86 / 199
84話、カリカリトロトロ一件目
しおりを挟む
「ほら、メリーさん。ここで食べられるよ」
「へぇ~。各店舗に椅子やテーブルがあって、買った物を食べられるスペースがあるのね」
「そうそう。便利だよね、この一角。出たゴミも捨てられるし、食べ歩きをするには最適の場所だよ」
私とハルで綿密に話し合い、商品を被らず購入出来たものの。『アリオン』のどこで食べようか、ハルに問い掛けた矢先。『銀々だこ』のすぐ隣にあるスペースを教えてくれた。
縦長に奥まで続いていて、可もなく不可もなくな広さ。仕切りもちゃんとあるので、なんだか妙に落ち着く空間になっている。いいわね、食べるにはちょうどいい広さだ。
「席は、ここでいいかな」
「そうね」
ハルがチョイスした席は、ほぼ真ん中付近の位置。通路から私達の姿が見えなさそうだし、悪くない席ね。奥にハルが座ったので、私は手前に座ろう。
「メリーさんが買ったたこ焼き、かつお節が踊ってて美味しそうだね」
「ハルの方も、サッパリしてそうでおいしそうだわ」
私が買ったのは、極々シンプルなたこ焼き。香ばしい匂いが漂うソースを纏い、彩りが映えて、ソースにも負けない匂いを感じる青のり。
そして、全体的に満遍なく振りかかっている、気持ち細かなかつお節。ハルの言う通り、たこ焼きの熱で、かつお節が踊っているわ。
ハルが買ったのは、ソースと青のりの代わりに乗った、かつお節と小口切りされた大量のネギ。更にその上には、刻み海苔がちょこんと居座っている、通称『たこねぎ』。
しかも『たこねぎ』には、備え付けに大根おろしと天つゆまである。大根おろし自体は、まだ食べた事がないけれども。あの組み合わせだって、絶対においしいはずよ。
「さあさあ、栄えある食べ歩きの一件目! 早速いただきますか」
「割り箸と爪楊枝があるけど。たこ焼きを食べるなら、やっぱ爪楊枝よね?」
「そうだねー、そっちのイメージが強いかな」
「ちなみにハルは、どっちで食べるつもりでいるの?」
「私? 私のたこ焼きは、ネギがいっぱい乗ってるし~」
そう言葉を溜めたハルが、割り箸を両手で持ち、寸分の狂いも無く綺麗に割った。
「食べやすそうな、割り箸かな」
「あっ、ちょっと! 私が割ってあげようと思ったに、なんで先に割っちゃうのよ?」
「え? ……ああ~。そういえば『銚子号』で、そんな事を言ってたね。ごめんごめん」
どうやら、私が『銚子号』で言った言葉を思い出したようで。『たこねぎ』が盛られた容器に割り箸を添えたハルが、申し訳なさそうに苦笑いをした。
「もう、仕方ないわね。今度割る時がきたら、ちゃんと私に渡しなさいよ?」
「了解! 頼りにしてまっせ。んじゃ、いただきまーす」
「いただきます」
控えめに挨拶を唱え、右手に爪楊枝を二本持つ。この食べ方、たこ焼きについてインターネットで調べていたら、たまたま見つけたのよね。
一本だと安定せず、クルクル回ってしまったり。たこ焼き自体が柔らか過ぎると、刺した爪楊枝をすり抜けて落ちてしまうらしい。
確かに。二本の爪楊枝でたこ焼きを刺してみたら、まったく回らずに安定している。
支えも二本あるので、軽く動かそうとも、すり抜けていかない。さて、初めてのたこ焼き、食べてみるわよ!
