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二章:領土拡張編
16話:ピンヒールの森(後半)
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二章:領土拡張編 第十六話:ピンヒールの森(後半)
ーーーーーーーーーーーーーーー
ピンヒールの森の奥
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
森の奥深くに1匹の馬がいた
森の中にナニカが来ている事、その馬はナニカが森に入った時から気がついていたが、
猿どもがいつもの様に、相手をしようとしたようだ。
いつもの様に、すぐ終わるだろう
この世界に天敵はいない、生まれた時から素直な序列がある、
種族差によるこの序列に例外は無く、この森で生まれた時からその馬は王だった。
長い長い時間、ただ王として過ごしたその馬は、突如感じた力の波動に混乱した。
そして猿どもが失敗した事も直ぐにわかった。
尋常ではないナニカが、森の奥へと、こちらに近づいて来るのが分かる、
森に居た魔物は全て逃げたが、王は逃げる事が出来なかった、生まれ落ちてから一度も感じた事がない、恐怖という本能を信じる事が出来なかった
そして恐怖が形をもって視界に入った時、王たる馬は、王たる嘶きを上げて恐怖に向かい合う
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
マッドモンキー以降、魔物による襲撃は一切なくなり、
カイ達は静かな巨大な木々が群生する森を歩いていた
「なんで魔物出ないんだ?」
「さぁ?お昼寝してるんでしょうか?」
素朴な質問を呟くと、マイアが可愛い答えを返して来る
「お昼寝か、俺もそうしたいなあ」
「うふふ、皆で寝れるテントがあれば良いのですが、残念ながらありませんわ、
それにしても気配も全くありません…本当にクリアはしてないんですよね?」
「あぁ、このピンヒールの森に入った時、システムから連絡があった、という事は攻略すればちゃんとシステムが教えてくれる…はずだ」
「きっと逃げちゃったんですよ♡」
昨日から機嫌が良いアリアが簡単に言う、
後ろで補給部隊を守りながら着いて来る冒険者も魔物の気配が全く無い事に困惑している。
数時間後
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おにぃちゃん♡綺麗な川があったー♡」
探索していたマイアがやって来て胸に飛びついて来た
「おお、ならそこで休もうか?」
「いこー見たら驚くよ♡」
マイアの案内でたどり着くと、膝ぐらいまでの深さの小川だった。
「これは…凄い」
「確かに素晴らしいですわ」
「本当ですね、素敵です♡」
冒険者達も同じように感嘆していた、
たしかにエメラルドに広がる草木は神秘的で
そこに流れる小川も美しいが、マイアが見せたかったのはそれではなかった
マイアが探してくれた小川は、深くはないが川幅は10メートルぐらいだろうか?
上流を見た時、壁があり、そこから空いたでっかい穴から小川が流れていた
小川を挟むように並ぶ巨木は更に間隔を狭めて壁の様に並び、
巨大な壁の下にポッカリと口を開けたような穴があいておりそこから小川が流れている
そう見えたが
壁かと思えた、その場所は、上を見上げるとそれが木であると認識できるように他のどの木よりも伸びた所で一本伸び、遥か先の高い所に緑の屋根を伸ばしていた。
「ね?凄いでしょ♡」
「ああ、カメラが有ったらインスタで話題になってただろうな」
「カメラ?インスタ?なにそれ?」
「あっいや、俺の世界の……そうだな鏡で写したような絵を描く機械と、
それを色んな人に見せる事ができる機械があるんだ」
「鏡で映したような絵って凄いですわ」
メリウスが反応する
話しが逸れてしまったが、
「まぁ、とりあえず、少し離れて休んでからあの穴に入ろう」
「「「「はい!」」」」
小川の入り口から距離を取り、休憩した後、冒険者達とマイア、メリウス、アリアを残して一人で入る事を提案したがマイアがどうしても頷かなかった。
この森で既に脅威は感じられないが、流石に何が起こるかわからないので、女達には残って欲しかったのだが、仕方なく臨機応変に対応できるメリウスと中に入る事にした。
幹の穴の入り口の前に立ち、こう言う場合、何て呼ぶのだろうか?木の穴?洞穴?岩窟?幹穴?
