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44話、プチプチした新食感と待ち遠しい時間
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「はい、唐揚げのお客様ー」
「あ、そういえば頼んでたわね」
えんがわの天地を轟かす衝撃で、すっかり忘れていた。しかし、唐揚げは冷めてもおいしいので、先にづけまぐろを食べてしまおう。
「ん、醤油が染みてておいしい」
引き締まった身から出てくる、酸味が利いたシャリと合う醤油の香ばしい風味よ。まあまあ濃いので、やはり醤油を付けなくて正解だったわね。
づけまぐろも、生臭さをほとんど感じない。これは漬けたせいで薄れたのかしら? それとも鮮度が高いから?
あと、えんがわの時は全面的に味が先行していたから、興奮していて分からなかったけども。シャリと身、冷やしてあるのか冷たく感じる。
だからこそ、シャリの酸味や醤油の香ばしさが際立ち、身がしっかりと引き締まり、ほどよい歯応えを生んでいるのかも。
「次は、オーロラサーモンを……」
もう、食べる前に分かってしまった。ネタ全体に強い光沢が走っている、鮮やかな薄橙色をした分厚い身よ。あんたも、えんがわと同じく、おいしそうな脂が乗っていそうね。
ほら、やっぱり。油が醤油を弾いちゃっているし、小皿にも浮いている。私の目は、そんな簡単に欺けないわよ?
「んっふぅ~っ、思った通りだわぁ~」
頬張った瞬間。口の中いっぱいに広がっていく、魚の物とは思えない濃厚な旨味を含んだ、ちょっとクリーミーな甘味と油っ! 噛めば噛むほど、どんどん溢れ出しては味が濃くなっていく!
生臭さや雑味が無く、それでいて親しみやすい風味をしているので、とても食べやすい。とにかく身が分厚いから、一口で頬張るとボリュームと満足感もすごいっ。なので、食べ応えも十分ある。
どうしよう、飲み込むのが勿体ない。もう一貫残っているけど、最初の一貫目をずっと味わっていたいなぁ。ああ、幸せ。
「おいひぃ~っ……」
「なんだか、幸せそうな顔をしてるね。オーロラサーモンも、えんがわに負けてないでしょ?」
「うん……。こーおつつけ難いわぁ~」
こんなにおいしいのであれば、ハルにもっと早くリクエストしておくんだった。私の大好きな食べ物ランキングが、忙しい勢いで替わっていく。生魚、侮れないわね。
「はい、中トロ、イクラ、生うに軍艦、煮穴子、本ずわいのお客様ー」
「わっ、一気に来た」
テーブルが落ち着いてきたのに、さっきよりも騒がしくなってしまった。ハルと私のお寿司を合わせて、総勢二十巻。しかも、やや高めのお皿が目立つ───。
「あら、金皿が二枚もあるじゃない」
このお店で、一番高いお皿に位置する金皿。その煌びやかなお皿に乗っている『本ずわい』。赤と白のコントラストが、なんとも美しい。
更に、もう一枚の金皿に乗った『生うに軍艦』。こちらも、本ずわいと引けを取らない高級食材だったはず。色も色で、黄金を彷彿とさせる黄色に近い。一体、どんな味がするんだろう?
「ふっふっふっ。まだ序盤戦だけど、我慢出来なくて頼んじゃった。いやぁ~、港から直送されてくる事もあってか、鮮度が抜群に高いね。こりゃ美味そうだ」
「イクラなんて、まるで宝石のように輝いてるわね」
それに、イクラも気持ちほんのりと黒みを帯びている。これもなんかしらの味付けがされていそうね。
「くぅ~っ! プチプチしながらトロけてくぅ~っ、うんまぁ……」
先にイクラを食べたハルが、清々しい笑顔をしながら握り拳を作り、その笑顔がだらしなくとろけていった。イクラって、そんなにおいしいんだ。
「……じゃあ、私もイクラを」
本ずわいから食べてみようと思ったけれども。ハルの至高を極めた顔に、つい触発されてしまった。軍艦巻きになっているので、箸で掴みやすい。
醤油は……。イクラに付けようとすると零れてしまいそうだし、底にあるシャリに少しだけ付ければいいわね。
「んふっ!?」
ビックリした、ビックリした! なにこれ!? イクラを噛んだらプチって弾けた! どの食材にも該当しない初めての食感だったから、驚いて恥ずかしい声が出ちゃった……。
身構えていても、弾ける度に体がピクンと波打っちゃう。肝心の中身は、とてもまろやかであっさりとしたコクがある。食感は柔らかく、少しとろみがあるかも?
