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・・『開幕』・・
・・マーリー・マトリン・・4・・2・・
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・・接吻は初め、優しくマイルドなものだったが徐々に深く激しさを増して、最後の10数秒はお互いに貪るようだった・・引き剥がすように顔を離し、数秒見詰め合ってから優しいハグを10数秒交わして離れる・・。
「・・久し振りだったからかな・?・凄く情熱的だったね・・でも、とても好かったよ・・」
「・・もう・!・アドルさんったら、・・そんな事言わないで下さい・・恥ずかしいですから・!・」
・・そう言った時、微かだったがマーリーのお腹が鳴ったのが聴こえた・・笑いを必死で堪えて観ると、真赤に染めた顔を両手で覆って俯いている・・優しく肩を抱き寄せてハグする・・。
「・・分かった、マーリー、分かったよ・♡・大丈夫だ、マーリー、大丈夫・♡・夕食にしような・・♡・・手伝ってくれるかい・・♡・・」
・・まだ顔を真っ赤にさせたままで、手を外して頷く・・上着を脱いでエプロンを着け、マーリーにもエプロンを渡す・・食材を総て袋から出して、マーリーに言う・・。
「・・マーリー・・配信が終わった後、20人で行ったダイニング・バーで結構食べたんだ・・だから私はもうそんなに食べなくても好い・・スペシャル・シーフード・パスタにするからね・・ワインは2本買って来た・・冷やして置いてくれる・?・序でに卵を6個と生ハムとチーズを出してくれ・・」
・・一番大きい寸胴鍋でたっぷりと湯を沸かし、グラグラに煮立ててから塩を鷲掴みで投げ込み、パスタを茹でる・・マーリーに具材の調理を指示して自分も手伝いながらパスタの茹で加減を注意深く見極め、上げて湯を切ると直ぐにたっぷりのオリーブオイルで和える・・散らし野菜と飾り付け食材の準備・・具材の調理も手伝いながら、ワインの用意・・ちょっとしたサラダの準備・・コンソメ・スープの準備も始める・・卵を割り入れて具材の調理を仕上げていく・・トマトをスライス、レモンをカット、チーズを擦り下ろす・・ニンニクも少し生でスライスする・・パスタを分けて具材と合わせる・・スープを仕上げてカップに盛る・・サラダを仕上げて、擦り下ろしチーズをパスタにもサラダにも多めに振り掛ける・・飾り野菜と香菜を散らしてカットレモンを添えて、出来上がりだ・・。
・・ダイニング・テーブルにスペシャル・シーフード・パスタ・・サラダ・・コンソメ・スープ・・ワインとワイングラスを置いて、お互い対面に座る・・白ワインの封を切ってグラスに注ぎ、右手で持つ・・。
「・・久し振りの再会に・・」グラスを触れ合わせて澄んだ音を響かせる・・。
「・・頂きます・♡・」 「・・頂きます・・」
「・・フロアの仕事はどうだい・?・どうして僕と話が出来ないんだって、新規顧客の方に言われないかい・・?・・」
「・・時折言われますね・・でも、今は開幕直前でとても忙しいですのでと申し上げると、開幕して時間的に余裕が出来たら、アドルさんと話せるようにお願いしますねと仰って頂けます・・」
「・・そうだね・・まあ開幕したら平日の日中は普通に仕事が出来ると思うから・・明日の朝礼の時に皆に言うよ・・そのように仰られた顧客の方々を、取り敢えず優先的に僕に廻して下さいってね・・」
「・・大丈夫ですか、アドルさん・・?・・」
「・・大丈夫だろっ・?・て・・まさか何万人もいないでしょ・?・そう仰られた方は・・?・・」
「・・分かりません・・私がお話を受けただけでも、300人以上はいらっしゃいましたので・・」