よくわからんが幹穴にしておこう
幹穴は高さ4メートルといった所か、壁やはり下から伸びる木、だった。
小川にそってメリウスと中に入ると、ヒンヤリとした空気が流れてくる。
20メートルほど進んだ時、遠くに薄っすら光が見えた。
メリウスと目を合わせて、真っ直ぐに注意深く、進んで行くがやはり途中で魔物が現れる事は無かった。
一番奥まで進むと、蔦が繁っていて、そこから光が漏れていた事に気がついた。
メリウスを下げて剣で蔦を取り払う、
気配探知に久しぶりに生物がヒットしたからだ。
蔦を取り払い、視界に広がるのは先に進む小川と巨木に囲まれ、緑の絨毯が敷き詰められた。とても広い場所だった
そして其処に居たのは巨大な白い馬がいた
白く美しい鬣をなびかせ、通常の3倍はありそうな巨躯の白馬は俺と目が合うと、二本足で立ち上がり、悲鳴のような嘶きを上げる
…脅えている
俺は刀を納めてゆっくりと足を進め、メリウスがそれを止めようとする
「大丈夫」
そう伝え、白馬に近づいていく「ぶるるる」と前足を覚束なく地面を蹴る
それ以上近づいたら蹴る、そのギリギリの一本手前で足を止める
瞳は充血して脅えているがとても綺麗な緑色だ
俺はその一歩を踏み出した
巨大な白馬は動かない、立ち上がる為の足が震え、じょ~っと後ろの方で音を漏らしている
手を伸ばせば触れられる距離まで近づき、エネミーチャームを使う。
この距離まで近づかないと効かないし、相手が屈服している必要が有ったが屈服は既にしているようだ
巨大な馬の瞳から脅えが消え、頭を下げて膝を折る。
「ヨーシヨシ良い子だ」
顔を撫でると嬉しそうに目を瞬かせる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
メリウスは巨大な白馬に恐怖していた、あんな物が馬である筈が無いと
美しい鬣だと思う、だが近づくとカイの頭が胴体にさえ届かない
その身体は大きすぎるのだ、
カイは普通に近づいていくが、その存在感にメリウスの方が圧倒されていた。
そんな白い悪魔のような馬が、カイを目の前にし、ゆっくりと頭を下げ、服従するため膝を折ったのだ。カイが頭を撫で、喜ぶ姿を見た時に、神々しいとさえ感じてしまった…
カイが言う鏡を映したような絵を描く機械があるのなら、今手元にに無いのが残念でならず、この瞬間を誰にも見せられないのが悔しかった。
///////////////
ピンヒールの森の脅威は全て排除されました。
これにより、ピンヒールの森は今後、ノースエリアのタイラントの領地と成りました。
十一階層の扉が解放されました
///////////////
システムウインドウのメッセージが頭に響いた。
やはりコイツがボスだったのか
「お前の名前あるのか?……もしかして、ピンヒールって言うのか?」
「ヒヒーン、ぶるる」
何と無く嬉しそうな顔をした気がしたので、そうなんだろう
「一緒に来い、今日から俺の馬だ、後もう少し小さくなれるか?」
「ヒヒーン」と嘶き、ピンヒールは体を普通の馬レベルまで小さくなっていく
幹穴の出口で待っていたメリウスは呆然としながら近づく俺の顔みて、赤くなりながら
無事を喜んでくれた、何かあったんだろうか?
