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160話、初めての来客者と、決め台詞キャンセル
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「私、メリーさん。今、少し緊張しているの」
『ごめんねー。今、唐揚げを作ってるから手が離せないんだ』
「あの二人に出来立てを振る舞うには、もう揚げる段階に入らないと間に合わないものね」
コータロー君とカオリちゃんが、ハルの家へ訪れるまで、残り約二分弱。ハルは極上の唐揚げを作っているので、インターホンの対応が出来ない。
なんで私が、率先して対応すると名乗り出たものの……。このタイプの受話器を持つのは、生まれてこの方初めてだから、変に緊張してきちゃった。
『ちなみになんだけどさ。間違ってでも、決め台詞は言わないでよ?』
「今言ったばかりなんだから、言う訳ないでしょ?」
『あっ、そっか。なら大丈夫だね』
スパッと豪語してしまったけど、正直あまり自信が無い。だってこれ、電話ボックスにある受話器と、形がほとんど一緒なんでしょ?
つまり、頭では分かっているけれども。私の性が悪さをして、この受話器を電話だと判断してしまうと、無意識に決め台詞を言う可能性がある。
一応私って、商店街では、成人を迎えた大人だという設定になっているのよね。そんな初々しい大人が、子供に『私、メリーさん』と言ってみなさい?
どうせ信じてくれないだろうし、ただただ私が、恥ずかしい思いをするだけだ。よし、決めた。築き上げた威信にかけて、意地でも決め台詞は言わないわよ。
「あと、ハル? 名乗る時って『春茜』とメリー、どっちでもいいの?」
『うん。あの二人には、どっちでも通じるだろうし、好きな方を名乗っていいよ』
「そう。じゃあ春茜にするわ」
『おおうっ。嬉しいこと言ってるくれるじゃあないの。じゃあ、よろしく頼むね』
私のアプローチに声を弾ませたハルが、通話を切った。好きな方といったら、当然ハルに決まっている。
あんたが作った料理だって、もちろん好きよ。けど、あんた自身も好きなんだからね。
これ、ハルにいきなり言ったら、どういう反応を示すのかしら? いつの日か、当たり前のように言える日が来るといいなぁ───。
「ふおっ!?」
不意に目の前から、『ピンポーン』という特大の音が鳴り響いたせいで、体に大波を立たせる私。
ビックリした、ビックリした! インターホンの音って、こんなに大きの!? 完全に油断していたから、情けない声が出ちゃったわ……。
「わぁっ。浮かび上がったモニターに、コータロー君とカオリちゃんが映ってる」
先ほどまで黒い画面だったモニターに、眩しい光が灯ったので、注目してみれば。色は反映されていなく、白黒なコータロー君とカオリちゃんの姿が、モニターに映っていた。
「へぇ~、すごい。どんな原理で映ってるんだろ……、じゃない。早く出ないと」
感心していた頭を横に振り、右手で取った受話器を耳に当てた。
「私、めっ……。ハイ、ハルアカネデス」
危ない! いつもの調子で、決め台詞を言いそうになっていた! 嘘でしょ? 出る瞬間まで意識していたというのに……。
『その声は、メリーお姉ちゃんだ! こんばんわー!』
『メリーお姉さん、こんばんわ!』
受話器越しから伝わって来る、元気があり余った二人分の挨拶よ。
電話をしているのに、二人の顔が見える、この状況。なんだか、すごく新鮮に感じて面白いわ。
「こんばんわ、二人共。今、オートロックを解除するわね」
挨拶を返し、モニターの横にある『解除』ボタンを押す。すると、受話器から『ピピピッ』という高い機械音を発し、遅れて鍵が開く音もした。
『なんか扉から『ガチャッ』って音がした! これで鍵が開いたの?』
「ええ、そうよ」
『ほんとだ、開いてる! じゃあ、メリーお姉さん。そっちに行くね!』
『ばいばーい!』
手を振ってくれた二人が、モニター外に行ってしまったので、受話器をそっと戻した。
「ふふっ。ほんと、いつも元気ね。さて、出迎えてあげないと」
口元が緩んだことを感じつつ、玄関に向かい、靴を履く。たまに、クセで扉をすり抜けちゃう時があるから、気を付けて普通に出ないと。
「ん?」
鍵を開けて、扉を開けようとするも。扉の向こう側から、なんとも騒がしい足音が複数聞こえてきた。もしかして、もう来ちゃったっていうの?
