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屋上塔屋の秘め事

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黒崎先生は私の耳元で

「静かにしろよっ今夜の 当直は 原先生だからな」

私は鼻水が垂れて旨く話せず頷く。
職員専用エレベーター三機のうち緊急時用が18階で止まっていた 。
急いで上階のボタンを押しドアが開いくと同時に先生 は私をエレベーターに押し込んだ。 

先生の人差し指は21階を押す。
(最上階は20階のはず…なのに)

先生は階数パネルを見ていた私の顎を掴み顔を自分の方へ強引に向かせた。

「 痛いっ!」

先生の顔を見る。朝から働き詰めの顔は髭が数ミリ伸びて皮脂でテカり目の下にはうっすらクマが浮き出ている。

(素敵すぎる…多分 誰がみてもセクシーだ…)

「何故泣いてた? はあ--ん…ん、なにぃ…何だぁ俺が 恋しかったか―ぁ、どうなんだ?」

顔をどんどん近づけてきた。私の目にしっとり濡れて輝る先生のポッテリ唇がアップで映った。

(キスして!!) 

「おい…おまえさ今日は俺に恥かかせるところだったらしいな…?」


先生の唇は私の唇の数センチ先なのに…届かない。私は先生の唇が欲しくて、問い掛けが全く耳に入っていなかった。


職員専用エレベーターの質素な到着音と同時にドアが開いた。


(屋上塔屋?) 


「出ろっ!」

私は手首を掴まれ 先生の後に続いて降り立つ。先生はエレベーターを出る寸前に18階のボタンを押した。
エレベーターは私達が降り立つとすぐにドアが閉まり低いモータ音と共に降下していく。


「さぁて…と、聞かして貰おうじゃないか!」

(えっ 怒ってる?)

私には先生を怒らせている原因がさっぱり解らなかった。

「なんだぁ…思い当たらないとでも言いたそうだな?」


先生の目は冷ややかな光を放ちながら私を見据える。


「わっ、わかりませんよっ、どうして 怒っていらっしゃるの…か…」

私は鼻づまりの中頑張って言い返した。先生は立て屋の中を腕組しながら歩き…回ると

「ふ~ん…わからないってか…ったくっ!こっちは朝から頭と体力使いまくってんのに  お前ときたらっ… のうのうと一階のカフェで中年オヤジとイチャついていたらしいなっ」

壁を拳で叩いた。

「あっ、あっ、あれはっ、そのぉ…ぎゃっ」

私のシャツの襟首を掴み締め上げてきた。


「ぐぅッぐるじぃッ」

鼻づまりで息が出来ない!金魚のように口をパクパクして空気を取込むと力いっぱい先生を突き飛ばしたが …

先生の唇が少しひらく…
私は恐る恐る 舌を出して侵入を試みる…
とその瞬間 強烈な吸引で 私の舌は先生の口腔内に捕われる。
あっ!はぁぁ… お互いの唾液の行き来と鼻腔からの息の混じりあう濃密な時 …
口と肛門は消化器の入りと出口 
その入り口を 恥じらう事なくお互いに共有して…

究極の求めあい…

人は恋愛と言う隠れ簑を借りて
 お互いに欠如している遺伝子を求め 優秀な子孫を残してきた。
私が この 横暴でレイプ紛いの彼の性欲を 愛おしいと思えるのも

 私に欠けている何かを彼が持っているはずなんだ。

そう 納得させないとこの 変則な恋愛は成立しない。

私は 異常性欲者ではない。

奴は 異常性欲者

先生の行動は手際良く、あっという間に私の上半身ははだけ左の胸を揉みしだかれていた。
お互いの頬を密着し私の耳元で

「乳癌が無いか、調べてやるよっ  しかもロハだぜ…  感謝しろよ」


(ったくぅ…こんな淫らな場面で仕事絡み…)


