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120話、枯れた心を潤すデザート
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「……私、メリーさん。今、大海原のど真ん中にいるの……」
『めっちゃくちゃ未練が残ってるじゃん。なに、マグロでも獲ってるの?』
「ほら、見てハル……。えんがわが、こんなに沢山泳いでるわ……」
『残念なお知らせなんですが、えんがわは部位の名前でして。正確には、カレイのヒレの付け根部分なんですよ』
梅雨が到来した時期から始まり、梅雨と共に昨日終わりを迎えた海鮮祭り。その信じがたい事実を、未だ受け止められないでいる。
一応、ハルが気を利かせてくれて、今日は唐揚げ祭りを開催してくれたので、なんとか一命は取り留めた。
あの救命唐揚げがなかったら、今頃私はショックで寝込んでいたかもしれない。
『メリーさん。デザートを作ろうと思ってるんだけど、いっぱい欲しい?』
「枯れ果てた心が、満たされるぐらい欲しいわ……」
『オッケー。んじゃ、二本全部入れちゃおっと』
二本全部? 確か、マグロとかサーモンの単位って、形によっては柵じゃなかったっけ? いや、違う。ハルは今、デザートを作っているんだ。
デザートって言ったら、やはりえんがわ───。ダメだ。何かを考えようとすると、全てが都合よく海鮮祭りに変換されていく。
「ん?」
ハルが居る台所から、なんとも聞き慣れない音が聞こえてきたので、テーブルに突っ伏していた顔を台所へ向ける。
あの、色んな物が混ざっていそうな激しい流動音は、たぶんミキサーね。かなりの爆音が鳴り響いているけど、近所迷惑にならないかしら?
時間にして、約一分後。テレビの音をも掻き消していた流動音が止み、そこから更に少し経った頃。台所から、両手にコップを持ったハルが現れた。
「お待たせー」
「これは……、なんだっけ?」
視界近くに置かれたコップの全容を確かめるべく、顔をコップに近づける。中に注がれているのは、やや黄色みを帯びた白のドロドロしていそうな物。
これ、インターネットの動画やテレビで、たまに観た事があるような気がする。ストローが刺さっているから、飲み物系のデザートよね。
匂いは、嗅いだ瞬間に分かってしまった。この間違えようのない甘い匂い、私の好きなバナナだ。
「あ、分かった。これ、バナナのスムージーね」
「正解! バナナと氷と牛乳、それに砂糖を少しだけ加えたシンプルなスムージーだよ」
「へぇ、氷も入ってるんだ」
ならば全体的に冷えていて、砕けた氷の食感も楽しめそう。それに、バナナと氷と牛乳、あとは砂糖を適量入れて、ミキサーにかけるだけでしょ?
洗うのがちょっと大変そうだけど、私でも簡単に作れそうだわ。
「じゃあ、早速頂くわね」
「どうぞー。どれどれ、私もっと」
どうやら、私が思っている以上に冷えているようで。コップを持ったら、手の平から引き締まる冷たさを感じた。
いいわね、このヒンヤリ具合。夜になろうとも、日中の暖かさがまだ残っているから、嬉しい冷たさだ。さてと、飲んでみようかしらね。
「う~んっ! 甘くておいしいっ!」
砂糖や牛乳の甘さがプラスされているけれども。使用された具材はバナナだけなので、素材本来の濃密な甘さと風味が、口の中にぶわっと広がっていく。
食感は、ほぼ想像通りね。けど、ちょっと不思議な感じもするわ。全体的にトロっとしているものの、噛んでみると、砕けて小さくなった氷のカリカリとした歯応えを連続で感じる。
しっかり冷えているから、喉越しはクリーミーながらもあっさりしていて、鼻から呼吸をすれば、もうバナナ一緒くた。
後味に出てくる、まろやかでスッと消えていく牛乳の儚いコクと甘さ。僕をもう一度飲んでくれと主張してくる、バナナの強い甘さがたまらないわ。
「これ、大好きだなぁ。何度も飲みたくなっちゃうわ」
「作るのは簡単なのに、めっちゃ美味いよね。生クリームとか入れたら、更に美味しくなりそう」
「氷じゃなくて、バニラアイスを代用しても良さそうよね」
「あっ、いいね! その案いただき。今度作ったら、バニラを入れてみるよ」
バナナとバニラアイスの組み合わせは、合わない訳がない。ピザとコーラに勝るとも劣らない、最強の組み合わせになるはずよ。
しかし、生クリームとの相性も良さそうなのよね。そんな事を考えていたら、だんだん飲みたくなってきちゃった。
「ねえ、ハル。生クリームを入れたバナナのスムージーも、その内作ってくれないかしら?」
「いいよ。私も気になってるから、飲みたくなったら言ってちょうだい」
「そう、ありがとう。近々必ず言うわ」
私のワガママを快諾してくれたハルが、ストローを通してバナナのスムージーを飲んでいく。どうやらハルも、ちょっと気になっているらしい。