「・・そう・・💧・・と言う事は・・5万人は下らないって事か・・まあ仕方ないね、少しずつでもやるしかないよ・・ありがとう、マーリー・・食べよう、食べよう・・!・・」
・・話を中断して、彼女に食べるよう促す・・結構食べて来たので私は、少ししか盛り付けなかった・・白ワインを含んで、マーリーの健康的な食べっぷりを見遣る・・彼女は素直で殆ど裏が無い・・彼女との付き合いでは、彼女の心を傷付けたくない・・彼女の欲求の総てに、殆ど応える事が出来ないにしてもだ・・何だって・・?・・おい、冗談だろ・?・アドル・・何でそんなに自分に都合の良すぎる考え方が出来るんだ・・?・・お前、モテてるからって全員をキープして置きたいのか・・?・・それは絶対に止めないとダメだぞ・・!・・止めないと結末は死ぬか殺されるかのどっちかだぞ・・!・・。
「・・あの・・どうしたんですか・?・アドルさん・・?・・」
「・・え・・?・・なに・・?・・」
・・マーリーの声で我に返る・・。
「・・すごく怖い顔をしていましたよ・・」
「・・ああ・・自分で自分を叱り付けていたよ・・」
「・・アドルさん・・大丈夫ですか・・?・・」
「・・大丈夫でいられるかどうかは、これからのやり方次第だな・・それよりどうだい、お味は・・?・・」
・・そう訊きながら、マーリーのグラスにワインを注ぐ・・。
「・・とっても美味しいです・・アドルさんの作って下さる料理は、どれもとても美味しくて感激しますし、感動します・・」
「・・賄い料理に毛の生えたようなものなのに、そこまで言ってくれて、ありがとうな、マーリー・・君の希望はアリソンから料理を習う事だったよね・・?・・必ず時間を作って君の希望が叶うようにするからね・・だから・・今夜はまた、ちょっと手伝って欲しいんだ・・それで・・それをすると僕は疲れてしまって君を構ってやれなくなると思うから、泊って行って欲しいんだけど大丈夫かな・・?・・ああ、着替えが無いとマズいか・・?・・」
「・・大丈夫です、アドルさん・・今夜、泊まる事になっても大丈夫なように、明日出社する時に着て行く服は持って来ましたので・・」
「・・そうなんだ・・マーリーは用意が好いね・・」
「・・ありがとうございます・・それで、何をお手伝いすれば好いんですか・・?・・」
「・・マーリー・・君は僕が凄く速いタイピング・スピードで書き込むのを観た事があるかい・・?・・」
「・・はい・・一度だけでしたが・・」
「・・そう・・ちょっと記憶が曖昧だけど、多分君が観た時のタイプ・スピードは僕の最高速の2割だったと思うよ・・だから、僕の最高速はマーリーが観た時の5倍まで上げられるんだ・・そして僕はその状態を40分程は維持できる・・40分を過ぎてその状態を維持しようとすると、何処かの時点で僕はパニックに陥って意識を失うと思う・・マーリー・・同盟が完成したので、同盟に参画してくれている艦長と副長専用の会議室を設定したんだ・・そこに僕は色々な記事を書いてアップしているんだけど・・これからその会議室に書き込もうとしているのは、開幕して初出航してからの2日間で行うべき様々な訓練プログラムについてなんだ・・それで君には・・書き込んでいる時の僕の様子を注意して観察して欲しい・・僕は40分を過ぎても書き込みの最高速を維持するから、君は僕を観察してパニックに陥りそうなったり意識を失いそうになったりしたら、どんな事をしてでも僕を止めてくれ・・好いかい・・?・・」
「・・分かりました・・でも、どうしてそんな危ない事をする必要があるんですか・・?・・」
