林檎を並べても、

ロウバイ

文字の大きさ
10 / 23
それからの日々

とある朝

しおりを挟む
「おはよ、トキ」
「あぁ…おはよう」

「じゃなくて!!」

あまりにも普通にソウがそうやって朝の挨拶を交わしてくるから、流されるようにして返事をするが我に返る。背中に生身の人間の体温を感じて、思わず赤面してしまう。忘れかけていたが、今はソウに抱きしめられてるのだ。
なんでもなさそうに目を擦るソウと現状の落差に頭がパンクしそうになる。
とりあえずソウの剥き出しの背中を引っ叩いて、ソウの覚醒を促した。

「いてっ。どうしたのトキ」
「どうもこうもないだろ!!お前、今の状況見てみろよ…!!」
「あぁ…二人とも裸なこと?ごめんね、昨日シャワーまではできたんだけど、服着せるまでの余力は残ってなくて…」

肩を落としながら頬を掻くソウに、また呆気に取られそうになるがなんとか踏みとどまる。
ソウに聞きたいのは、そういうものではない。
もっと、今の俺たちの関係を明確にするような…この行為に至った結末の答えを求めて、口を開いた時だった。

「お、お前…俺が好きだったのか?」

ポロリと出た言葉に、ミスったと直感で感じる。目の前のソウは、ただでさえぱっちりとでかい目を更に大きくしていた。

「あ…ごめ、やっぱなしで」
「なしになんかしないよ」

「え?」

俺の慌てての訂正の言葉を遮るようにして耳に飛び込んできた言葉に、今度は俺が目を丸くする。
そんな俺を見ながら、ソウは少しムッとしながら昨日の話をしだす。

「トキのこと、好きだよ!…っていうのは、昨日も言って今こうなってるんだけど…もしかして覚えてないの?」

珍しくこちらを責めるようなソウの視線に圧されて、首を横に振りそうになる。
それでも、俺はソウをあくまで友達だと思って接していたわけで…。

「お、覚えてな…」
「トキは俺と付き合うのは嫌?俺のこと、きらい?」

目前に、もはや暴力的なまでのソウの美麗な顔が迫ってくる。いつもの人懐っこそうな顔をシュンとさせて、こちらを覗き込んでくるソウに、言おうとしていた言葉を飲み込んでしまう。
その顔でそんなことを言うのは、ずるいんじゃないだろうか。本人が無自覚なのかどうなのかは知る由もないが、ちょろい俺は何も言えなくなってしまう。

「嫌…では、ない」
「やったー!!なら完璧じゃん!」

ニコニコと心底嬉しそうな笑みを浮かべるソウの横で謎の敗北感に襲われながらも、温かい気持ちが溢れていくのを感じる。

「これからもよろしくね、トキ!」

そうにっこり微笑むソウに、ぐぬぬと唸りながらも俺の中で何かが満たされていくのを感じていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

記憶の代償

槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」 ーダウト。 彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。 そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。 だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。 昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。 いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。 こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

記憶喪失のふりをしたら後輩が恋人を名乗り出た

キトー
BL
【BLです】 「俺と秋さんは恋人同士です!」「そうなの!?」  無気力でめんどくさがり屋な大学生、露田秋は交通事故に遭い一時的に記憶喪失になったがすぐに記憶を取り戻す。  そんな最中、大学の後輩である天杉夏から見舞いに来ると連絡があり、秋はほんの悪戯心で夏に記憶喪失のふりを続けたら、突然夏が手を握り「俺と秋さんは恋人同士です」と言ってきた。  もちろんそんな事実は無く、何の冗談だと啞然としている間にあれよあれよと話が進められてしまう。  記憶喪失が嘘だと明かすタイミングを逃してしまった秋は、流れ流され夏と同棲まで始めてしまうが案外夏との恋人生活は居心地が良い。  一方では、夏も秋を騙している罪悪感を抱えて悩むものの、一度手に入れた大切な人を手放す気はなくてあの手この手で秋を甘やかす。  あまり深く考えずにまぁ良いかと騙され続ける受けと、騙している事に罪悪感を持ちながらも必死に受けを繋ぎ止めようとする攻めのコメディ寄りの話です。 【主人公にだけ甘い後輩✕無気力な流され大学生】  反応いただけるととても喜びます!誤字報告もありがたいです。  ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載中。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

【12話完結】自分だけ何も知らない異世界で、婚約者が二人いるのですが?

キノア9g
BL
気がつくと、 僕には2人の婚約者がいた 。 冷静沈着な 大魔法使い・ルシアン と、誠実な 騎士・カイル 。 けれど、この関係には 「嘘」と「秘密」 が隠されていて――? 愛と欺瞞が交錯する異世界ラブストーリー、開幕! 全12話。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

処理中です...