モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。

霜月零

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フラグは安全とは限らないのね(2)

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「貴方、わたくしを誰だと思っているのかしら。このような事をして、ただで済むとでも?」

 紅色の瞳を、すっと細める。
 お姉様が良くする表情。

 声を荒げる必要なんてない。
 こうするだけで、相手は大抵息を飲む。

 男爵家の五男もそう。
 私に見つめられた彼は、その場で固まった。

「だ、誰だよ。誰だか知らないですが、いきなり突き飛ばされれば、反論も、す、するでしょう」

 うん、しどろもどろで敬語交じりね。
 身分の違いに気づいたのかしら。
 でも、私の顔をはっきりと見てもわからないなんて。

 あぁ、そうね。
 男爵家の子息なのだから、お茶会にはあまり出ないわね。
 私も、伯爵家ぐらいまでのお茶会にはよく顔を出していたけれど、男爵家主催のお茶会にはあまり出向いていなかった。

 別に見下していたからじゃないのよ?
 私とお姉様主催の侯爵家のお茶会には、どの男爵家もきちんと招いていたから。

 ただ、侯爵家の人間を招くとなると、男爵家に物凄く負担がかかるのよ。
 だから、特に仲の良いご令嬢が居ない場合は、不用意に参加しないようにしていたの。
 お姉様がひょいひょいお出かけしちゃうから、その分、私は控えめにね。

 この男がどこの男爵家の子息だったかは覚えていない。
 けれど、相手にとっても私は見た事がない相手なのだろう。

「そうね。貴方の言うことももっともね。不用意に『ぶつかってしまった』ことについてはお詫びするわ。
 でも、彼女はわたくし、クリスティーナ=ローエンガルドの親友ですの。
 親友が見ず知らずの男にこんな無体を働かされていたら、動揺するとは思わなくて?」
「ろ、ローエンガルド?! ローエンガルド侯爵家、銀髪で紅目で双子の?!」

 あら、ちゃんと知っていたのね。
 突き飛ばした事をぶつかった事に捏造したのだけれど、爵位のほうが衝撃だったみたい。

「えぇ、そのローエンガルドですわ。貴方の名前をまだ聞いていないと思うのだけれど」
「あぁああっ?! わ、私は、コスイ=コーザ、です……」

 もう顔面蒼白で、立っているのがやっとな彼、コスイ=コーザ。
 コーザ男爵の子息だったのね。
 コーザ男爵なら一度お見かけしたことがあるわ。
 お父様の部下だったはず。

「そう、コーザ男爵のご子息なのね。コーザ男爵には一度お会いしたことがあるわ。
 今日の事は、お父様を通じてよくよくコーザ男爵にお話していただきますわね?」
「あ、あっ、そんな……っ」

 がっくりと、その場に崩れ落ちるコスイ。
 まぁ、良くて退学、悪くて貴族から除籍コースかしらね。
 
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