洞窟を帰る時、メリウスをピンヒールに乗せようとした時凄いビビっていたが、俺は馬に乗った事が無いので、頑張って説得し、メリウスにしがみついてパカパカと洞窟を出ていった。
洞窟を出るとマイアやアリアが出て直ぐの所で待っていて、
白馬を見てビックリしていた。
突然システムメッセージが聴こえて慌てて幹穴の入り口に集まり、待っていたらしい
皆んなと合流し、システムメッセージで得た情報と、邪気の消えたこの森が領地となった事、
この巨大な森林が領地となった事
そして俺たちの塔にはタイラントという名前が有り、
恐らくは何処かの大陸の北にあるらしいという事を話し合い、
領地となったこの森をピンヒールの上に乗りながらゆっくりと街へと帰路についた。
ピンヒールに跨り住民にカッコつけたかったが鐙もない馬に経験もないカイが1人で乗れるわけもなく、
目の前のメリウスに後ろからしがみつくのも、
気持ちは良いが、見た目は死ぬほどカッコ悪いので、
メリウスとマイアの二人で乗って貰う事にした。
マイアも馬の扱いは上手で最初から怖がらなかった
最初はビビっていたメリウスも、俺に服従してるチュラ美と同じだと説明すると安心してくれた。
美しい白馬に跨る姫騎士メリウスはお伽話に出る登場人物のように美しく。
マイアとメリウスの二人の笑顔は見る者を幸せにしただろう
アリアも乗りたそうにしていたが、ローブだと太ももまで出てしまうので遠慮してもらった
都市:タイラント
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
街にたどり着くと壁の近くに留守番組が出迎えてくれて、
白馬に跨る、マイアとメリウスに住民も冒険者も見惚れていた。
~「「「お帰りなさい」」」~
新たに増えた領地に喜ぶ住民達
無事の帰還を喜ぶ冒険者仲間
俺の帰りを首を長く待っていた女達
それぞれに「ただいま」と告げ、メリウスに促されて改めてピンヒールに乗り、声高に叫ぶ
「皆んな聞いて欲しい!…俺たちは、塔の外に領地を得る事が出来た!
これは冒険者や商人街、この街に住む皆の協力が無ければ、何年かかったか…いや出来なかった可能性さえある!
知らない世界に召喚され、未知の領域は怖いだろう、俺だってそうだった…
だけどなあ!!ここに居る仲間を信じろ!!俺たちは魔物になんぞにやられはしない!!
今日、この都市はタイラントという名前を得た!!俺たちは大丈夫だ!!
この世界に新たな国を作ろう!!我々の国を!!」
~「「「「うおおおお!!タイラント!タイラント!!タイラント!!!」」」」~
メリウスとマイアが全部考えてくれたのを必死に覚えた甲斐があった。
街は熱気に包まれ、お祭り騒ぎになった、人々に紛れてタカシもサーナと抱き合って喜んでいた。
ログハウスに帰るとキラキラした女達に歓待を受け、全員満足するのに次の日の昼までかかった。
ちなみに厩にピンヒールを入れようとしたら、他の馬が脅えてしまうのでピンヒール専用を作る事になった。
2日後、エリス、アリア、マイア、メリウスの初期メンバーを連れて十一階層の扉を開けた
ヤヨイ、ミキ、サキは妊娠中の為ログハウスに残っている。
ヤヨイは特に心配したが、どう考えても五階層のような事は無さそうな事をメリウスが説明してくれて、何とか納得してくれた。
塔十一階層
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ここはまるで、ピンヒールの森と同じだな?」
「でも、印象が全く違いますわ」
「ええ、黒い巨木に黒い草、ピンヒールは緑に白い巨木でした」
「お兄ちゃん、ここは長くいたくない」
「久しぶりの戦闘なんだから、私に全部任せなさい!」
何故かエリスだけがノリノリだった
五人でピンヒールの森で辿った道を歩き直すように進んでいくと、
現れたのはマッドモンキー……ではなく、
バスケットボールぐらいの大きさの蜂だった
数百の蜂が襲いかかり、
「エリスは魔法で迎撃しろ!メリウス、マイア!アリアを守れ!俺はボスを探す!」
「必要ないわ!ナパームボム!!」
巨大な火の玉が当たり四方に飛び着弾すると同時に、広域の火柱巻き上がり、そこから小さな火の玉が、蜂を貫いていく
やがて、火柱が収まると黒こげの蜂が転がるがどこもかしこも元々黒いので解りづらかった。
これで終わりかと思ったが、ブブブブっと癪に触る音が耳に届く、
耳障りな羽音が聴こえてくる方を見ると、森の奥に人ぐらいの大きさの蜂が空中でホバリングしていた。
マッドモンキーのボスとは違い逃げる様子を見せない、
巨大な蜂に刀を構えると
ヒュンと一瞬消えた、直線ではなく、エリスを狙う為、横に動いてから攻撃に移ったのだ
きゃあ!とエリスの悲鳴が聞こえて焦るが、防御体制のメリウスが迎え撃ってくれた。
久々に女を攻撃されて頭に血がのぼる
俺は巨大なボス蜂を追う、
嘲笑うかの様に飛び回る巨大な蜂は、
「チョロチョロすんな!!うっとおしい!!」
俺が投げた刀が光の道のように突き進み、反応する事もできずに串刺しにされて巨木の標本になった、
ただし巨木を七本程突き抜けてだが
「マイア、止めだ」
「はい!」
(え?いる?トドメ?)
