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CH10 泥棒猫

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彼は細やかな白い泡で包まれている。

その中で、彼は喘ぎ続ける。

大人の男のタッチは優しく、繊細だった。

これまで知った男、義父・警察官共に、激しく己の性欲を叩きつけるように荒々しく彼を貪った。

大人の男は違う。

“君を磨きたい”

その言葉を実践するように彼の身体にソープとお湯を染み込ませたスポンジをゆっくりと丁寧に、そして、優しく、彼の身体に這わせる。

泡が彼を包んでいる。

彼がそれ以上の愛撫を求めて大人の男にすがり付こうとすると、大人の男は優しく、だが、キッパリと彼の身体を押し戻す。

まだまだと言うように顔を横に振りながら。

彼も大人の男も裸だ。

大人の男も勃起している。

もちろん彼もビンビンになっている。

なのに、本番前の前戯もさせて貰えないもどかしさ。

いや、大人の男にとっては、若く美しい彼の身体を堪能しながらスポンジを這わせ、彼をよがらせているため、前戯と等しい行為だったが、まだ若い彼には、その機微が分からない。

身体中をサワサワと弄られ、焦らされ、喘いでいるだけだ。

抱き合い、互いの身体を貪ることだけがセックスではないと、彼は覚え始める。

も、もうダメ、、、早く、、、お願い、、、と彼は懇願する。

そうすると大人の男は満足そうに微笑み、スポンジを離し、彼にシャワーのノズルを向け、低温の水をかける。

冷たすぎず、しかし、身体をシャキッとさせるくらいの温度。

自身で鎮めようと股間に向けられた彼の腕は、大人の男に優しく阻止される。

「君はどんどん磨かれていくね、、、」

そう囁き、大人の男は彼の額にキスをする。

彼は幾度目かの嘆願を口にする。

大人の男は彼の全身にシャワーをかけ、泡を落とす。

そして、大きめのバスタオルを広げ、彼をくるみ、そして抱き上げる。

彼は、大人の男の首に腕を回す。

バスタオルの柔らかな肌触り。

彼の興奮が再び増す。

ぬ、濡れてるよ、、、という彼の言葉にも関わらず、彼の水滴のついた身体はバスタオルと共に真っ白なダブルベッドの上に横たえられる。

大人の男は、彼の身体に寄り添うように横になり、片手はバスタオルを掴み彼の頭の雫を拭い、片手は太股に這わせ、そして唇は彼の首もとを貪り始める。

彼は、身体をのけ反らせ喘ぐ。

大人の男の息づかいも荒くなっていく。

歳の離れた二人の身体が、ベッドの上で互いの身体と身体を貪るように絡み合う。

                                *
一刻の後、二人はベッドの上でくつろいでいる。

二人とも全裸だ。

ルームサービスで取り寄せたフルーツを互いの口に入れ合い、唇を寄せたその汁をすする。

そして、その汁をすすったばかりの舌で、互いの乳首を、首筋を、頬を嘗める。

どっしりとした保護者の大人の男と、若く成熟前のしなやかな身体の彼。

対照をなした二人の穏やかな一時。

ピンポーン

静かにベルが鳴る。

?

大人の男と彼は、顔を見合わせる。

ルームサービスは既に届いている。

訪れる者は居ないはずだ。

ピンポン、ピンポン、ピンポン、、、

ベルの間隔が短くなっていく。

ガチャ、、、ガチャガチャ、、、

ドアの向こうノブが動かされている。

オートロックだと知っているはずなのに。

そして、ベルの音と同時に、ドアがドンドンと激しく叩かれる。

彼は、戸惑うばかりだ。

フウ、、、

大人の男が溜め息をつく。

ドアの向こうにいる人間に心当たりがあるのだろうか。

すっと別途から降りると部屋に備え付けの白地のガウンを羽織り、ドアに続く通路に消える。

扉の開く音がする。

「どういうつもりだ、、、」

低く厳しい声が聞こえる。

大人の男のものだ。

揉み合うような音がする。

彼は、身を起こす。

様子を見に行くべきかどうか、、、

バタバタと足音がし、若い男が現れた。

恐ろしい形相で彼を睨んでいる。

20代半ばくらいだろうか、端正な顔立ちで、スラッとしたモデル体型だ。

どこかで会っただろうか?

見覚えがある顔だ。

端正な顔を怒りで歪め、若い男が彼に向かって言う。

「このガキ、、、泥棒猫っ!」

その瞬間、彼は思い当たる。

この人、、、俳優さんだ、、、若手で爽やかさで売っている、、、

CMでの爽やかな笑顔とは全く違う形相で、彼を睨む。

「よせっ、彼には関係ない、、、」

「まってよ、なんでこんなガキを、、、俺だけを見てくれよっ」

大人の男は、硬く感情のない顔で若手俳優を見る。

「畜生っ!おまえ、さっさと服を着て出ていけ」

若手俳優は、傍らの椅子に脱ぎ捨ててあった彼の衣服を掴むと、ベットの上で裸の彼に投げつけてきた。

彼は、戸惑いつつ、その状況に気持ちが高揚してきている自分を感じる。
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