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四十六話目 精神の試練②

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 失格者は今のように転送されるのか。
 転送されるという事実を事前に言わなかったのは、動揺を誘うためか。
 今のところ動揺をあらわにしているものはいないが、どこに転送されるか分からないのでは、俺以外の人間は不安になっている可能性もあるかもな。

 まあ、今回の試練は一人残ればいいだけの話だからな。俺が失格になるとも思えないし、ほかの奴らがどんなに動揺しようが、どうでも良くはある。

 矢が飛んできてから、しばらく何も起きないまま時間が過ぎていく。一時間は過ぎたか?
 焦らして、突然何かが来ると、思わずびっくりする者が出るだろうという魂胆だろう。
 俺はそんな小賢しい手には乗らないがな。

 すると、突然景色が変わった。

 周囲に光景がいきなり青色に変わった。どうもかなり上空にいるみたいだ、強い風の音とと、その風が頬にあたる感触がする。下を見てみると、俺は細い岩に座っていた。その岩は非常に高い岩で、遥か下に地上が見える。

 その岩が突然消滅した。
 そして、リアルな落ちているという感覚に陥る。
 これは本当に落ちているにではないか?
 そう錯覚するくらい、リアルだった。
 まあ、仮に本当に宙の上に転送されたとしても、別にどうだっていいことではあるがな。
 落ちても残念なことに、死ぬことはないだろうし。
 俺は平気だったが、そうじゃないものもおり、

「きゃあああさあああ!!」

 落ちる恐怖に、ミナは泣きながら悲鳴を上げた。

 そして、地面まで来たというところで、白い部屋に戻った。ミナ以外に声を上げたものはいなかった。

「皆、ごめん……」

 彼女はそう言って、光に包まれて転送されていった。
 まあミナはあまり心臓が強いタイプではない。仕方のないことだろう。

 それから、大きな岩が頭上から降ってきたり、ドラゴンがブレスを吐いてきたり、首を剣で斬られそうになったり、色々あるが、残ったものは耐え続けていた。

 グレースとメオンは余裕な表情であったが、レミはかなり表情が青くなっている。そろそろ限界かもな。

 次に脱落するのはレミだろうと思ったが、その予想は外れた。

 大量のムカデやクモがいきなり、部屋に出現してきた。すると、

「にょわぁああっ!!」

 奇妙な悲鳴をメオンが上げて、物凄いスピードで立ち上がった。
 どうやら虫が苦手なようだな。しかし危ない。さっきの悲鳴が面白かったので、笑ってしまうところだった。
 レミは虫は平気なのか、騒ぎはしないが、メオンの様子を見て少し肩を震わせている。
 これ失格になるか?

 虫が消えて、失格者は一名と告げられた。
 どうやらレミは大丈夫だったようだ。

「ぐぬぬ……わしとした事が一生の不覚である」

 非常に悔しそうな表情を浮かべながら、メオンは転送されていった。

 そのあとも、雷が落ちてきたり、グールに囲まれたり、爆発寸前の爆弾が置かれて、それが爆発したりと、色々心を乱してくるようなことが起こるが、脱落者は出ず。

 グレースは相変わらず平気そうな表情、レミも逆に慣れてきたのか、顔色が良くなってきた。

 しかしいつまでやる気だこれ。
 どのくらいで終わるかなんて、言われていない。
 いつ終わるか分からない方が、精神的にきついからだろうか。

 そう思っていたら、

『次が最後だ』

 と声が聞こえてきた。

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