「馬鹿!」


私は先生の耳元で そう言うと耳たぶを噛んでやった。


 「いでっ―」

先生は私を塔屋(立て屋)の床に寝かせて、じっくりと胸の膨らみを診ている。


「先生…今はドクターなの?それとも ただのスケベなオヤジ?」

私は下から厭味を投げつけた。私を組み敷き征服しようとしている歴戦の戦士を下からじっくり眺めてやった。
約12時間以上人間の生命と向きあえるその集中力は何処からくるのだろう…
医者が早死にって言うのは、本当かもしれない。


先生が私を組み敷いたまま次ぎの行動に出てくれない事に焦れていた私は先に行動を起こす事にした。女が性衝動に駆られて男を襲って何が悪い?今夜は和姦行為なのだ。


私の自由な手を先生のオペ着の下に滑りこませた。


上着の裾から手の平を迫り上げた。脇を掠め胸筋の張を確かめ、先生の乳首を持て遊ぶ。

「ふん…随分と生意気だな」

先生はニヤつくと力わざに出てきた。私に覆い被さると、胸の間に顔を埋め、唇を激しく押し当て、両手で胸の膨らみをわしづかみ強く揉みあげてきた。痛みと快感が私の神経を狂わせ始める。小さなポッチを強く噛まれた。
下半身は電流が走ったように痺れ、後は何がなんだかぐちゃぐちゃと漏らしてしていた。堪えきれず…先生の手首を掴むと洪水の元へ導く。

「逝かせてくれるって…ぅ…早く」

先生は私の躯を左右に割って入ってきた。むきだしのショーツの上に顔を近付ける。

「ヤッダァァ…汚いからぁ―ダメ」

「アンモニア臭と雌の臭いか……発散しまくりだな」

(先生ぇ…汚い…)



「あっ…だめ…」

腰が浮いてくる。


もっと刺激が欲しいのに…物足りない…先生は私の上に跨がり白衣を脱ぎ丸めると、私の頭の後ろに差し入れた。私の首に掛かる負担が楽にる。

「気持ちいいか?どうだ?、ん?」

先生の唇が私のおでこ、鼻先、頬へと 降り注ぐ。

キスの度、先生を愛おしいと思ってしまう。両手を先生の背中に回し体を密着させたいと力を込めて引き寄せる。


「もっとぉキスして……いっぱい」

涙が頬を伝い流れた。目尻から流れる一雫を先生は舐め取りながら

「わかった…覚悟しろよ…俺から二度と離れられなくなるぞ…」

私の髪を手のひらで撫で上げむきだしたおでこにキスを落としてくれると鼻先に先生の匂いが押し寄せ私はまた大きく吸い込んで安心する。

「先生のニオイがすき…」
胸に鼻を擦り付け裾からオペ着を引っ張りながら、先生 に脱いで、と合図を送った。先生は上着を託し上げ私の目の前に たくましい胸板が登場する。

(うああ 素敵…)

「フフ…」
幸せいっぱいな気持ちは声に出てくる。

「なんだ?」

先生の後頭部を引き寄せてめちゃくちゃなキスをする。
いきなりの私の奇行にさすがの戦士もビックリしたかのか

「おいっ…」



向かい合って同じ目線の高さでお互いに見つめあった。なにげに交わした口づけも離れられないほど激しく吸いあい、舌は蛇の交尾のよにうごめきながら絡まり合った。
先生のそそり立った男の〈勲章〉はオペ着を食い破る勢いで息づいていた。下半身を刺激された私は、腰を揺り動かしてそれを求めた。

砂漠で干からびかけた体が水を求めるように…私を先生自身で満
たして欲しい…。


口づけは首筋や鎖骨へと下ってきた。

私は脚を先生の胴に巻きつけたまま上半身をのけ反らせて先生の唇が胸の突起に届きやすいように導いた。言葉では恥ずかしくて欲しと言えない。

「‥吸って欲しいか…」

ブルっと体が痙攣し先生の一部がムクムクと脈打ちだす。
先生の指先が私の下半身を直に触り始めた。

下腹部からショーツに手の平を侵入させ胴体を挟み込んだ脚の中心は充分に完熟し蜜を滴らせている。指先で粘膜を弄ぶ。

「おい…何処を触って欲しいか…言ってみろよ」


意地悪い先生は嫌らしく囁くが…言葉とは裏腹に私の鼻先に優しいキスを落とした。

(‥‥触ってっ)

