不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~

四葉 翠花

文字の大きさ
117 / 138

117.経緯1

しおりを挟む
 さすがにその場にはいづらくなり、船内に逃げ込んできた。空いている個室があったので、そこで今までのことを話すことにする。

「ここに来るまでの経緯だけれど……」

 ミゼアスはゆっくりと話し出す。

 もともとミゼアスは借金をかなり前に返し終わっていた。しかしミゼアスは稼ぎ頭で、桁が違う。そのため、簡単に離してもらえるとは思っていなかったのだ。
 それでも昨日の明け方、寝ようとしていた娼館主をつかまえて話を切り出した。当然却下されるかと思ったのだが、渋い顔をしながらも『領主様のところに行け』と言われたのだ。

 明け方のとんでもない時間だったが、ミゼアスは領主屋敷に向かった。するとそんな時間にも関わらず、領主が待ち構えていたのだ。
 領主はあっさりとミゼアスが島を出ることを承諾した。ウインシェルド侯爵からも聞いている、と。ミゼアスは島を出たいとの旨をウインシェルド侯爵に手紙で伝えていたのだ。
 ただ、手続きなど色々とあるので、島を出られるのはそれからだと言われた。それでも島を出られることは決まったので、ミゼアスに文句はなかった。

 領主と今後の話をし、見習いたちはヴァレンに託すことにした。見習いを抱えるにはそれなりの費用がかかるのだが、三人が店に出るまでの分はミゼアスの貯蓄から引くということにした。
 ヴァレンや見習いたちにその話をすぐにしておけと言われ、他にも挨拶しておきたい人がいればしておけと言われたので、ミゼアスはその日駆け回ることになった。
 途中で一回部屋に戻ってきたときは、まだアデルジェスは寝ていた。娼館主からフェリス騒動のその後が思わしくないという話を聞いて、苛々したのもそのときだ。このとき、アルンに会ったので『夕方まで帰ってこられない』との伝言を託した。

 それからは挨拶しておきたい人たちのところを駆け回り、ヴァレンに見習いたちのことを託し、見習いたちにもそのことを言った。
 本当は一人前になったときに渡すはずだった、見習いたちのために用意した花月琴もそのときに渡した。
 ようやく一息ついた夕方、ウインシェルド侯爵に会った。ウインシェルド侯爵はもう帰るところだったのでほとんど話はできなかったが、『アデルジェス君と幸せになりなさい』と言われたのだ。
 それから部屋に戻り、アデルジェスと過ごした。

「そのあたりは言わなくてもわかると思うけれど」

 そう言ってミゼアスは意味ありげな笑いを浮かべる。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。

水凪しおん
BL
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。 ※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。 「君はもう、頑張らなくていい」 ――それは、運命の番との出会い。 圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。 理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます

天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。 広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。 「は?」 「嫁に行って来い」 そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。 現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる! ……って、言ったら大袈裟かな? ※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

処理中です...