生臭さは無く、シャリに合うほのかな塩味と、醤油の味に似た丸い香ばしさを感じる。連続で弾けると、弾けた分だけ風味が豊かになり、濃くなっていく。
しかし、どれだけイクラが弾けようとも、濃すぎるとは思わない。逆にコクや旨味に奥深さが生まれ、もっとイクラを食べてみたいという欲求が湧いてくるわ。
「へえ、なかなかおいしいわね」
「おっ! メリーさん、イクラもいける感じ?」
「そうね。人を選ぶ食べ物って聞いてたけど、私は大丈夫だったわ」
「マジかっ。それだったら家でも、ちゃんとした海鮮丼が出せるな」
「海鮮丼っ」
海鮮丼って、様々な刺身が乗った丼物よね。ハルが作った海鮮丼なら、絶対においしいはずよ! だったら!
「ねえ、ハル。えんがわ丼って、おいしそうだと思わない?」
「わんがわ丼かぁ。あまり聞かないけど、確かに美味しそうだね」
「でしょ? だから今度、作ってくれないかしら?」
「いいよ、作ってあげる」
気持ちよく私のリクエストに応えてくれたハルが、「けど」と付け加える。
「鮮度が高いえんがわを使いたいから、一、二週間ぐらい待ってくれない?」
「ええ、いいわよ。作ってくれるなら、いつまでも待つわ」
「オッケー。それじゃあ、えんがわ以外にも色々頼んじゃおっと」
やった! 鮮度が高く、かつハルが作ったえんがわ丼を食べられるっ! どうしよう、唐揚げよりおいしかったら。想像しただけでヨダレが出てきゃう。
しかし食べられるのは、早くて一、二週間後。二週間って、日に直すと十四日間になる。ちょっと長く感じるわね。
けど、先に言ってしまったからにはしょうがない。来るまで大人しく待っていよう。……やっぱり早く来て欲しいなぁ、えんがわ。
「あ、そういえば頼んでたわね」
えんがわの天地を轟かす衝撃で、すっかり忘れていた。しかし、唐揚げは冷めてもおいしいので、先にづけまぐろを食べてしまおう。
「ん、醤油が染みてておいしい」
引き締まった身から出てくる、酸味が利いたシャリと合う醤油の香ばしい風味よ。まあまあ濃いので、やはり醤油を付けなくて正解だったわね。
づけまぐろも、生臭さをほとんど感じない。これは漬けたせいで薄れたのかしら? それとも鮮度が高いから?
あと、えんがわの時は全面的に味が先行していたから、興奮していて分からなかったけども。シャリと身、冷やしてあるのか冷たく感じる。
だからこそ、シャリの酸味や醤油の香ばしさが際立ち、身がしっかりと引き締まり、ほどよい歯応えを生んでいるのかも。
「次は、オーロラサーモンを……」
もう、食べる前に分かってしまった。ネタ全体に強い光沢が走っている、鮮やかな薄橙色をした分厚い身よ。あんたも、えんがわと同じく、おいしそうな脂が乗っていそうね。
ほら、やっぱり。油が醤油を弾いちゃっているし、小皿にも浮いている。私の目は、そんな簡単に欺けないわよ?
「んっふぅ~っ、思った通りだわぁ~」
頬張った瞬間。口の中いっぱいに広がっていく、魚の物とは思えない濃厚な旨味を含んだ、ちょっとクリーミーな甘味と油っ! 噛めば噛むほど、どんどん溢れ出しては味が濃くなっていく!