蜂は動かなくなり?、刀を抜くと地面に崩れ落ちた
((((怒らせない様にしよう)))
「胸糞悪い階層だ、さっさと終わらせよう」
「「「「はい!」」」」
同じ場所に小川があったが少し凶暴になったマッドモンキーがまた現れたが
マイアの魔法がまたエグかった、「ナパームボム!」幹穴に打ち込まれた火柱があっという間に
瞬滅させていく。
幹穴の奥に居たのはやはり馬だったが、真っ黒だった。
ピンヒールより巨大な身体を二本足で俺たちを威嚇し嘶いた
ずっとイライラしていた俺は刀を抜いたまま近づくとこちらに突進する馬をパリイで弾く、もう物理攻撃ならなんでも弾くなコレ
後ろに吹っ飛び体制を立て直す黒い馬首をソードスラッシュで叩き落としてやった。
///////////////
…十一階層の魔物が全て排除されました。
十二階層に進む事が出来ます。
///////////////
「おっお疲れ様でした一度十二階層の扉を確認してから戻りましょう」
「そっそうね、そうしましょう」
「おにぃちゃん、すごーい!」
「あの馬、いや馬っていうんですか?」
メリウスとエリスは、ぎこちない笑顔で、マイアはいつも通りでアリアは混乱していた。
十二階層の扉を確認すると
「タイラント近くにある、迷宮のダンジョンコアを破壊した時、この扉は解放される
ダンジョンの入り口は無数にあるが、全てのダンジョンは一つのコアへと続く道となるだろう」
という事らしい
これに反応したのはマイアとメリウスだった、
なんでも、普通のダンジョンは多少の入り口が繋がる事はあっても、無数には繋がらない。
また複数の入り口があるダンジョンは基本的に階層が多くトラップも多いのが一般的で、
即死系が多いらしい。
ひとまずログハウスに戻り対策を考える事になった俺たちは、1層の待機ゾーンに戻り、そこで意外な人物と出会う事となった。
第十六話 完
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ピンヒールの森の奥
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
森の奥深くに1匹の馬がいた
森の中にナニカが来ている事、その馬はナニカが森に入った時から気がついていたが、
猿どもがいつもの様に、相手をしようとしたようだ。
いつもの様に、すぐ終わるだろう
この世界に天敵はいない、生まれた時から素直な序列がある、
種族差によるこの序列に例外は無く、この森で生まれた時からその馬は王だった。
長い長い時間、ただ王として過ごしたその馬は、突如感じた力の波動に混乱した。
そして猿どもが失敗した事も直ぐにわかった。
尋常ではないナニカが、森の奥へと、こちらに近づいて来るのが分かる、
森に居た魔物は全て逃げたが、王は逃げる事が出来なかった、生まれ落ちてから一度も感じた事がない、恐怖という本能を信じる事が出来なかった
そして恐怖が形をもって視界に入った時、王たる馬は、王たる嘶きを上げて恐怖に向かい合う
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
マッドモンキー以降、魔物による襲撃は一切なくなり、
カイ達は静かな巨大な木々が群生する森を歩いていた
「なんで魔物出ないんだ?」
「さぁ?お昼寝してるんでしょうか?」
素朴な質問を呟くと、マイアが可愛い答えを返して来る
「お昼寝か、俺もそうしたいなあ」
「うふふ、皆で寝れるテントがあれば良いのですが、残念ながらありませんわ、
それにしても気配も全くありません…本当にクリアはしてないんですよね?」
「あぁ、このピンヒールの森に入った時、システムから連絡があった、という事は攻略すればちゃんとシステムが教えてくれる…はずだ」
「きっと逃げちゃったんですよ♡」
昨日から機嫌が良いアリアが簡単に言う、
後ろで補給部隊を守りながら着いて来る冒険者も魔物の気配が全く無い事に困惑している。
数時間後
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おにぃちゃん♡綺麗な川があったー♡」
探索していたマイアがやって来て胸に飛びついて来た
「おお、ならそこで休もうか?」
「いこー見たら驚くよ♡」
マイアの案内でたどり着くと、膝ぐらいまでの深さの小川だった。
「これは…凄い」
「確かに素晴らしいですわ」
「本当ですね、素敵です♡」
冒険者達も同じように感嘆していた、
たしかにエメラルドに広がる草木は神秘的で
そこに流れる小川も美しいが、マイアが見せたかったのはそれではなかった
マイアが探してくれた小川は、深くはないが川幅は10メートルぐらいだろうか?
