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CH7 無粋

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その大人の男は巧みだった。

最上階の個室。

個室と言ってもベニヤと間違えるような薄い板で区切られたスペースに大きめの布団が敷かれていて、申し訳程度の古びた机と、コイン式のテレビがおかれているだけの部屋。

その部屋に入ると、なにも言わず後ろから彼の浴衣に手を伸ばし、スルッと帯を解いた。

床に布が落ち、彼は、全裸になる。

その身体を、がっしりとした体躯の大人の男が、後ろから優しく抱く。

大人の男の肌が、彼の背中に密着する。

いつの間に浴衣を脱いだんだろう。

彼は思う。

大人の男からは落ち着いた少し甘い匂いが漂ってくる。

いい匂いだ。

彼は、その香りを楽しむ。

大人の男の掌がゆっくりと彼の肌を滑る。

しっかりした頑丈な掌。

腕は太く筋肉が浮き上がっている。

彼の肩に大人の男の唇があてられ、優しく位置を変ながら、肌が吸われていく。

義理の父、警察官の暴発するような、叩きつけるようなセックスの始まりとは全く異なる。

大人の男に包み込まれるような心地よい感覚。

大人の男の掌が、唇が、そして、背中にそっと重ねられた肌から、揺ったりと快感が染みてきて彼の身体の内側に蓄積されていくような感覚。

大人の男の掌がゆっくりと彼の腹筋をなぞり、へそを越え、まだ未熟な黒の繁みを通り、彼自身へと向かう。

クッ、、、

その武骨と言っていい指が己の極微に達した時、彼は、感じたことの無い快感と共に、自身がすでに勃起しきっていたことを自覚する。

そして、自身の吐息が荒々しくなっていることも。

しばらくの間、ゆっくりと局部が愛撫される。

もう一方の男の掌は、乳首を弄り、胸を優しく揉む。

大人の男の彼を抱き締める力はだんだん強くなる。

耳たぶが軽く噛まれる。

大人の男の吐息が敏感になった肌にかかる。

吐息からも快感を与えられることを彼は知る。

彼の中で快感がジリジリと溜まっていき、放出への欲求が高まっていく。

大人の男にとっては、それは判りきったことなのだろう。

が、大人の男は、優しい愛撫の動きをやめない。

彼にとってはそれがもどかしい。

もっとグチャグチャに揉みしだいて欲しい。

だが、これまで知らなかった質の快感が彼の中で大きく育ち始めている。

焦らされる、、、

初めての快感だった。

堪らなくなり彼は、身体を大人の男の方に向ける。

そして、両手で大人の男の首にしがみつく。

大人の男は、鷹揚にそれを受け入れる。

彼は、頭を大人の男の肩にのせ、激しく大人の男の頭に擦り付ける。

肩に回した両手で、力強く大人の男にしがみつく。

大人の男は優しい目で彼を見る。

その日に焼けた肌に健康的に刻まれた皺は彼の知らなかった包容力のある大人のものだ。

大人の男の掌が、触るか触らないかのタッチで彼の若く瑞々しい尻を撫でる。

あっ、あああっ、、、

彼は、まるで泣き声のような嘆声をあげる。

大人の男の掌は、まるで魔法のように彼の尻の表面に優しく痺れる快感の皮膜を作り出す。

掌が通ったあとも、甘く痺れるその快感は尻の上に残り、彼の内側を侵食していく。

その快感は、そのまま股間に、そして、脳天に伝わり、彼の理性を削っていく。

大人の男の肌が、彼の身体に吸い付くように感じる。

これまで味わった激しく身体を攻めてくる愛撫と全く異なる、ジワジワと全身に広がっていく快感に彼は、堪らず声をあげる。

あぁっ、、、はぁっあぁ、、、

耳元で大人の男が囁く。

“シィッ、、、”  

彼は、大人の男を見る。

大人の男は、優しい笑顔で言う。

“そんなに大きな声を出すと、回りに聞こえちゃうぞ、、、”