よしよし。この調子なら、しばらくの間、デザートにバナナのスムージーが出てきそうだ。しかも、味がちょっとずつ変わってね。
『めっちゃくちゃ未練が残ってるじゃん。なに、マグロでも獲ってるの?』
「ほら、見てハル……。えんがわが、こんなに沢山泳いでるわ……」
『残念なお知らせなんですが、えんがわは部位の名前でして。正確には、カレイのヒレの付け根部分なんですよ』
梅雨が到来した時期から始まり、梅雨と共に昨日終わりを迎えた海鮮祭り。その信じがたい事実を、未だ受け止められないでいる。
一応、ハルが気を利かせてくれて、今日は唐揚げ祭りを開催してくれたので、なんとか一命は取り留めた。
あの救命唐揚げがなかったら、今頃私はショックで寝込んでいたかもしれない。
『メリーさん。デザートを作ろうと思ってるんだけど、いっぱい欲しい?』
「枯れ果てた心が、満たされるぐらい欲しいわ……」
『オッケー。んじゃ、二本全部入れちゃおっと』
二本全部? 確か、マグロとかサーモンの単位って、形によっては柵じゃなかったっけ? いや、違う。ハルは今、デザートを作っているんだ。
デザートって言ったら、やはりえんがわ───。ダメだ。何かを考えようとすると、全てが都合よく海鮮祭りに変換されていく。
「ん?」
ハルが居る台所から、なんとも聞き慣れない音が聞こえてきたので、テーブルに突っ伏していた顔を台所へ向ける。
あの、色んな物が混ざっていそうな激しい流動音は、たぶんミキサーね。かなりの爆音が鳴り響いているけど、近所迷惑にならないかしら?
時間にして、約一分後。テレビの音をも掻き消していた流動音が止み、そこから更に少し経った頃。台所から、両手にコップを持ったハルが現れた。
「お待たせー」
「これは……、なんだっけ?」
視界近くに置かれたコップの全容を確かめるべく、顔をコップに近づける。中に注がれているのは、やや黄色みを帯びた白のドロドロしていそうな物。
これ、インターネットの動画やテレビで、たまに観た事があるような気がする。ストローが刺さっているから、飲み物系のデザートよね。
匂いは、嗅いだ瞬間に分かってしまった。この間違えようのない甘い匂い、私の好きなバナナだ。
「あ、分かった。これ、バナナのスムージーね」
「正解! バナナと氷と牛乳、それに砂糖を少しだけ加えたシンプルなスムージーだよ」
「へぇ、氷も入ってるんだ」
ならば全体的に冷えていて、砕けた氷の食感も楽しめそう。それに、バナナと氷と牛乳、あとは砂糖を適量入れて、ミキサーにかけるだけでしょ?
洗うのがちょっと大変そうだけど、私でも簡単に作れそうだわ。
「じゃあ、早速頂くわね」
「どうぞー。どれどれ、私もっと」
どうやら、私が思っている以上に冷えているようで。コップを持ったら、手の平から引き締まる冷たさを感じた。
いいわね、このヒンヤリ具合。夜になろうとも、日中の暖かさがまだ残っているから、嬉しい冷たさだ。さてと、飲んでみようかしらね。
「う~んっ! 甘くておいしいっ!」
砂糖や牛乳の甘さがプラスされているけれども。使用された具材はバナナだけなので、素材本来の濃密な甘さと風味が、口の中にぶわっと広がっていく。
食感は、ほぼ想像通りね。けど、ちょっと不思議な感じもするわ。全体的にトロっとしているものの、噛んでみると、砕けて小さくなった氷のカリカリとした歯応えを連続で感じる。
しっかり冷えているから、喉越しはクリーミーながらもあっさりしていて、鼻から呼吸をすれば、もうバナナ一緒くた。
後味に出てくる、まろやかでスッと消えていく牛乳の儚いコクと甘さ。僕をもう一度飲んでくれと主張してくる、バナナの強い甘さがたまらないわ。
「これ、大好きだなぁ。何度も飲みたくなっちゃうわ」
「作るのは簡単なのに、めっちゃ美味いよね。生クリームとか入れたら、更に美味しくなりそう」
「氷じゃなくて、バニラアイスを代用しても良さそうよね」
「あっ、いいね! その案いただき。今度作ったら、バニラを入れてみるよ」
バナナとバニラアイスの組み合わせは、合わない訳がない。ピザとコーラに勝るとも劣らない、最強の組み合わせになるはずよ。
しかし、生クリームとの相性も良さそうなのよね。そんな事を考えていたら、だんだん飲みたくなってきちゃった。
「ねえ、ハル。生クリームを入れたバナナのスムージーも、その内作ってくれないかしら?」
「いいよ。私も気になってるから、飲みたくなったら言ってちょうだい」
「そう、ありがとう。近々必ず言うわ」
私のワガママを快諾してくれたハルが、ストローを通してバナナのスムージーを飲んでいく。どうやらハルも、ちょっと気になっているらしい。
よしよし。この調子なら、しばらくの間、デザートにバナナのスムージーが出てきそうだ。しかも、味がちょっとずつ変わってね。
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