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81.目論見
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「何年か前に、身請けされていったんだよ。グリンモルド伯爵の後添えとしてね」
思い返せば、夫人は大層若かった。ご子息とさほど変わらないのではないかと思ったくらいだ。
「そのときにフェリスも一緒にっていう話もあったみたいだけれど、フェリスは約束した相手がいるから待っているって断ったそうだよ。そして、今に至っている」
アデルジェスはフェリスの言葉を思い出す。
迎えに行くと言った相手も、愛を囁いた相手もフェリスを捨てたのだという。
「グリンモルド伯爵夫妻の仲は良好で、先妻の息子との仲も悪くなかったらしい。でも、ジャニスに息子が生まれてから、雲行きが怪しくなってきたみたいだね」
ミゼアスは肩をすくめる。
「よくある話だけれど、自分の息子を跡取りに据えたくなったんじゃないかな。うまく先妻の息子を始末したいと思っているとき、国境近くでの小競り合いがあった。よし、送り込んで戦死させてしまえってところだったんじゃないかな。でも、助けてしまった兵士がいた」
そう言ってミゼアスはアデルジェスの目を見る。
「それが、きみ。ジャニスにとってはきみも邪魔になった。何せ、勇猛果敢で数多の敵兵を一人でなぎ倒してしまったという話だもの。これから先、先妻の息子を守り通される可能性が高いよね」
くすり、と笑うミゼアス。
「……それは誇大表現だよ……実際、数多の兵なんてなぎ倒していないし……偶然が重なって、たまたま助けたことになっただけで……」
アデルジェスはいたたまれない気持ちになって俯きながら呟く。
「うん、そんなことだろうと思った。でも、ジャニスはきみを始末したかったんだろうね。もしくは自分側に取り込むか。それでこの島に送ったんだよ。ご褒美と称してね。フェリスに落とさせるか、それができなければきみはこの島で羽目をはずしすぎて腹上死っていう筋書きだったんじゃないかな」
「え……?」
「フェリスはジャニスから頼まれたそうだよ。彼女の中では自分を裏切った男と裏切ろうとしている男、ジャニスを裏切る男など、もう支離滅裂になっていたけれどね。とにかく、裏切る男は始末してしまえってことみたい」
「そんな……」
「最初はフェリスも悠長に構えていたみたいだね。きみは七日間この島にいるわけだから。彼女は四花で、この島では上級の部類だ。きみの通行手形で買えるのは二花までだったよね。二花相手なら、いざとなれば奪うことだって簡単だ。でも、ここで彼女にとって計算外が起こった」
そう言ってミゼアスは口元に意地の悪い笑みを浮かべる。
「五花の僕がきみを連れて行ってしまった。僕は五花の筆頭ですらある。僕から無理やりきみを奪い取れる奴なんて、この島には誰もいない。フェリスは焦った。僕にどうにか対抗できるとしたら、同じ五花しかいない。そこで目をつけたのがエアイールだ」
「…………」
「もともとフェリスとエアイールは薬物系の知識を同じ相手に教わったとか何とかで、それなりに付き合いがあったみたいなんだよ。エアイールってほら、ねっとりしているだろう。だからあまり男っぽくなくて、フェリスも苦手じゃなかったみたい」
「はは……」
アデルジェスは乾いた笑いを漏らす。
思い返せば、夫人は大層若かった。ご子息とさほど変わらないのではないかと思ったくらいだ。
「そのときにフェリスも一緒にっていう話もあったみたいだけれど、フェリスは約束した相手がいるから待っているって断ったそうだよ。そして、今に至っている」
アデルジェスはフェリスの言葉を思い出す。
迎えに行くと言った相手も、愛を囁いた相手もフェリスを捨てたのだという。
「グリンモルド伯爵夫妻の仲は良好で、先妻の息子との仲も悪くなかったらしい。でも、ジャニスに息子が生まれてから、雲行きが怪しくなってきたみたいだね」
ミゼアスは肩をすくめる。
「よくある話だけれど、自分の息子を跡取りに据えたくなったんじゃないかな。うまく先妻の息子を始末したいと思っているとき、国境近くでの小競り合いがあった。よし、送り込んで戦死させてしまえってところだったんじゃないかな。でも、助けてしまった兵士がいた」
そう言ってミゼアスはアデルジェスの目を見る。
「それが、きみ。ジャニスにとってはきみも邪魔になった。何せ、勇猛果敢で数多の敵兵を一人でなぎ倒してしまったという話だもの。これから先、先妻の息子を守り通される可能性が高いよね」
くすり、と笑うミゼアス。
「……それは誇大表現だよ……実際、数多の兵なんてなぎ倒していないし……偶然が重なって、たまたま助けたことになっただけで……」
アデルジェスはいたたまれない気持ちになって俯きながら呟く。
「うん、そんなことだろうと思った。でも、ジャニスはきみを始末したかったんだろうね。もしくは自分側に取り込むか。それでこの島に送ったんだよ。ご褒美と称してね。フェリスに落とさせるか、それができなければきみはこの島で羽目をはずしすぎて腹上死っていう筋書きだったんじゃないかな」
「え……?」
「フェリスはジャニスから頼まれたそうだよ。彼女の中では自分を裏切った男と裏切ろうとしている男、ジャニスを裏切る男など、もう支離滅裂になっていたけれどね。とにかく、裏切る男は始末してしまえってことみたい」
「そんな……」
「最初はフェリスも悠長に構えていたみたいだね。きみは七日間この島にいるわけだから。彼女は四花で、この島では上級の部類だ。きみの通行手形で買えるのは二花までだったよね。二花相手なら、いざとなれば奪うことだって簡単だ。でも、ここで彼女にとって計算外が起こった」
そう言ってミゼアスは口元に意地の悪い笑みを浮かべる。
「五花の僕がきみを連れて行ってしまった。僕は五花の筆頭ですらある。僕から無理やりきみを奪い取れる奴なんて、この島には誰もいない。フェリスは焦った。僕にどうにか対抗できるとしたら、同じ五花しかいない。そこで目をつけたのがエアイールだ」
「…………」
「もともとフェリスとエアイールは薬物系の知識を同じ相手に教わったとか何とかで、それなりに付き合いがあったみたいなんだよ。エアイールってほら、ねっとりしているだろう。だからあまり男っぽくなくて、フェリスも苦手じゃなかったみたい」
「はは……」
アデルジェスは乾いた笑いを漏らす。
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