上流を見た時、壁があり、そこから空いたでっかい穴から小川が流れていた
小川を挟むように並ぶ巨木は更に間隔を狭めて壁の様に並び、
巨大な壁の下にポッカリと口を開けたような穴があいておりそこから小川が流れている
そう見えたが
壁かと思えた、その場所は、上を見上げるとそれが木であると認識できるように他のどの木よりも伸びた所で一本伸び、遥か先の高い所に緑の屋根を伸ばしていた。
「ね?凄いでしょ♡」
「ああ、カメラが有ったらインスタで話題になってただろうな」
「カメラ?インスタ?なにそれ?」
「あっいや、俺の世界の……そうだな鏡で写したような絵を描く機械と、
それを色んな人に見せる事ができる機械があるんだ」
「鏡で映したような絵って凄いですわ」
メリウスが反応する
話しが逸れてしまったが、
「まぁ、とりあえず、少し離れて休んでからあの穴に入ろう」
「「「「はい!」」」」
小川の入り口から距離を取り、休憩した後、冒険者達とマイア、メリウス、アリアを残して一人で入る事を提案したがマイアがどうしても頷かなかった。
この森で既に脅威は感じられないが、流石に何が起こるかわからないので、女達には残って欲しかったのだが、仕方なく臨機応変に対応できるメリウスと中に入る事にした。
幹の穴の入り口の前に立ち、こう言う場合、何て呼ぶのだろうか?木の穴?洞穴?岩窟?幹穴?
よくわからんが幹穴にしておこう
幹穴は高さ4メートルといった所か、壁やはり下から伸びる木、だった。
小川にそってメリウスと中に入ると、ヒンヤリとした空気が流れてくる。
20メートルほど進んだ時、遠くに薄っすら光が見えた。
メリウスと目を合わせて、真っ直ぐに注意深く、進んで行くがやはり途中で魔物が現れる事は無かった。
一番奥まで進むと、蔦が繁っていて、そこから光が漏れていた事に気がついた。
メリウスを下げて剣で蔦を取り払う、
気配探知に久しぶりに生物がヒットしたからだ。
蔦を取り払い、視界に広がるのは先に進む小川と巨木に囲まれ、緑の絨毯が敷き詰められた。とても広い場所だった
そして其処に居たのは巨大な白い馬がいた
白く美しい鬣をなびかせ、通常の3倍はありそうな巨躯の白馬は俺と目が合うと、二本足で立ち上がり、悲鳴のような嘶きを上げる
…脅えている
俺は刀を納めてゆっくりと足を進め、メリウスがそれを止めようとする
「大丈夫」
そう伝え、白馬に近づいていく「ぶるるる」と前足を覚束なく地面を蹴る
それ以上近づいたら蹴る、そのギリギリの一本手前で足を止める
瞳は充血して脅えているがとても綺麗な緑色だ
俺はその一歩を踏み出した
巨大な白馬は動かない、立ち上がる為の足が震え、じょ~っと後ろの方で音を漏らしている
手を伸ばせば触れられる距離まで近づき、エネミーチャームを使う。
この距離まで近づかないと効かないし、相手が屈服している必要が有ったが屈服は既にしているようだ
巨大な馬の瞳から脅えが消え、頭を下げて膝を折る。
「ヨーシヨシ良い子だ」
顔を撫でると嬉しそうに目を瞬かせる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
メリウスは巨大な白馬に恐怖していた、あんな物が馬である筈が無いと
美しい鬣だと思う、だが近づくとカイの頭が胴体にさえ届かない
その身体は大きすぎるのだ、
カイは普通に近づいていくが、その存在感にメリウスの方が圧倒されていた。
そんな白い悪魔のような馬が、カイを目の前にし、ゆっくりと頭を下げ、服従するため膝を折ったのだ。カイが頭を撫で、喜ぶ姿を見た時に、神々しいとさえ感じてしまった…
カイが言う鏡を映したような絵を描く機械があるのなら、今手元にに無いのが残念でならず、この瞬間を誰にも見せられないのが悔しかった。
///////////////
ピンヒールの森の脅威は全て排除されました。
これにより、ピンヒールの森は今後、ノースエリアのタイラントの領地と成りました。
十一階層の扉が解放されました
///////////////
システムウインドウのメッセージが頭に響いた。
やはりコイツがボスだったのか
「お前の名前あるのか?……もしかして、ピンヒールって言うのか?」
「ヒヒーン、ぶるる」
何と無く嬉しそうな顔をした気がしたので、そうなんだろう
「一緒に来い、今日から俺の馬だ、後もう少し小さくなれるか?」
「ヒヒーン」と嘶き、ピンヒールは体を普通の馬レベルまで小さくなっていく
幹穴の出口で待っていたメリウスは呆然としながら近づく俺の顔みて、赤くなりながら
無事を喜んでくれた、何かあったんだろうか?