生臭さや雑味が無く、それでいて親しみやすい風味をしているので、とても食べやすい。とにかく身が分厚いから、一口で頬張るとボリュームと満足感もすごいっ。なので、食べ応えも十分ある。
どうしよう、飲み込むのが勿体ない。もう一貫残っているけど、最初の一貫目をずっと味わっていたいなぁ。ああ、幸せ。
「おいひぃ~っ……」
「なんだか、幸せそうな顔をしてるね。オーロラサーモンも、えんがわに負けてないでしょ?」
「うん……。こーおつつけ難いわぁ~」
こんなにおいしいのであれば、ハルにもっと早くリクエストしておくんだった。私の大好きな食べ物ランキングが、忙しい勢いで替わっていく。生魚、侮れないわね。
「はい、中トロ、イクラ、生うに軍艦、煮穴子、本ずわいのお客様ー」
「わっ、一気に来た」
テーブルが落ち着いてきたのに、さっきよりも騒がしくなってしまった。ハルと私のお寿司を合わせて、総勢二十巻。しかも、やや高めのお皿が目立つ───。
「あら、金皿が二枚もあるじゃない」
このお店で、一番高いお皿に位置する金皿。その煌びやかなお皿に乗っている『本ずわい』。赤と白のコントラストが、なんとも美しい。
更に、もう一枚の金皿に乗った『生うに軍艦』。こちらも、本ずわいと引けを取らない高級食材だったはず。色も色で、黄金を彷彿とさせる黄色に近い。一体、どんな味がするんだろう?
「ふっふっふっ。まだ序盤戦だけど、我慢出来なくて頼んじゃった。いやぁ~、港から直送されてくる事もあってか、鮮度が抜群に高いね。こりゃ美味そうだ」
「イクラなんて、まるで宝石のように輝いてるわね」
それに、イクラも気持ちほんのりと黒みを帯びている。これもなんかしらの味付けがされていそうね。
「くぅ~っ! プチプチしながらトロけてくぅ~っ、うんまぁ……」
先にイクラを食べたハルが、清々しい笑顔をしながら握り拳を作り、その笑顔がだらしなくとろけていった。イクラって、そんなにおいしいんだ。
「……じゃあ、私もイクラを」
本ずわいから食べてみようと思ったけれども。ハルの至高を極めた顔に、つい触発されてしまった。軍艦巻きになっているので、箸で掴みやすい。
醤油は……。イクラに付けようとすると零れてしまいそうだし、底にあるシャリに少しだけ付ければいいわね。
「んふっ!?」
ビックリした、ビックリした! なにこれ!? イクラを噛んだらプチって弾けた! どの食材にも該当しない初めての食感だったから、驚いて恥ずかしい声が出ちゃった……。
身構えていても、弾ける度に体がピクンと波打っちゃう。肝心の中身は、とてもまろやかであっさりとしたコクがある。食感は柔らかく、少しとろみがあるかも?
生臭さは無く、シャリに合うほのかな塩味と、醤油の味に似た丸い香ばしさを感じる。連続で弾けると、弾けた分だけ風味が豊かになり、濃くなっていく。
しかし、どれだけイクラが弾けようとも、濃すぎるとは思わない。逆にコクや旨味に奥深さが生まれ、もっとイクラを食べてみたいという欲求が湧いてくるわ。
「へえ、なかなかおいしいわね」
「おっ! メリーさん、イクラもいける感じ?」
「そうね。人を選ぶ食べ物って聞いてたけど、私は大丈夫だったわ」
「マジかっ。それだったら家でも、ちゃんとした海鮮丼が出せるな」
「海鮮丼っ」
海鮮丼って、様々な刺身が乗った丼物よね。ハルが作った海鮮丼なら、絶対においしいはずよ! だったら!
「ねえ、ハル。えんがわ丼って、おいしそうだと思わない?」
「わんがわ丼かぁ。あまり聞かないけど、確かに美味しそうだね」
「でしょ? だから今度、作ってくれないかしら?」
「いいよ、作ってあげる」
気持ちよく私のリクエストに応えてくれたハルが、「けど」と付け加える。
「鮮度が高いえんがわを使いたいから、一、二週間ぐらい待ってくれない?」
「ええ、いいわよ。作ってくれるなら、いつまでも待つわ」
「オッケー。それじゃあ、えんがわ以外にも色々頼んじゃおっと」
やった! 鮮度が高く、かつハルが作ったえんがわ丼を食べられるっ! どうしよう、唐揚げよりおいしかったら。想像しただけでヨダレが出てきゃう。
しかし食べられるのは、早くて一、二週間後。二週間って、日に直すと十四日間になる。ちょっと長く感じるわね。
けど、先に言ってしまったからにはしょうがない。来るまで大人しく待っていよう。……やっぱり早く来て欲しいなぁ、えんがわ。
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