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58話、手に届いた高嶺の花
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「私、メリーさん。今、すごく興奮しているの」
『ウィンナーフライの他に、ハムカツやアジフライも作ってるよ。もう少しで揚がるから、ちょい待っててねー』
「えぇっ、いつまでも待つわ」
まさか、今日の夕食が揚げ物だっただなんて! 聞いた瞬間、すっかり鎮火していたウィンナーフライを食べたい欲が、瞬く間に火柱を上げて再燃焼したわ。
『しっかし、食べ歩きにコロッケを選んだんだね。あの店のコロッケ、美味しかったでしょ?』
「そうね。元の味がおいしかったから、結局ソースを掛けないまま完食しちゃったわ」
『ああ、分かる。美味しすぎるから、ペロリと完食しちゃうんだよね。あと、ネギの買い物ありがとうね。今度行った時、おっちゃんにお礼を言っておかないと』
「いつもお世話になってるお礼だって言ってたわよ」
『なら今度は、キャベツ一玉やトマトやら買って、お礼返しをしないとなぁ』
キャベツやトマト、チラリと値段を確認していたけど。キャベツ一玉、トマト三つセット共に、意外と高かった気がする。
お金の重要さにも気付いてしまったし。各食材の値段を知ると、気軽に食べられなくなってくるわね。これからは、もっと大事に味わって食べていかないと。
「お待たせ、メリーさん。熱々特盛セットが出来たよー」
「来たわねっ!」
いつものお盆ではなく、一際大きな一枚皿を持ってきたハルが、テーブルに置いていく。その大皿の上には───。
「わあっ、おいしそう!」
全て同じ衣に包まれているけども、形でなんとなく食材が分かる。ピンと立った太い棒状は、エビフライ。チラリと尾びれを覗かせ、扇状に開いたのがアジフライ。
のっぺりとした長方形なのは、たぶんイカフライね。綺麗な円状で、真ん中が大きく空いているのがオニオンリングかしら? 同じく円状で、それなりに厚いのがハムカツだとして。
そして、私が待ち望んでいた、エビフライと負けず劣らずな太さを誇る、ウィンナーフライ! お店に並んでいた物と、同等かそれ以上に大きい。
「ああ~……。見てるだけで、ご飯が進みそうだわぁ」
「食べる前から、うっとり顔になってるじゃん。頑張って作ったから、絶対に美味しいはずだよ」
自信たっぷりに豪語するハルが、大盛りのご飯とお味噌汁。ソースとタルタルソースが乗った小皿を並べていく。そうだ。揚げ物って、タルタルソースも合うのよね。
それにしても、どれも本当においしそう。いや、絶対においしいのよ。なんて言ったって、ハルが作った揚げ物なのだから!
「ねえ、ハル。おいしいのは分かり切ってる事だし、今日のゲームは無しにしましょう」
「マジっスか!? よっしゃー!」
嬉々とした咆哮を上げ、渾身のガッツポーズをするハル。よしよし。これでハルも、何も気にせず揚げ物をおいしく食べられるわね。本当であれば、ゲーム自体を取っ払うべきなのだけれども。
「いやぁ~、頑張って作った甲斐があったよ。これだったら、コロッケも作っておけばよかったや」
「そういえば、コロッケが無いわね」
「実は、作るのが結構大変なんだよね。レンジでチンしたじゃがいもを、細かく潰すでしょ? その間に、みじん切りした玉ねぎと挽き肉を炒めて、潰したじゃがいもに入れて混ぜ合わせる。そして丸く形を整えて、溶き卵とパン粉の順番にまぶして揚げれば完成。まあ、レシピを見れば分かると思うけど。どれだけ手際よくやっても、三、四十分ぐらいは掛かるかな?」
「き、聞いてるだけで、大変だって事がよく分かったわ……」
それだけ多くの工程を経て、作ったコロッケがたった百円だなんて……。食べ応えのある大判だったし、なんだかとても安く思えてきたわ。
「後で改めて、動画付きのレシピを観てみるわ。それじゃあ、冷める前に食べちゃいましょ」
「そうだね。いただきまーす」
「いただきます」
食事の挨拶を唱え。左手に山盛りのご飯が盛られたお茶碗を、右手に箸を持つ。最初に食べるのは、もちろんウィンナーフライ! まずは、ソースを付けないでっと。
「んん~っ……!」
カリカリの衣からは、『ザクッ』という景気の良い音を。弾力が強いウィンナー本体からは、『パキッ』と何度も聞きなくなる軽快な音が鳴り。
油をたっぷり吸っている事もあってか。衣と皮、二つの層を破ったウィンナーの中から、濃厚で芳醇ながらも水の様にサラサラした肉汁が、弾けんばかりに溢れ出してきた!
