林檎を並べても、

ロウバイ

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退院ののち

また、日常へと戻る

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とりあえずその晩は眠りについて翌朝目覚めると、トキが土下座をして謝ってきた。俺の頭に当たった缶は缶ビールの空き缶で、やっぱりトキが飲んだものだったようだった。後になって思い返せば、確かにトキからふわりとアルコールの香りがしていたような気がしなくもない。

「マジですまん…酔って変なことしてなかったか?」

酔うと奇行を晒してしまう上に記憶が飛んでしまうという二重苦を抱えているというトキに、少し迷ったが心配することは何もなかったよと返す。嘘をつくべきではなかったのかもしれないけれど、そういうべきなような気がした。だって、俺とトキは親友らしいから。
俺にとってトキはかなり大切な友人だし、きっと記憶をなくす前の俺にとってもそうだったんだろう。
この関係を変えずにいるには、その会話のやり取りが必要だった。

俺の言葉を聞くとトキは、ホッとしたような顔をしていた。その表情を見てしまえば、余計に言うべきじゃなかったんだと思えた。自分の選択が正しかったのだと実感して、俺も安心する。

それからその一晩の出来事は俺が見た夢のようなものになり、俺たちは変わらない日常へと戻っていったのだった。

そうして数週間後、俺はひとりで暮らすにしては広いような気もするトキの家を離れることとなる。寂しいような気もしたけれど、「本来の形に戻っていくだけだ」と笑ったトキの顔が、やけに鮮明に印象に残っていた。
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