「・・うん・・ひとつには自分の限界を知って置く必要があると言う事と、ふたつにはその限界時間までの最高速タイプスピードで、どれくらいの記事が書き込めるのかと言う事と、みっつには止めるべき時点での僕の状態を知って置きたいんだ・・何故かと言うとね・・ゲーム大会が開幕しても直ぐにこの対応が必要になる程の危機的な状況に陥る訳じゃないが、いずれは必ずこの対応が必要になる時が来る筈だ・・いつかは判らないけどね・・だから、その時の為のチェック・テストって訳さ・・好いかな・・?・・」
「・・分かりました・・私の眼で良ければ、精一杯眼を逸らさないようにして観ます・・」
「・・ありがとう、マーリー・・愛してるよ・・やあ、すっかり料理が冷めちゃったね・・長話に付き合わせちゃってゴメン・・今温め直して来るからね・・」
・・そう言って彼女の皿に右手を伸ばしたが、その手をマーリーは左手で押さえて首を振る・・。
「・・いいえ、大丈夫です、アドルさん・・大丈夫です・・アドルさんの料理は冷めても充分に美味しいです・・それより・・」
・・そう言いながらマーリーは私の右手を左手で取って立ち上がると、抱き付いて来た・・。
「・・アドルさん、大好きです、愛しています・・愛してると言って下さってありがとうございます・・でも、奥様を一番に愛してらっしゃるのは解っていますから、大丈夫です・・リサさんともキスされているのは知っていますから大丈夫です・・でも時々は私ともキスして下さい・・お願いします・・今日はどうしても我慢できなくなって来ちゃいました・・ごめんなさい・・」
・・ここで私は彼女を抱きすくめて唇を重ねた・・彼女は身を震わせながら話していた・・彼女の激情を解放させて落ち着かせてあげなければ、泣き崩れてしまうかも知れない・・マーリーの身体をしっかりと受け止めて慈しむように優しく抱き締める・・私からキスは深く交わさない・・髪を優しく梳いてあげながら160秒程でふっと顔が離れる・・涙はひとすじ流れていたが・・落ち着いたようだ・・。
「・・大丈夫だよ、マーリー・・明日の朝・・本社最寄りのステーションに君を送り届ける迄・・僕は君だけを観るから・・」
「・・分かりました・・ありがとうございます、アドルさん・・」
・・彼女を席に座らせる・・。
「・・まだ、食べられる・・?・・」
「・・いえ・・あの・・もうお腹が一杯で・・」
「・・分かったよ・・じゃあこれは保存モードに入らせて置いて、明日の朝食に使おう・・ミルクティーを淹れて来るからね・・?・・」
・・左頬にキスをして立ち上がる・・料理の残りを保存モードに入らせて、他の食器やグラスはシンクに入れる・・コーヒーを点ててミルクティーを淹れている間に、マーリーは食器とグラスを手早く洗って水切りカゴに入れてくれた・・。
「・・ありがとう、マーリー・・さあ、出来上がったよ・・」
・・一緒にまたテーブルに着き、彼女の前にミルクティーを置く・・彼女の対面に座って、スペシャルブレンドに口を付ける・・うん・・もうずっとこのブレンドでいこう・・。
「・・美味しい・・この一杯を頂けただけで、来た甲斐がありました・・ありがとうございます・・身震いする程の美味しさです・・どんな疲れもストレスもこの一杯で消え去ります・・」
「・・ありがとうな・・マーリーは本当に、純で素直で好い娘だよ・・今度、僕が実践している瞑想を指導するよ・・ストレスコントロールにも、心身の調整にも役に立つからね・・」
「・・ありがとうございます・・お世話になります・・宜しくお願いします・・」
「・・じゃあ、飲み終わって落ち着いたら、始めようか・・?・・」
「・・はい・・」