この濃ゆくて主張が激しい熱々な肉汁、とにかくご飯と合う! ウィンナーフライ一口に対して、ご飯三口以上食べられるわ!
でも、それだけでは終わらない。ソースを付けたら、更に拍車がかかった! ちょっと酸味が利いたフルーティーなソースを衣に浸しても、ザクザク感は失われずに健在。
けれども、食欲は直に刺激されて爆増。ソースを付けた事によって、よりご飯が欲しくなる風味になり、箸が止まらないっ!
「ああ~っ、さいっこぅ~……」
「やっぱ、揚げ物は出来立てに限るね。こりゃあ、ご飯一杯じゃ全然足りないな」
そうだ。最強のお供であるご飯が先に無くなってしまったら、元も子もない。量次第では、配分を考えて食べていかないと。
「……ねえ、ハル?」
「大丈夫。六合分炊いたから、沢山おかわり出来るよ?」
私の質問を先読みしたハルが、お手本のような悪どい笑みを浮かべ。私とハル、ほぼ同時に親指を立てた。
六合は、一般的なお茶碗で十二杯分相当。だとすれば、私とハルで五回ずつ出来るわね。
「でも、おかわりするなら、早くした方がいいよ? 私だって、今日は本気を出すつもりでいるからね?」
「じゃあ、おかわり」
「はっや!? やべぇ、メリーさんの方が何枚も上手《うわて》だ……」
目を丸くさせて驚いたハルが、口元をヒクつかせながら私のお茶碗を受け取り、台所へ向かっていった。流石に、ウィンナーフライ二本で、ご飯一杯は食べ過ぎたかしら?
いや、明らかに食べ過ぎだ。ご飯や揚げ物が残っていても、お腹がいっぱいになってしまったら、本末転倒だわ。揚げ物を残したっていう未練も残るし、なによりハルに申し訳ない。
よし、配分ペースも考えて食べていこう。今日の最優先事項は、揚げ物を全ておいしく食べる事よ。もちろん、熱々の内にね。
『ウィンナーフライの他に、ハムカツやアジフライも作ってるよ。もう少しで揚がるから、ちょい待っててねー』
「えぇっ、いつまでも待つわ」
まさか、今日の夕食が揚げ物だっただなんて! 聞いた瞬間、すっかり鎮火していたウィンナーフライを食べたい欲が、瞬く間に火柱を上げて再燃焼したわ。
『しっかし、食べ歩きにコロッケを選んだんだね。あの店のコロッケ、美味しかったでしょ?』
「そうね。元の味がおいしかったから、結局ソースを掛けないまま完食しちゃったわ」
『ああ、分かる。美味しすぎるから、ペロリと完食しちゃうんだよね。あと、ネギの買い物ありがとうね。今度行った時、おっちゃんにお礼を言っておかないと』
「いつもお世話になってるお礼だって言ってたわよ」
『なら今度は、キャベツ一玉やトマトやら買って、お礼返しをしないとなぁ』
キャベツやトマト、チラリと値段を確認していたけど。キャベツ一玉、トマト三つセット共に、意外と高かった気がする。
お金の重要さにも気付いてしまったし。各食材の値段を知ると、気軽に食べられなくなってくるわね。これからは、もっと大事に味わって食べていかないと。
「お待たせ、メリーさん。熱々特盛セットが出来たよー」
「来たわねっ!」
いつものお盆ではなく、一際大きな一枚皿を持ってきたハルが、テーブルに置いていく。その大皿の上には───。
「わあっ、おいしそう!」
全て同じ衣に包まれているけども、形でなんとなく食材が分かる。ピンと立った太い棒状は、エビフライ。チラリと尾びれを覗かせ、扇状に開いたのがアジフライ。
のっぺりとした長方形なのは、たぶんイカフライね。綺麗な円状で、真ん中が大きく空いているのがオニオンリングかしら? 同じく円状で、それなりに厚いのがハムカツだとして。
そして、私が待ち望んでいた、エビフライと負けず劣らずな太さを誇る、ウィンナーフライ! お店に並んでいた物と、同等かそれ以上に大きい。
「ああ~……。見てるだけで、ご飯が進みそうだわぁ」
「食べる前から、うっとり顔になってるじゃん。頑張って作ったから、絶対に美味しいはずだよ」
自信たっぷりに豪語するハルが、大盛りのご飯とお味噌汁。ソースとタルタルソースが乗った小皿を並べていく。そうだ。揚げ物って、タルタルソースも合うのよね。
それにしても、どれも本当においしそう。いや、絶対においしいのよ。なんて言ったって、ハルが作った揚げ物なのだから!