「アチチッ……、ほふほふほふっ。う~ん! 色んな食感がする~っ」
まず初めに感じたのは、かつお節のきめ細かなサクサク感。次に、これはたこ焼きの表面かしら? ふわふわしているのかと思いきや。感じたのは、予想外のパリパリ感。
そして、そのパリパリの壁を越えた先に居るは、ふわトロッとした熱々の中身。湯気が立っていなかったから、完全に油断していた。
でも、口をはふはふとさせてたこ焼きを冷ますのが、一つの醍醐味ってやつよね。テレビでも観た事があるから、一度やってみたかったのよ。
風味は、爽やかな酸味を持ち合わせたフルーティなソースと、磯の香りが豊かな青のりがせめぎ合っている。しかし、まるで異なった風味ながらも、互いに喧嘩は一切していなく、上手く纏まっていった。
そのせめぎ合いが終わると、ソースと青のりを押しのけて湧いてくる、トロトロな中身の濃い甘さ。ソースの酸味と、青のりのほのかな塩味が、コクと甘さをグッと引き立てていく。
が、それだけは終わらない。トロトロの更に奥から、主役のタコが満を持して出てきた。タコ自体も、結構大きいわね。噛む度に、とても楽しいプリプリな弾力を感じる。
一口で、四度味わえる食感良し。たこ焼き一つで得られる、余韻と満足度も良し。一パック八個入りだから、まだ後七回も食べられる。
いいわね、『銀々だこ』。お金が貯まったら、買いに来ちゃおうかしら?
「おいしい~っ、病みつきになっちゃいそうだわ」
「うっわ、めちゃくちゃサッパリしてる。たこ焼きとネギって、こんなに合うんだ。マジで美味え、止まらん」
「あら? ハル? ちょっと、食べるの早くない? ねえ、聞いてる?」
無我夢中で『たこねぎ』を食べ進めていくハルの表情は、心ここに有らずな状態。私の問い掛けに聞く耳を持たず、一つ一つ丁寧に素早く食べていっている。
「ハル? ねえ、ハル? 残り二個しかない……、ああっ!?」
「あっ、全部食べちゃった」
……嘘でしょ? 私はまだ、二つしか食べていないというのに。ようやく意識が戻ったハルの容器には、ネギ一つだって残っていない。
あんなに早く食べていたっていうのに、食べ方はすごく綺麗ね。……じゃなくて!
「あんた、シェアしようって言ったじゃないの! まさか、熱々のたこ焼きを秒殺で食べるだなんて……。そっちの『たこねぎ』も楽しみにしてたのに、あんまりよ……」
「ああ、ごめんごめん。マジで美味かったから、つい。新しいの買ってくるから、それで許してよ」
「……なら、いいわ」
「オッケ、すぐ買ってくる!」
そう両手を前に合わせて頭を下げたハルが、ダッシュでお店に向かっていった。この食べ歩き、先が思いやられるわね。またハルが、暴走しなければいいんだけれども。
「へぇ~。各店舗に椅子やテーブルがあって、買った物を食べられるスペースがあるのね」
「そうそう。便利だよね、この一角。出たゴミも捨てられるし、食べ歩きをするには最適の場所だよ」
私とハルで綿密に話し合い、商品を被らず購入出来たものの。『アリオン』のどこで食べようか、ハルに問い掛けた矢先。『銀々だこ』のすぐ隣にあるスペースを教えてくれた。
縦長に奥まで続いていて、可もなく不可もなくな広さ。仕切りもちゃんとあるので、なんだか妙に落ち着く空間になっている。いいわね、食べるにはちょうどいい広さだ。
「席は、ここでいいかな」
「そうね」
ハルがチョイスした席は、ほぼ真ん中付近の位置。通路から私達の姿が見えなさそうだし、悪くない席ね。奥にハルが座ったので、私は手前に座ろう。
「メリーさんが買ったたこ焼き、かつお節が踊ってて美味しそうだね」
「ハルの方も、サッパリしてそうでおいしそうだわ」
私が買ったのは、極々シンプルなたこ焼き。香ばしい匂いが漂うソースを纏い、彩りが映えて、ソースにも負けない匂いを感じる青のり。
そして、全体的に満遍なく振りかかっている、気持ち細かなかつお節。ハルの言う通り、たこ焼きの熱で、かつお節が踊っているわ。
ハルが買ったのは、ソースと青のりの代わりに乗った、かつお節と小口切りされた大量のネギ。更にその上には、刻み海苔がちょこんと居座っている、通称『たこねぎ』。
しかも『たこねぎ』には、備え付けに大根おろしと天つゆまである。大根おろし自体は、まだ食べた事がないけれども。あの組み合わせだって、絶対においしいはずよ。