・・それから2人はコーヒーとミルクティーを味わいながら、左手を繋ぎ合わせて他愛の無い話をした・・飲み終わってカップを片付け、私は固定端末を起動させるとヘッドセットバイザーを取り出して起動させ、頭に装着してからマーリーと眼を合わせて軽く頷く・・固定端末からゲーム大会運営本部のメインサイトをヴラウズしてアクセスし、私のアクセスコードで軽巡宙艦の艦長としてアクセスできるデータベースに入る・・テキストエディターのウィンドウを30個開き、ペルスペクティブ・フォーカスコントロールと音声入力も併用して、書き込みを始める・・先ず一部重複するかも知れないが、初出航完了後の手順・・周辺宙域の安全確認・・同盟参画各艦の位置確認・・その上で単艦で行える様々な操艦訓練プログラムと、シャトルの操縦シミュレーション及び実際の操縦訓練と様々なパターンでのフォーメーション航行訓練のプログラムだ・・書き始めてから、10分程度で最高速に持っていく・・データベースも閲覧して確認しながら、単艦で行える様々な模擬戦闘訓練やシャトル戦隊を相手にした模擬戦闘訓練も様々なプログラムシフトパターンで書いていく・・訓練は2時間を1ターンとして、20分の休憩を挟む事・・3ターン経過で食事休憩を2時間挟む事・・6ターン経過で、デイシフトからナイトシフトへ移行する事・・ナイトシフトでの当直操艦体制で2ターン・・ミッドナイトシフトでの当直操艦体制でも2ターンの操艦訓練プログラムと模擬戦闘訓練プログラムを反復して行う事・・どのような訓練プログラムに於いても、準備・段取り・確認手順について詳述していく・・だがこれは飽くまで私が個人として考案する訓練プログラムであり、ヤンセン・パネッティーヤ艦長、ハイラム・サングスター艦長、ザンダー・パスクァール艦長から独自の訓練プログラム案が仕上げられれば、何時でもそれに置き換えるであろう事も明記する・・続いて艦集団同士で近接対艦集団戦闘を行う場合に於ける、ボクシングのディフェンステクニックとステップワークを採り入れた、艦集団としての回避操艦・防御操艦・攻撃操艦・反撃(カウンターショット)操艦についても、様々なヴァリエーションパターンとコンビネーションパターンで詳述していく・・同時に『カオス・カスタリア』のザック・オークマン艦長を艦と共に同盟に迎え入れるか否かについて、参画する艦長と副長の全員に向けて意見を求める一文を書き、私自身としては暗号秘密通信回線に付いては彼に教えるが、ファーストシーズンが終わるまで会議室に付いては教えない事を前提に、彼と『カオス・カスタリア』の参画を認めたい旨を書いた・・。
・・そこまで書いた処で、マーリーが私の頭からヘッドセットバイザーを外して左側から抱き付いて唇を重ね、舌を挿し入れて絡めて来たが、10秒程は何が起きたのか分からなかった・・舌と舌を絡め合わせながら私の耳とか頬を愛撫して来たので、漸く我に帰る・・。
「・・う・・あ・・え・・?・・マーリー・・?・・何・・?・・分かった・・マーリー・・?・・大丈夫だから・・!?・・」
・・20数秒で顔が離れる・・。
「・・フウ・・ハァ・・ありがとう、マーリー・・何分経った・・?・・どんな様子だった・・?・・」
「・・47分でした・・最後は身体をブルブル震わせながら、左右に大きく揺らせていました・・分かりませんでしたか・・?・・」
「・・全く分からなかった・・結構良い調子だと思っていたよ・・ありがとう、マーリー・・止めてくれて・・意識を失ったら、どうなるか判らない処だった・・」
「・・これが、アドルさんの最高速度ですか・・?・・」
「・・そう・・アドル・エルクのハイパーモードだね・・」
・・そう言いながらノロノロと立ち上がり、バイザーのスイッチを切ってゆっくりと身体を解し始める・・筋肉も関節も固く強張っていて痛い・・マーリーにも頼んで、ストレッチとマッサージを手伝って貰う・・そんなこんなで30分程を過ごし、漸く身体が軽く動くようになってくる・・。
「・・久し振りだったからかな・?・凄く情熱的だったね・・でも、とても好かったよ・・」
