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四十五話目 精神の試練

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 知恵の試練のクリアが認められた。

 問題に間違えてばかりではあったが、これは面目躍如の活躍のはず。

 と思っていたが、

「い、今のはねぇ……」

「なんていうか……」

「まさに脳筋じゃのう」

 全員、呆れたような目で俺を見ている。

「お、俺が脳筋だと!? 馬鹿を言うな!! 問題を間違えていたのは、たまたまだからな。本来の俺は知的なのだ。一万年も生きていれば当然知的にもなる」

「説得力まるでなし……じゃな」

「「「うんうん」」」

 メオンの言葉に、レミ、アイシャ、ミナの三人も頷く。

 グレースは俺の一万年生きた発言に対して、疑問を持っているようだった。最後「まあ、冗談だろう」と呟いた。

『次は、精神の試練だ。精神の間へと転送しよう』

 そう声が聞こえた瞬間、再び光が俺たちを包んだ。


 ○


『精神の間へようこそ』

 光が収まり視界が戻ると、声が聞こえてきた。この声は最初から一切変わらないのだが、同じやつが喋っていると考えていいのだろうか。

 精神の試練は、真っ白い何もない部屋である。

 ここで今から何をしようと言うのか。

『精神の試練は、何事にも動じぬ心の強さがあるかどうかを測る試練。今その場で座りたまえ』

「どんな座り方でもいいのか」

『構わん。自分の好きな座り方で座りたまえ』

 好きな座り方と言われたので、俺は足を伸ばして座った。
 ほかの連中も、自分の好きな座り方で、座っていく。

『今からこの部屋に、数々の恐怖が来る。それらは全て幻で実害はない。貴様らは何があっても、その座った状態から動いてはならんし、声を出してもならん。黙って静かに、そこに座っておるのだ。全員が恐怖耐え切れず立ち上がったら、失格である。一人でも耐えきったら合格だ』

 恐怖ね……。

 俺を怯えさせるほどの怖いものってのは、あるのかそんなもん。
 全て幻影って言ってたしな。
 まあ、仮に幻影でなくとも、怖いものなんて俺にはもはやないがな。

『あと十秒後、試練開始を告げる音がなるので、その音が鳴って行こう、喋るもしくは動いた場合失格だ』

 そう言われてから、十秒後、指笛を拭くような音が部屋に響いた。開始の合図だ。

 最初の十秒間は何も起こらなかったのだが、突如弓を構えた兵士が現れて、こちらに向かって矢を放ってきた。

「うわぁああ!!」

 アイシャが回避行動を取ったが、ほかのものは冷静に見ていた。放たれた矢は幻影なので、当然俺たちの体をすり抜けていく。

「あ、あれ? すり抜けた? 何で?」

 こいつは、あれだ。精神の試練とかどうこう以前に、話を聞いていなかったようだ。つまりタダのバカだ。

「でも、これ失格だよね……あれー? どう言うことなんこれ。良くみんな座ってられるよね」

「お前みたいにバカじゃねーんだよ!」とツッコミたくなる衝動を俺は必死で抑える。ほかの奴らも同じく、ワナワナと震えて我慢している。

 危うくアイシャのせいで、全員失格になるところであった。

『一名失格』

 そう声が聞こえ、アイシャが光に包まれて、どこかに転送された。
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