私、メリーさん。今、あなたと色んな物を食べているの

桜乱捕り

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115話、出身地が決められた道産子都市伝説

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「なんだか嬉しそうにしてるけど、何か良い事でもあったの?」

「うん、めちゃくちゃ良い事があった。商店街に居る子供達から聞いたよ? なんでも、ブタメェンを奢ったらしいじゃん」

「うっ……。言っちゃったのね、あの子達」

 別に、隠していた訳じゃないけれども。ハルに話したって事は、どうやらあの子達とハルにも、ちょっとした繋がりがあるみたいね。

「もう、すっごく嬉しそうに語ってたよ。今日も駄菓子屋で、『グルグルもんじゃ』を食べたんだって?」

「ぜ、全部話してるじゃない。ええ、そうよ。みんなで楽しみながら食べたわ」

 ソースをふんだんに含み、とろみと粘り気が強いあんと、サクサク感が堪らなくおいしかった『グルグルもんじゃ』。あまりにもおいしかったから、ついおかわりをしちゃったわ。

「ていうか、ハルもあの子達を知ってるの?」

「うん。こっちに来てから、ちょくちょく遊んでる子達なんだ。ちなみに、男の子がコータロー君で、女の子がカオリちゃんっていう名前だよ」

「あ、そんな名前なのね。そういえば、名前を聞いてなかったわ」

 男の子が、コータロー君。で、女の子がカオリちゃん。流石に名前ぐらいは、しっかり覚えておいた方がいいわよね。今度会ったら、早速名前で呼んであげよう。

「それにしてもさ。メリーさん、あの子達にめっちゃ慕われてるじゃん。美人で優しいって、笑顔で言ってたよ」

「それ、初めて会った時も言われたわ。私って、そんなイメージがあるの?」

「う~ん、どうだろう? 私は、もう目が慣れちゃったからなぁ。とにかく、レベルは相当高いと思うよ。テレビで出てる、モデルと張れるんじゃない?」

「そ、そんなになの? ……はぁ」

 この私が、テレビで出ているモデルと張れるっていうの? いや、そんな訳ないじゃない。いくら都市伝説である私でも、敵わない相手ぐらいは直感で分かる。
 まあ、普通に戦うのであれば、当然私は負けないわ。音も無く背後に忍び寄り、文字通り相手を捻り倒せる。しかし、美人対決となると、話はまったくの別。
 なんせ相手は、軒並み美人オーラを習得している強者達だ。習得をしていない私には、到底敵わないでしょうね。

「ちなみに、それが嬉しかった理由なの?」

「そうだね。メリーさんが、子供達にすごく慕われてるって分かったら、なんだか自分のように嬉しくなっちゃってさ。今でも思い出すだけで、顔の緩みが止まらないんだよね」

 嬉しそうにしている理由を明かしてくれたハルが、なんとも柔らかい笑みを浮かべた。
 私が子供達に慕われると、ハルが嬉しくなると。一体、どうしてなのかしら? 理由は聞けたけど、謎が深まるばかりだわ。

「なんで、それであんたが嬉しくなるの?」

「さあ、なんでだろう? メリーさんが、人間と上手く馴染めてるからかな? しかも、子供達の人気者にまでなっちゃってるんだもん。それが分かった時は、心の底から嬉しくなったよ。その関係、今後もずっと大事にして欲しいなぁ」

 そう嬉々と語るハルが、私の心をくすぐる優しい微笑み顔になった。私が人間と良い関係を築くと、ハルまでもが嬉しくなる。
 ひとまず、ハルが嬉しくなる理由は分かった。もちろん、その関係は私から崩すつもりは無いものの。どうしてハルは、そこまで嬉しくなるんだろう?
 たぶん、これ以上聞いても分からないだろうし。とりあえず、もっと人間との関係を深めていけばいいわね。ハルが嬉しくなるなら、それだけで私も嬉しいわ。

「あんたに言われなくても、そうしてくわ」

「うん、そうしてちょうだい。あと、メリーさんに謝罪しないといけない事がありますっ!」

 いきなり声を荒げたハルが、勢いよく頭を下げ、テーブルに『ゴッ』と音を立てながらひたいをぶつけた。
 ……こういう時のハルって、決まって凄まじく嫌な予感がするのよね。正直、聞きたくないわ。