「・・もう・!・アドルさんったら、・・そんな事言わないで下さい・・恥ずかしいですから・!・」
・・そう言った時、微かだったがマーリーのお腹が鳴ったのが聴こえた・・笑いを必死で堪えて観ると、真赤に染めた顔を両手で覆って俯いている・・優しく肩を抱き寄せてハグする・・。
「・・分かった、マーリー、分かったよ・♡・大丈夫だ、マーリー、大丈夫・♡・夕食にしような・・♡・・手伝ってくれるかい・・♡・・」
・・まだ顔を真っ赤にさせたままで、手を外して頷く・・上着を脱いでエプロンを着け、マーリーにもエプロンを渡す・・食材を総て袋から出して、マーリーに言う・・。
「・・マーリー・・配信が終わった後、20人で行ったダイニング・バーで結構食べたんだ・・だから私はもうそんなに食べなくても好い・・スペシャル・シーフード・パスタにするからね・・ワインは2本買って来た・・冷やして置いてくれる・?・序でに卵を6個と生ハムとチーズを出してくれ・・」
・・一番大きい寸胴鍋でたっぷりと湯を沸かし、グラグラに煮立ててから塩を鷲掴みで投げ込み、パスタを茹でる・・マーリーに具材の調理を指示して自分も手伝いながらパスタの茹で加減を注意深く見極め、上げて湯を切ると直ぐにたっぷりのオリーブオイルで和える・・散らし野菜と飾り付け食材の準備・・具材の調理も手伝いながら、ワインの用意・・ちょっとしたサラダの準備・・コンソメ・スープの準備も始める・・卵を割り入れて具材の調理を仕上げていく・・トマトをスライス、レモンをカット、チーズを擦り下ろす・・ニンニクも少し生でスライスする・・パスタを分けて具材と合わせる・・スープを仕上げてカップに盛る・・サラダを仕上げて、擦り下ろしチーズをパスタにもサラダにも多めに振り掛ける・・飾り野菜と香菜を散らしてカットレモンを添えて、出来上がりだ・・。
・・ダイニング・テーブルにスペシャル・シーフード・パスタ・・サラダ・・コンソメ・スープ・・ワインとワイングラスを置いて、お互い対面に座る・・白ワインの封を切ってグラスに注ぎ、右手で持つ・・。
「・・久し振りの再会に・・」グラスを触れ合わせて澄んだ音を響かせる・・。
「・・頂きます・♡・」 「・・頂きます・・」
「・・フロアの仕事はどうだい・?・どうして僕と話が出来ないんだって、新規顧客の方に言われないかい・・?・・」
「・・時折言われますね・・でも、今は開幕直前でとても忙しいですのでと申し上げると、開幕して時間的に余裕が出来たら、アドルさんと話せるようにお願いしますねと仰って頂けます・・」
「・・そうだね・・まあ開幕したら平日の日中は普通に仕事が出来ると思うから・・明日の朝礼の時に皆に言うよ・・そのように仰られた顧客の方々を、取り敢えず優先的に僕に廻して下さいってね・・」
「・・大丈夫ですか、アドルさん・・?・・」
「・・大丈夫だろっ・?・て・・まさか何万人もいないでしょ・?・そう仰られた方は・・?・・」
「・・分かりません・・私がお話を受けただけでも、300人以上はいらっしゃいましたので・・」
「・・そう・・💧・・と言う事は・・5万人は下らないって事か・・まあ仕方ないね、少しずつでもやるしかないよ・・ありがとう、マーリー・・食べよう、食べよう・・!・・」
・・話を中断して、彼女に食べるよう促す・・結構食べて来たので私は、少ししか盛り付けなかった・・白ワインを含んで、マーリーの健康的な食べっぷりを見遣る・・彼女は素直で殆ど裏が無い・・彼女との付き合いでは、彼女の心を傷付けたくない・・彼女の欲求の総てに、殆ど応える事が出来ないにしてもだ・・何だって・・?・・おい、冗談だろ・?・アドル・・何でそんなに自分に都合の良すぎる考え方が出来るんだ・・?・・お前、モテてるからって全員をキープして置きたいのか・・?・・それは絶対に止めないとダメだぞ・・!・・止めないと結末は死ぬか殺されるかのどっちかだぞ・・!・・。