心の声が先生に聞こえれば 言いのに!恥ずかしくて言葉に出せない。興奮と快感がないまぜになって息遣いも激しくなってきた。

強烈な刺激が私の羞恥心をぶち壊す。


「おねがい … 先生ぇ…」

私は懇願していた。

無言の先生は行為で答えてくれた。



大きなうねりはお腹のお肉は波うち、腰が競り上がってくる。



(あぁ-もっとぉ…   )



「触診しようか…」

先生は、滑らかな指先使いで私の入口を解しながら奥へとゆっくり差し込まれる。異物が私の身体の中でうごめきタンポンを挿入した時のような感覚が鳥肌を誘う。


一瞬腰を引いた私を先生は許してくれなかった。
彼の長い指は穴の通路の幅や深さ壁面の具合まで触診していく。

「おぉっ、いっちょ前に締め上げてくるじゃんか!」

「言うなっ!バカっ!オヤジぃ」

私は歯を食いしばり、絶対声を上げてやらないと意地を張ていた。

「ここだなぁ―噂のGスポットは」

先生の巧みで執拗な指責めは私の意思も呆気なく粉砕した。

「せっ、先生ぇもっ、駄目っ…そっ、そこぉ、感じるっ……あぁ、してっ、してっ、……い…きそ………………あ」

私が絶頂を迎える寸前先生は蹂躙していた厭らしい指を抜きさった。ぬめる粘液が私の体から流れ出るのがわかった。
寸前で行為を止める酷い仕打ちは私の意識を現実に引き戻させた。


「さあ…目視で確認するから寝てくれっ」

何の事やら解らないまま私は素直にその場に仰臥した。

(まるでお医者さんごっこ)

大人なんだか子供なんだか…自分勝手にもほどがある。

「どれ どれ…」

なんだかシラケて腹立たしくなってくる。
私は先生の頭を拳で 小突いた。

「痛ッ!何するんだくそガキ!」

足首を掴んだまま 顔を私の方に向ける。

私は顔を起こして

「お医者さんごっこしてんじゃ ないわよ!スケベじじぃ」

あれ…館内放送が…

♪緊急ヘリが 東南方向から飛来します。東南方向の病棟の皆さん、危険ですから窓際から離れてください。間もなく緊急ヘリが到着します。外部で待機する職員は風圧に注意して下さい。♪

……………!

「ヤベーツ !」

「おいっ服を着ろ! "おあそび" はまたの機会にお預けだ…ッチどくせぇなぁ」

先生は私のくしゃくしゃのシャツを私の頭から被せた。


自分はスクラブを着るとその上から白衣をはおった。手に持っていた私のショ―ツを丸めて白衣のポケットへ入れてしまった。

(何してんの……この人)

私の手首を掴み立ち上がらせると 

「行くぞっ!」

非常階段を駆け降りて20階の非常口扉を開けた。

「おまえはここから 病棟へ戻れ!」


そして片手で私の後頭部をぐいっと引き寄せると、耳元に唇を寄せて

「大事な所 他の男に見せんじゃねえぞ、パンツ売店で売ってっからなっ… じゃなっ!」


非常階段を 猛烈な勢いで 降りて行く先生を 見送り


(はっ?何なの?)

まだ 夜明け前の20階で 私は 呆気に取られていた。


取り残された私は 仕方なく 夜明け前の海を見ながら…ため息が出た。
(いったい 私 なにやってんの?)
黒崎先生はするべき仕事があり社会に貢献している…


私との事は「おあそび」 なんだ…


私も 恋だの 愛だのうつつをぬかしてる場合かぁ?








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