パァッと彼の顔が羞恥で赤く染まる。

意地悪な言葉。

それなら、早く出させて、、、メチャクチャにして、、、

彼は、そう言いたかった。

フッ、、、と大人の男が笑うと、彼の若々しい身体を敷かれた煎餅布団の上に誘う。

彼は、大人しく従う。

締まった若々しい白い肌と、年季を感じる熟成した日に焼けた褐色の肌が、布団の上で絡み始める。。。

                                 ※

彼がスマホを持っていないと言うことを知ると、大人の男は心底驚いたようだった。

だが、経験値が高いのだろう、それ以上に細かいことを根掘り葉掘り聞くようなことはしなかった。

どっしりと布団の上に寝そべる大人の男の横に彼は、寄り添うように寝ている。

そして、彼の右手は大人の男の使い込んだとおぼしい太い魔羅を愛撫する。

その若い彼を慈しむように大人の男の手が彼の背を撫でる。

大人の男の魔羅が二度の放出をしたというのに膨らみ始める。

それを確かめると彼は、身を起こしその育ち始めた魔羅を口に含む。

おいおい、、、まだ、やるのか?

そう言いたげな表情で大人の男が彼を見る。

だが、止めはしない。

自身を貪っている若い身体の髪の毛を優しく撫でる。

若い身体の頭が激しく上下し始める。

クッ、、、あ、痛っ、、、

年長の身体が仰け反る。

三度目の放出、、、

彼は、大人の男の萎みかけた魔羅を慈しむように舐める。

ふう、、、

大人の男は一息つく。

そして、驚いたように自身の魔羅を見る。

雁首のところに血が浮かんでいる。

彼の犬歯が、傷つけたのだろう。

彼もその傷に気付く。

怒られるか?

一瞬身構えたが、大人の男は鷹揚に彼の手を引き、自身の隣に添い寝するよう誘う。

彼は、そっと横たわり、大人の男の肩に頭を乗せる。

“ふざけんなっ”

扉の外の廊下から怒声が聞こえる。

“今まで幾ら払ったと思ってるんだっ!”

“俺の身体はタダじゃないんでね。それっぽっちの金で俺の身体に触れただけ有り難いと思いなっ”

それは、聞きなれた警察官の声だった。

“俺がどんな思いで金を工面したか、判ってるのか?”

“そんなことは知らないね”

“頼むっ、幾らなら、幾らなら抱かせてくれる?”

“少なくとも、今日の端金じゃ無理だね”

“始めはもっと安く尻を付き出してきたクセしやがって!”

“文句があるなら、他の男を当たるんだな”

“覚えてろよ。このゲス野郎!身体でしか稼げない淫売野郎っ”

“なんとでも言いなっ”

警察官の声が遠ざかっていく。

「ここも、風紀が悪くなったもんだ」

大人の男が言う。

ん?

モノ説いたげな彼の目に気付いたのか、大人の男は続ける。

「欲望丸出しの奴らだ。おそらく今のはさっき風呂場に居たヤツだろう。2~3週間前にやって来て、ここで毎日身体を売っている。鍛えられたいい身体で、それを良いことにドンドン値をつり上げていった。まぁ、かく言う私も最初の頃に味見して、礼は支払ったが、それが彼が思っているより高額だったようで、それ以来、物乞いのように媚びた目で、何でもするから買ってくれと纏わりついてくる。無粋極まりない。そんな下卑た男には興味がない。まあ、それでも、何人か客を得たようだが、どんどん金額を吊り上げているらしい」

彼は、大人の男の体臭とコロンの混じりあった落ち着いた香りを楽しみながら聞く。

「こういう場所だ。大抵のことには、この街の恐い連中も見逃しているが、ホドホドにしないとヤツも痛い目に遭うだろう」

痛い目?

彼は、大人の男を見る。

「一度、抱いたよしみで彼には忠告したが、今日の様子だと聞く耳は持たずに闇商売を続けてるようだな、、、今日は夢中になっている客に高飛車に出たようだが、引っ掛かる客がいないと、相手が学生だろうがなんだろうが見境無く、千円払えばオナニーを見せるとなりふり構わず誘うようだ。そして、相手がそれ以上を持ちかけてきたらさらに金を要求する。フリーラブが売りのサウナでみっともないことだ」

闇商売。

その後、大人の男は腹が減ったから食事でも、、、と彼を誘った。

ちょうど腹が減っていた彼には断る理由はなかった。

その個室を出る時、大人の男は財布から無造作に万札を厚めに取り出し、名刺と一緒に彼に渡した。

サウナを出るため階段を下りている時、獲物を探すように股間を強調しながら、大浴場の洗い場を歩く警察官の姿が見えた。

無粋、、、

先程の大人の男の言葉が脳裏をよぎった。
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