「・・あの・・どうしたんですか・?・アドルさん・・?・・」
「・・え・・?・・なに・・?・・」
・・マーリーの声で我に返る・・。
「・・すごく怖い顔をしていましたよ・・」
「・・ああ・・自分で自分を叱り付けていたよ・・」
「・・アドルさん・・大丈夫ですか・・?・・」
「・・大丈夫でいられるかどうかは、これからのやり方次第だな・・それよりどうだい、お味は・・?・・」
・・そう訊きながら、マーリーのグラスにワインを注ぐ・・。
「・・とっても美味しいです・・アドルさんの作って下さる料理は、どれもとても美味しくて感激しますし、感動します・・」
「・・賄い料理に毛の生えたようなものなのに、そこまで言ってくれて、ありがとうな、マーリー・・君の希望はアリソンから料理を習う事だったよね・・?・・必ず時間を作って君の希望が叶うようにするからね・・だから・・今夜はまた、ちょっと手伝って欲しいんだ・・それで・・それをすると僕は疲れてしまって君を構ってやれなくなると思うから、泊って行って欲しいんだけど大丈夫かな・・?・・ああ、着替えが無いとマズいか・・?・・」
「・・大丈夫です、アドルさん・・今夜、泊まる事になっても大丈夫なように、明日出社する時に着て行く服は持って来ましたので・・」
「・・そうなんだ・・マーリーは用意が好いね・・」
「・・ありがとうございます・・それで、何をお手伝いすれば好いんですか・・?・・」
「・・マーリー・・君は僕が凄く速いタイピング・スピードで書き込むのを観た事があるかい・・?・・」
「・・はい・・一度だけでしたが・・」
「・・そう・・ちょっと記憶が曖昧だけど、多分君が観た時のタイプ・スピードは僕の最高速の2割だったと思うよ・・だから、僕の最高速はマーリーが観た時の5倍まで上げられるんだ・・そして僕はその状態を40分程は維持できる・・40分を過ぎてその状態を維持しようとすると、何処かの時点で僕はパニックに陥って意識を失うと思う・・マーリー・・同盟が完成したので、同盟に参画してくれている艦長と副長専用の会議室を設定したんだ・・そこに僕は色々な記事を書いてアップしているんだけど・・これからその会議室に書き込もうとしているのは、開幕して初出航してからの2日間で行うべき様々な訓練プログラムについてなんだ・・それで君には・・書き込んでいる時の僕の様子を注意して観察して欲しい・・僕は40分を過ぎても書き込みの最高速を維持するから、君は僕を観察してパニックに陥りそうなったり意識を失いそうになったりしたら、どんな事をしてでも僕を止めてくれ・・好いかい・・?・・」
「・・分かりました・・でも、どうしてそんな危ない事をする必要があるんですか・・?・・」
「・・うん・・ひとつには自分の限界を知って置く必要があると言う事と、ふたつにはその限界時間までの最高速タイプスピードで、どれくらいの記事が書き込めるのかと言う事と、みっつには止めるべき時点での僕の状態を知って置きたいんだ・・何故かと言うとね・・ゲーム大会が開幕しても直ぐにこの対応が必要になる程の危機的な状況に陥る訳じゃないが、いずれは必ずこの対応が必要になる時が来る筈だ・・いつかは判らないけどね・・だから、その時の為のチェック・テストって訳さ・・好いかな・・?・・」
「・・分かりました・・私の眼で良ければ、精一杯眼を逸らさないようにして観ます・・」
「・・ありがとう、マーリー・・愛してるよ・・やあ、すっかり料理が冷めちゃったね・・長話に付き合わせちゃってゴメン・・今温め直して来るからね・・」
・・そう言って彼女の皿に右手を伸ばしたが、その手をマーリーは左手で押さえて首を振る・・。