「それ、聞かないとダメ?」

「はいっ! メリーさんの出身地に関わる大事な話でございますので、聞いてもらわねば困ります故!」

「へ? 私の、出身地?」

「そうでございますっ!」

 ハキハキとした声で喋り続けるハルが、顔をバッと上げた。表情は凛々しく、赤くなったひたいから白い湯気が微かに昇っている。あの額、相当強くぶつけたみたいね。

「実はコータロー君達に、私とメリーさんの関係について問われまして! そこを話さないと怪しまれると思い、私とメリーさんを、昔からの幼馴染という設定にしてしまいました!」

「あんたと私が、昔からの幼馴染? まあ、それは別にいいけど。なんで、そこで出身地の話が出てくるの?」

 不思議に思って質問を足してみると、ハルの顔が強張っていき、ヒクついている頬を指で掻いた。

「……実は私、北海道出身なんスよ」

「え? ほ、北海道!?」

「は、はい……」

 北海道って、飛行機か船に乗らないと行けない場所じゃない! 嘘でしょ? ここ、どこだと思っているの? 都心が近くにある県よ!?

「ちょ、ちょっとあんた! 私、北海道なんて行った事ないし、ジンギスカンや牛乳がおいしい事ぐらいしか知らないわよ!? コータロー君達に言われたら、どう説明すればいいのよ!?」

「ほんっとマジですみません! ある程度の特徴や名産を教えますので、それで許してもらえませんでしょうかっ!」

 どうやら、本当に悪いと思っているのか。ダメージを負ったばかりの額を、先ほどよりも強くテーブルに叩き付けた。
 まさか、ハルの出身地が北海道だったなんて。だから、ハルの兄貴が送ってきてくれた海鮮類が、あんなにもおいしかったんだ。
 しかし、私まで北海道出身になってしまうとは。きっとハルも、コータロー君達にすごい勢いで問い詰められたんでしょうね。
 そして考えた末に、私とハルが昔からの幼馴染になってしまったと。……私も、最初はそんな風に言い逃れしちゃったし。ハルに、そこまで強く言う権利は無いわね。

「ったく。もう~、しょうがないわねぇ。ちゃんとしっかり教えてちょうだいよ?」

「ありがとうございます! それと、もう一つだけ申し上げてもよろしいでしょうか?」

 更に話を切り替えたハルが、申し訳なさそうな苦笑いになり、手でごまをすり出した。もしかして、まだ嫌な話が続くっていうの?
 でも、どうせ聞かないといけないだろうし……。どうしよう、出身地以上の話が出てきたら。同じ学校に通っていたなんて言われたら、目も当てられないわ。

「……な、なに?」

「え~っとね? メリーさん、コータロー君達と、日曜日にも駄菓子屋で会う約束をしてるでしょ?」

「ええ、そうね。してるわ」

「んでさ? 私もメリーさんと一緒に、駄菓子屋に来てよって誘われちゃったんだ」

「あら、そうなの?」

 なんだ。意味深に話を付け加えたと思ったら、そんな話なのね。よかった、なんて事はない内容で。身構えちゃって損しちゃったわ。

「そうなんスよ。なので、私も一緒に駄菓子屋へ行ってもよろしいでしょうか?」

「コータロー君達に、そうせがまれたんでしょ? なら構わないわ。一緒に行きましょ」

「いいんスか!? いやぁ~、重ね重ね本当に申し訳ございません。ありがとうございますっ!」

「元々、あんたとも駄菓子屋へ行く約束をしてたしね。日曜日、楽しみにしてるわ」

 要は、約束していた日にちが明確に決まっただけの事。そうなると、今週の土日は忙しくなってくるわね。
 土曜日に、『楽楽らくらく』という居酒屋へ行くでしょ? そして日曜日は、ハルと一緒に駄菓子屋へ行き、大勢でおいしい駄菓子を食べる。うん、最高の土日になりそうだ。
 けどその前に、北海道について色々勉強をしておかないと。ハルには悪いけど、しばらく遅くまで起きていてもらうわよ? もちろん、私が立派な北海道県民になるまでね。
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