「ねえ、ハル。おいしいのは分かり切ってる事だし、今日のゲームは無しにしましょう」
「マジっスか!? よっしゃー!」
嬉々とした咆哮を上げ、渾身のガッツポーズをするハル。よしよし。これでハルも、何も気にせず揚げ物をおいしく食べられるわね。本当であれば、ゲーム自体を取っ払うべきなのだけれども。
「いやぁ~、頑張って作った甲斐があったよ。これだったら、コロッケも作っておけばよかったや」
「そういえば、コロッケが無いわね」
「実は、作るのが結構大変なんだよね。レンジでチンしたじゃがいもを、細かく潰すでしょ? その間に、みじん切りした玉ねぎと挽き肉を炒めて、潰したじゃがいもに入れて混ぜ合わせる。そして丸く形を整えて、溶き卵とパン粉の順番にまぶして揚げれば完成。まあ、レシピを見れば分かると思うけど。どれだけ手際よくやっても、三、四十分ぐらいは掛かるかな?」
「き、聞いてるだけで、大変だって事がよく分かったわ……」
それだけ多くの工程を経て、作ったコロッケがたった百円だなんて……。食べ応えのある大判だったし、なんだかとても安く思えてきたわ。
「後で改めて、動画付きのレシピを観てみるわ。それじゃあ、冷める前に食べちゃいましょ」
「そうだね。いただきまーす」
「いただきます」
食事の挨拶を唱え。左手に山盛りのご飯が盛られたお茶碗を、右手に箸を持つ。最初に食べるのは、もちろんウィンナーフライ! まずは、ソースを付けないでっと。
「んん~っ……!」
カリカリの衣からは、『ザクッ』という景気の良い音を。弾力が強いウィンナー本体からは、『パキッ』と何度も聞きなくなる軽快な音が鳴り。
油をたっぷり吸っている事もあってか。衣と皮、二つの層を破ったウィンナーの中から、濃厚で芳醇ながらも水の様にサラサラした肉汁が、弾けんばかりに溢れ出してきた!
この濃ゆくて主張が激しい熱々な肉汁、とにかくご飯と合う! ウィンナーフライ一口に対して、ご飯三口以上食べられるわ!
でも、それだけでは終わらない。ソースを付けたら、更に拍車がかかった! ちょっと酸味が利いたフルーティーなソースを衣に浸しても、ザクザク感は失われずに健在。
けれども、食欲は直に刺激されて爆増。ソースを付けた事によって、よりご飯が欲しくなる風味になり、箸が止まらないっ!
「ああ~っ、さいっこぅ~……」
「やっぱ、揚げ物は出来立てに限るね。こりゃあ、ご飯一杯じゃ全然足りないな」
そうだ。最強のお供であるご飯が先に無くなってしまったら、元も子もない。量次第では、配分を考えて食べていかないと。
「……ねえ、ハル?」
「大丈夫。六合分炊いたから、沢山おかわり出来るよ?」
私の質問を先読みしたハルが、お手本のような悪どい笑みを浮かべ。私とハル、ほぼ同時に親指を立てた。
六合は、一般的なお茶碗で十二杯分相当。だとすれば、私とハルで五回ずつ出来るわね。
「でも、おかわりするなら、早くした方がいいよ? 私だって、今日は本気を出すつもりでいるからね?」
「じゃあ、おかわり」
「はっや!? やべぇ、メリーさんの方が何枚も上手《うわて》だ……」
目を丸くさせて驚いたハルが、口元をヒクつかせながら私のお茶碗を受け取り、台所へ向かっていった。流石に、ウィンナーフライ二本で、ご飯一杯は食べ過ぎたかしら?
いや、明らかに食べ過ぎだ。ご飯や揚げ物が残っていても、お腹がいっぱいになってしまったら、本末転倒だわ。揚げ物を残したっていう未練も残るし、なによりハルに申し訳ない。
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