆が助かった事か!あのまま混雑が解消されなければ、いずれ大きな問題になっていた事だろう。王都の治安にも影響していたかもしれん。本当に感謝する」

「イーナさん、互助組合ギルド受付を代表してお礼を言います。本当にありがとうございました!この互助組合ギルド改善は国にも報告がいっていますので、もしかしたら国王様から感謝状が出るかもしれませんよ!」

え!?国王様の感謝状!?それはまずいですよ!
王宮には知り合いが多過ぎて、ばれたら大変な事になります。
結婚前までは、祖母が前国王の妹だった事もあり、前国王の妻である王大后様によくお呼ばれして頻繁に王宮に行っていた。
母親から離れられる事もあって、王宮は小さなアマーリエにとっても安息の地だったのだ。

「え!?まさか、私の事も報告したのですか!?」

「いや、本来、互助組合ギルドは国とは関係ない独立した組織だ。本当は報告の義務はないが、治安にも関わる事だったので、問題が無くなった旨と改善方法を伝えただけじゃ。だが、国の方でも驚いていたようなので、もっと詳しく聞かれるかもしれん」

良かった!まだ、私の事は報告されていないようですね!

「あの、私が提案した事は黙っていてもらえませんか?あまり目立つのは好きでは無くて、、、」

うさ耳仮面が何を言っている?って感じだが、ここはきちんと口止めしておかくては!
王宮にはクリストハルト様も、、、お父様も、いる。

「ふむ、お主がそう言うなら黙っているが、本当に良いのか?報奨金くらい出るかも知れんぞ?」

「そうですよ、勿体無いです!」

「いえ、おそれ多過ぎますので」

固辞する私に困惑顔の二人だったが、何とか納得してもらい、本題の魔法の講習のある場所に互助組合ギルド長と移動することになった。

「ここじゃ」

互助組合ギルド長に案内されたのは、机と椅子が並ぶ学校の教室のような場所だった。
教室の中には何人かの受講者がもう席に着いていたので、私も座る事にする。

「待たせたな、今から魔法の初級者講習を行う!殆どの者は簡単な魔法なら使用した事があると思うが、ここでは初歩の初歩から講義するので聞くように!」

まず、互助組合ギルド長が語ったのは例の『魔法を使用するにあたり、、、』っていう注意喚起だった。
生徒達はつまらなそうに聞いていたが、これは本当に大事な事だと、皆に声を大にして言いたい!聞かないとえらい事になる(なった)よ!

そして、魔法の成り立ちと歴史から、魔法の基本的な種類の話に移っていく。
魔法は自分の中にある魔力を形ある物に変化させるもの、所謂いわゆる無から有を作り出すものと、目の前にある物を魔力で変化させるというものがあるそうだ。

無から有か、、、本当にそうなのかな?火とか水は目に見えなくてもそこに無いわけではない。
空気中の成分を魔力で変化させているって事は無いのかな?
でも、大量の火や水を空気中から取り出したら大変な事になるから、やっぱり無いものを魔力で作り出しているってことなのかな。
やっぱり魔法は凄いですね!

あ、じゃあ、有から無にする事も可能なのかな?火を消したり水を消したり。
その場合、消えたものはどこへ行くんだろう?
魔力に戻る訳では無さそうだ。恐らく逆に魔力を消費するのだろう。
う~ん、そっか、消すのは有から無にするってことではなく、"目の前に有るものを魔力で変化させる"って方になるのかな?

考えれば考える程、魔法って不思議で奥が深いですね!
これから学んでいくのが凄く楽しみです!
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