「・・いいえ、大丈夫です、アドルさん・・大丈夫です・・アドルさんの料理は冷めても充分に美味しいです・・それより・・」
・・そう言いながらマーリーは私の右手を左手で取って立ち上がると、抱き付いて来た・・。
「・・アドルさん、大好きです、愛しています・・愛してると言って下さってありがとうございます・・でも、奥様を一番に愛してらっしゃるのは解っていますから、大丈夫です・・リサさんともキスされているのは知っていますから大丈夫です・・でも時々は私ともキスして下さい・・お願いします・・今日はどうしても我慢できなくなって来ちゃいました・・ごめんなさい・・」
・・ここで私は彼女を抱きすくめて唇を重ねた・・彼女は身を震わせながら話していた・・彼女の激情を解放させて落ち着かせてあげなければ、泣き崩れてしまうかも知れない・・マーリーの身体をしっかりと受け止めて慈しむように優しく抱き締める・・私からキスは深く交わさない・・髪を優しく梳いてあげながら160秒程でふっと顔が離れる・・涙はひとすじ流れていたが・・落ち着いたようだ・・。
「・・大丈夫だよ、マーリー・・明日の朝・・本社最寄りのステーションに君を送り届ける迄・・僕は君だけを観るから・・」
「・・分かりました・・ありがとうございます、アドルさん・・」
・・彼女を席に座らせる・・。
「・・まだ、食べられる・・?・・」
「・・いえ・・あの・・もうお腹が一杯で・・」
「・・分かったよ・・じゃあこれは保存モードに入らせて置いて、明日の朝食に使おう・・ミルクティーを淹れて来るからね・・?・・」
・・左頬にキスをして立ち上がる・・料理の残りを保存モードに入らせて、他の食器やグラスはシンクに入れる・・コーヒーを点ててミルクティーを淹れている間に、マーリーは食器とグラスを手早く洗って水切りカゴに入れてくれた・・。
「・・ありがとう、マーリー・・さあ、出来上がったよ・・」
・・一緒にまたテーブルに着き、彼女の前にミルクティーを置く・・彼女の対面に座って、スペシャルブレンドに口を付ける・・うん・・もうずっとこのブレンドでいこう・・。
「・・美味しい・・この一杯を頂けただけで、来た甲斐がありました・・ありがとうございます・・身震いする程の美味しさです・・どんな疲れもストレスもこの一杯で消え去ります・・」
「・・ありがとうな・・マーリーは本当に、純で素直で好い娘だよ・・今度、僕が実践している瞑想を指導するよ・・ストレスコントロールにも、心身の調整にも役に立つからね・・」
「・・ありがとうございます・・お世話になります・・宜しくお願いします・・」
「・・じゃあ、飲み終わって落ち着いたら、始めようか・・?・・」
「・・はい・・」
・・それから2人はコーヒーとミルクティーを味わいながら、左手を繋ぎ合わせて他愛の無い話をした・・飲み終わってカップを片付け、私は固定端末を起動させるとヘッドセットバイザーを取り出して起動させ、頭に装着してからマーリーと眼を合わせて軽く頷く・・固定端末からゲーム大会運営本部のメインサイトをヴラウズしてアクセスし、私のアクセスコードで軽巡宙艦の艦長としてアクセスできるデータベースに入る・・テキストエディターのウィンドウを30個開き、ペルスペクティブ・フォーカスコントロールと音声入力も併用して、書き込みを始める・・先ず一部重複するかも知れないが、初出航完了後の手順・・周辺宙域の安全確認・・同盟参画各艦の位置確認・・その上で単艦で行える様々な操艦訓練プログラムと、シャトルの操縦シミュレーション及び実際の操縦訓練と様々なパターンでのフォーメーション航行訓練のプログラムだ・・書き始めてから、10分程度で最高速に持っていく・・データベースも閲覧して確認しながら、単艦で行える様々な模擬戦闘訓練やシャトル戦隊を相手にした模擬戦闘訓練も様々なプログラムシフトパターンで書いていく・・訓練は2時間を1ターンとして、20分の休憩を挟む事・・3ターン経過で食事休憩を2時間挟む事・・6ターン経過で、デイシフトからナイトシフトへ移行する事・・ナイトシフトでの当直操艦体制で2ターン・・ミッドナイトシフトでの当直操艦体制でも2ターンの操艦訓練プログラムと模擬戦闘訓練プログラムを反復して行う事・・どのような訓練プログラムに於いても、準備・段取り・確認手順について詳述していく・・だがこれは飽くまで私が個人として考案する訓練プログラムであり、ヤンセン・パネッティーヤ艦長、ハイラム・サングスター艦長、ザンダー・パスクァール艦長から独自の訓練プログラム案が仕上げられれば、何時でもそれに置き換えるであろう事も明記する・・続いて艦集団同士で近接対艦集団戦闘を行う場合に於ける、ボクシングのディフェンステクニックとステップワークを採り入れた、艦集団としての回避操艦・防御操艦・攻撃操艦・反撃(カウンターショット)操艦についても、様々なヴァリエーションパターンとコンビネーションパターンで詳述していく・・同時に『カオス・カスタリア』のザック・オークマン艦長を艦と共に同盟に迎え入れるか否かについて、参画する艦長と副長の全員に向けて意見を求める一文を書き、私自身としては暗号秘密通信回線に付いては彼に教えるが、ファーストシーズンが終わるまで会議室に付いては教えない事を前提に、彼と『カオス・カスタリア』の参画を認めたい旨を書いた・・。
・・そこまで書いた処で、マーリーが私の頭からヘッドセットバイザーを外して左側から抱き付いて唇を重ね、舌を挿し入れて絡めて来たが、10秒程は何が起きたのか分からなかった・・舌と舌を絡め合わせながら私の耳とか頬を愛撫して来たので、漸く我に帰る・・。
「・・う・・あ・・え・・?・・マーリー・・?・・何・・?・・分かった・・マーリー・・?・・大丈夫だから・・!?・・」
・・20数秒で顔が離れる・・。
「・・フウ・・ハァ・・ありがとう、マーリー・・何分経った・・?・・どんな様子だった・・?・・」
「・・47分でした・・最後は身体をブルブル震わせながら、左右に大きく揺らせていました・・分かりませんでしたか・・?・・」
「・・全く分からなかった・・結構良い調子だと思っていたよ・・ありがとう、マーリー・・止めてくれて・・意識を失ったら、どうなるか判らない処だった・・」
「・・これが、アドルさんの最高速度ですか・・?・・」
「・・そう・・アドル・エルクのハイパーモードだね・・」
・・そう言いながらノロノロと立ち上がり、バイザーのスイッチを切ってゆっくりと身体を解し始める・・筋肉も関節も固く強張っていて痛い・・マーリーにも頼んで、ストレッチとマッサージを手伝って貰う・・そんなこんなで30分程を過ごし、漸く身体が軽く動くようになってくる・・。
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会社からの給与とボーナス・艦長報酬と配信会社からのギャラ・戦果に応じた分配賞金で大金持ちになる事と、自分が艦長として率いる『ディファイアント』に経験値を付与し続けて、最強の艦とする事。
スタッフ・クルー達との関係構築も楽しみたい。
運営推進委員会の真意・本当の目的は気になる処だが、先ずは『ディファイアント』として、戦い抜く姿を観せる事だな。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
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