「あら、早いわね」
扉を開けて、夕陽かりで目が眩む視界の先。明るさに目が慣れてくると、夕陽をよりも明るい笑顔をしたコータロー君達が立っていた。
「こんばんわ! 一気に駆け上がって来ちゃった!」
「メリーお姉さん、こんばんわっ!」
ここ、マンションの五階よ? 二人して駆け上がって来たというのに、息一つすら切らしていないなんて。相変わらずすごいわね、子供の体力って。
「ええ、こんばんわ。さあ、中に入ってちょうだい」
「おじゃましまーす!」
「おじゃましますっ!」
二人が玄関に入ったことを確認し、開けたばかりの扉を閉め、鍵を掛ける。さてと、今日は一段と楽しい夕食になりそうね。
この子達は、ハルが作った唐揚げを気に入ってくれるかしら? おいしそうな顔をしながら食べて、好きになってくれるといいなぁ。
『ごめんねー。今、唐揚げを作ってるから手が離せないんだ』
「あの二人に出来立てを振る舞うには、もう揚げる段階に入らないと間に合わないものね」
コータロー君とカオリちゃんが、ハルの家へ訪れるまで、残り約二分弱。ハルは極上の唐揚げを作っているので、インターホンの対応が出来ない。
なんで私が、率先して対応すると名乗り出たものの……。このタイプの受話器を持つのは、生まれてこの方初めてだから、変に緊張してきちゃった。
『ちなみになんだけどさ。間違ってでも、決め台詞は言わないでよ?』
「今言ったばかりなんだから、言う訳ないでしょ?」
『あっ、そっか。なら大丈夫だね』
スパッと豪語してしまったけど、正直あまり自信が無い。だってこれ、電話ボックスにある受話器と、形がほとんど一緒なんでしょ?
つまり、頭では分かっているけれども。私の性が悪さをして、この受話器を電話だと判断してしまうと、無意識に決め台詞を言う可能性がある。
一応私って、商店街では、成人を迎えた大人だという設定になっているのよね。そんな初々しい大人が、子供に『私、メリーさん』と言ってみなさい?
どうせ信じてくれないだろうし、ただただ私が、恥ずかしい思いをするだけだ。よし、決めた。築き上げた威信にかけて、意地でも決め台詞は言わないわよ。
「あと、ハル? 名乗る時って『春茜』とメリー、どっちでもいいの?」
『うん。あの二人には、どっちでも通じるだろうし、好きな方を名乗っていいよ』
「そう。じゃあ春茜にするわ」
『おおうっ。嬉しいこと言ってるくれるじゃあないの。じゃあ、よろしく頼むね』
私のアプローチに声を弾ませたハルが、通話を切った。好きな方といったら、当然ハルに決まっている。
あんたが作った料理だって、もちろん好きよ。けど、あんた自身も好きなんだからね。
これ、ハルにいきなり言ったら、どういう反応を示すのかしら? いつの日か、当たり前のように言える日が来るといいなぁ───。
「ふおっ!?」
不意に目の前から、『ピンポーン』という特大の音が鳴り響いたせいで、体に大波を立たせる私。
ビックリした、ビックリした! インターホンの音って、こんなに大きの!? 完全に油断していたから、情けない声が出ちゃったわ……。
「わぁっ。浮かび上がったモニターに、コータロー君とカオリちゃんが映ってる」
先ほどまで黒い画面だったモニターに、眩しい光が灯ったので、注目してみれば。色は反映されていなく、白黒なコータロー君とカオリちゃんの姿が、モニターに映っていた。
「へぇ~、すごい。どんな原理で映ってるんだろ……、じゃない。早く出ないと」
感心していた頭を横に振り、右手で取った受話器を耳に当てた。
「私、めっ……。ハイ、ハルアカネデス」
危ない! いつもの調子で、決め台詞を言いそうになっていた! 嘘でしょ? 出る瞬間まで意識していたというのに……。
『その声は、メリーお姉ちゃんだ! こんばんわー!』
『メリーお姉さん、こんばんわ!』
受話器越しから伝わって来る、元気があり余った二人分の挨拶よ。
電話をしているのに、二人の顔が見える、この状況。なんだか、すごく新鮮に感じて面白いわ。
「こんばんわ、二人共。今、オートロックを解除するわね」
挨拶を返し、モニターの横にある『解除』ボタンを押す。すると、受話器から『ピピピッ』という高い機械音を発し、遅れて鍵が開く音もした。
『なんか扉から『ガチャッ』って音がした! これで鍵が開いたの?』
「ええ、そうよ」
『ほんとだ、開いてる! じゃあ、メリーお姉さん。そっちに行くね!』
『ばいばーい!』
手を振ってくれた二人が、モニター外に行ってしまったので、受話器をそっと戻した。
「ふふっ。ほんと、いつも元気ね。さて、出迎えてあげないと」
口元が緩んだことを感じつつ、玄関に向かい、靴を履く。たまに、クセで扉をすり抜けちゃう時があるから、気を付けて普通に出ないと。
「ん?」
鍵を開けて、扉を開けようとするも。扉の向こう側から、なんとも騒がしい足音が複数聞こえてきた。もしかして、もう来ちゃったっていうの?
「あら、早いわね」
扉を開けて、夕陽かりで目が眩む視界の先。明るさに目が慣れてくると、夕陽をよりも明るい笑顔をしたコータロー君達が立っていた。
「こんばんわ! 一気に駆け上がって来ちゃった!」
「メリーお姉さん、こんばんわっ!」
ここ、マンションの五階よ? 二人して駆け上がって来たというのに、息一つすら切らしていないなんて。相変わらずすごいわね、子供の体力って。
「ええ、こんばんわ。さあ、中に入ってちょうだい」
「おじゃましまーす!」
「おじゃましますっ!」
二人が玄関に入ったことを確認し、開けたばかりの扉を閉め、鍵を掛ける。さてと、今日は一段と楽しい夕食になりそうね。
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