洞窟を帰る時、メリウスをピンヒールに乗せようとした時凄いビビっていたが、俺は馬に乗った事が無いので、頑張って説得し、メリウスにしがみついてパカパカと洞窟を出ていった。
洞窟を出るとマイアやアリアが出て直ぐの所で待っていて、
白馬を見てビックリしていた。
突然システムメッセージが聴こえて慌てて幹穴の入り口に集まり、待っていたらしい
皆んなと合流し、システムメッセージで得た情報と、邪気の消えたこの森が領地となった事、
この巨大な森林が領地となった事
そして俺たちの塔にはタイラントという名前が有り、
恐らくは何処かの大陸の北にあるらしいという事を話し合い、
領地となったこの森をピンヒールの上に乗りながらゆっくりと街へと帰路についた。
ピンヒールに跨り住民にカッコつけたかったが鐙もない馬に経験もないカイが1人で乗れるわけもなく、
目の前のメリウスに後ろからしがみつくのも、
気持ちは良いが、見た目は死ぬほどカッコ悪いので、
メリウスとマイアの二人で乗って貰う事にした。
マイアも馬の扱いは上手で最初から怖がらなかった
最初はビビっていたメリウスも、俺に服従してるチュラ美と同じだと説明すると安心してくれた。
美しい白馬に跨る姫騎士メリウスはお伽話に出る登場人物のように美しく。
マイアとメリウスの二人の笑顔は見る者を幸せにしただろう
アリアも乗りたそうにしていたが、ローブだと太ももまで出てしまうので遠慮してもらった
都市:タイラント
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
街にたどり着くと壁の近くに留守番組が出迎えてくれて、
白馬に跨る、マイアとメリウスに住民も冒険者も見惚れていた。
~「「「お帰りなさい」」」~
新たに増えた領地に喜ぶ住民達
無事の帰還を喜ぶ冒険者仲間
俺の帰りを首を長く待っていた女達
それぞれに「ただいま」と告げ、メリウスに促されて改めてピンヒールに乗り、声高に叫ぶ
「皆んな聞いて欲しい!…俺たちは、塔の外に領地を得る事が出来た!
これは冒険者や商人街、この街に住む皆の協力が無ければ、何年かかったか…いや出来なかった可能性さえある!
知らない世界に召喚され、未知の領域は怖いだろう、俺だってそうだった…
だけどなあ!!ここに居る仲間を信じろ!!俺たちは魔物になんぞにやられはしない!!
今日、この都市はタイラントという名前を得た!!俺たちは大丈夫だ!!
この世界に新たな国を作ろう!!我々の国を!!」
~「「「「うおおおお!!タイラント!タイラント!!タイラント!!!」」」」~
メリウスとマイアが全部考えてくれたのを必死に覚えた甲斐があった。
街は熱気に包まれ、お祭り騒ぎになった、人々に紛れてタカシもサーナと抱き合って喜んでいた。
ログハウスに帰るとキラキラした女達に歓待を受け、全員満足するのに次の日の昼までかかった。
ちなみに厩にピンヒールを入れようとしたら、他の馬が脅えてしまうのでピンヒール専用を作る事になった。
2日後、エリス、アリア、マイア、メリウスの初期メンバーを連れて十一階層の扉を開けた
ヤヨイ、ミキ、サキは妊娠中の為ログハウスに残っている。
ヤヨイは特に心配したが、どう考えても五階層のような事は無さそうな事をメリウスが説明してくれて、何とか納得してくれた。
塔十一階層
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ここはまるで、ピンヒールの森と同じだな?」
「でも、印象が全く違いますわ」
「ええ、黒い巨木に黒い草、ピンヒールは緑に白い巨木でした」
「お兄ちゃん、ここは長くいたくない」
「久しぶりの戦闘なんだから、私に全部任せなさい!」
何故かエリスだけがノリノリだった
五人でピンヒールの森で辿った道を歩き直すように進んでいくと、
現れたのはマッドモンキー……ではなく、
バスケットボールぐらいの大きさの蜂だった
数百の蜂が襲いかかり、
「エリスは魔法で迎撃しろ!メリウス、マイア!アリアを守れ!俺はボスを探す!」
「必要ないわ!ナパームボム!!」
巨大な火の玉が当たり四方に飛び着弾すると同時に、広域の火柱巻き上がり、そこから小さな火の玉が、蜂を貫いていく
やがて、火柱が収まると黒こげの蜂が転がるがどこもかしこも元々黒いので解りづらかった。
これで終わりかと思ったが、ブブブブっと癪に触る音が耳に届く、
耳障りな羽音が聴こえてくる方を見ると、森の奥に人ぐらいの大きさの蜂が空中でホバリングしていた。
マッドモンキーのボスとは違い逃げる様子を見せない、
巨大な蜂に刀を構えると
ヒュンと一瞬消えた、直線ではなく、エリスを狙う為、横に動いてから攻撃に移ったのだ
きゃあ!とエリスの悲鳴が聞こえて焦るが、防御体制のメリウスが迎え撃ってくれた。
久々に女を攻撃されて頭に血がのぼる
俺は巨大なボス蜂を追う、
嘲笑うかの様に飛び回る巨大な蜂は、
「チョロチョロすんな!!うっとおしい!!」
俺が投げた刀が光の道のように突き進み、反応する事もできずに串刺しにされて巨木の標本になった、
ただし巨木を七本程突き抜けてだが
「マイア、止めだ」
「はい!」
(え?いる?トドメ?)
蜂は動かなくなり?、刀を抜くと地面に崩れ落ちた
((((怒らせない様にしよう)))
「胸糞悪い階層だ、さっさと終わらせよう」
「「「「はい!」」」」
同じ場所に小川があったが少し凶暴になったマッドモンキーがまた現れたが
マイアの魔法がまたエグかった、「ナパームボム!」幹穴に打ち込まれた火柱があっという間に
瞬滅させていく。
幹穴の奥に居たのはやはり馬だったが、真っ黒だった。
ピンヒールより巨大な身体を二本足で俺たちを威嚇し嘶いた
ずっとイライラしていた俺は刀を抜いたまま近づくとこちらに突進する馬をパリイで弾く、もう物理攻撃ならなんでも弾くなコレ
後ろに吹っ飛び体制を立て直す黒い馬首をソードスラッシュで叩き落としてやった。
///////////////
…十一階層の魔物が全て排除されました。
十二階層に進む事が出来ます。
///////////////
「おっお疲れ様でした一度十二階層の扉を確認してから戻りましょう」
「そっそうね、そうしましょう」
「おにぃちゃん、すごーい!」
「あの馬、いや馬っていうんですか?」
メリウスとエリスは、ぎこちない笑顔で、マイアはいつも通りでアリアは混乱していた。
十二階層の扉を確認すると
「タイラント近くにある、迷宮のダンジョンコアを破壊した時、この扉は解放される
ダンジョンの入り口は無数にあるが、全てのダンジョンは一つのコアへと続く道となるだろう」
という事らしい
これに反応したのはマイアとメリウスだった、
なんでも、普通のダンジョンは多少の入り口が繋がる事はあっても、無数には繋がらない。
また複数の入り口があるダンジョンは基本的に階層が多くトラップも多いのが一般的で、
即死系が多いらしい。
ひとまずログハウスに戻り対策を考える事になった俺たちは、1層の待機ゾーンに戻り、そこで意外な人物と出会う事となった。
第十六話 完
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