「さあさあ、栄えある食べ歩きの一件目! 早速いただきますか」
「割り箸と爪楊枝があるけど。たこ焼きを食べるなら、やっぱ爪楊枝よね?」
「そうだねー、そっちのイメージが強いかな」
「ちなみにハルは、どっちで食べるつもりでいるの?」
「私? 私のたこ焼きは、ネギがいっぱい乗ってるし~」
そう言葉を溜めたハルが、割り箸を両手で持ち、寸分の狂いも無く綺麗に割った。
「食べやすそうな、割り箸かな」
「あっ、ちょっと! 私が割ってあげようと思ったに、なんで先に割っちゃうのよ?」
「え? ……ああ~。そういえば『銚子号』で、そんな事を言ってたね。ごめんごめん」
どうやら、私が『銚子号』で言った言葉を思い出したようで。『たこねぎ』が盛られた容器に割り箸を添えたハルが、申し訳なさそうに苦笑いをした。
「もう、仕方ないわね。今度割る時がきたら、ちゃんと私に渡しなさいよ?」
「了解! 頼りにしてまっせ。んじゃ、いただきまーす」
「いただきます」
控えめに挨拶を唱え、右手に爪楊枝を二本持つ。この食べ方、たこ焼きについてインターネットで調べていたら、たまたま見つけたのよね。
一本だと安定せず、クルクル回ってしまったり。たこ焼き自体が柔らか過ぎると、刺した爪楊枝をすり抜けて落ちてしまうらしい。
確かに。二本の爪楊枝でたこ焼きを刺してみたら、まったく回らずに安定している。
支えも二本あるので、軽く動かそうとも、すり抜けていかない。さて、初めてのたこ焼き、食べてみるわよ!
「アチチッ……、ほふほふほふっ。う~ん! 色んな食感がする~っ」
まず初めに感じたのは、かつお節のきめ細かなサクサク感。次に、これはたこ焼きの表面かしら? ふわふわしているのかと思いきや。感じたのは、予想外のパリパリ感。
そして、そのパリパリの壁を越えた先に居るは、ふわトロッとした熱々の中身。湯気が立っていなかったから、完全に油断していた。
でも、口をはふはふとさせてたこ焼きを冷ますのが、一つの醍醐味ってやつよね。テレビでも観た事があるから、一度やってみたかったのよ。
風味は、爽やかな酸味を持ち合わせたフルーティなソースと、磯の香りが豊かな青のりがせめぎ合っている。しかし、まるで異なった風味ながらも、互いに喧嘩は一切していなく、上手く纏まっていった。
そのせめぎ合いが終わると、ソースと青のりを押しのけて湧いてくる、トロトロな中身の濃い甘さ。ソースの酸味と、青のりのほのかな塩味が、コクと甘さをグッと引き立てていく。
が、それだけは終わらない。トロトロの更に奥から、主役のタコが満を持して出てきた。タコ自体も、結構大きいわね。噛む度に、とても楽しいプリプリな弾力を感じる。
一口で、四度味わえる食感良し。たこ焼き一つで得られる、余韻と満足度も良し。一パック八個入りだから、まだ後七回も食べられる。
いいわね、『銀々だこ』。お金が貯まったら、買いに来ちゃおうかしら?
「おいしい~っ、病みつきになっちゃいそうだわ」
「うっわ、めちゃくちゃサッパリしてる。たこ焼きとネギって、こんなに合うんだ。マジで美味え、止まらん」
「あら? ハル? ちょっと、食べるの早くない? ねえ、聞いてる?」
無我夢中で『たこねぎ』を食べ進めていくハルの表情は、心ここに有らずな状態。私の問い掛けに聞く耳を持たず、一つ一つ丁寧に素早く食べていっている。
「ハル? ねえ、ハル? 残り二個しかない……、ああっ!?」
「あっ、全部食べちゃった」
……嘘でしょ? 私はまだ、二つしか食べていないというのに。ようやく意識が戻ったハルの容器には、ネギ一つだって残っていない。
あんなに早く食べていたっていうのに、食べ方はすごく綺麗ね。……じゃなくて!
「あんた、シェアしようって言ったじゃないの! まさか、熱々のたこ焼きを秒殺で食べるだなんて……。そっちの『たこねぎ』も楽しみにしてたのに、あんまりよ……」
「ああ、ごめんごめん。マジで美味かったから、つい。新しいの買ってくるから、それで許してよ」
「……なら、いいわ」
「オッケ、すぐ買ってくる!」
そう両手を前に合わせて頭を下げたハルが、ダッシュでお店に向かっていった。この食べ歩き、先が思いやられるわね。またハルが、暴走しなければいいんだけれども。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる