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11.言い合い
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「輝く黄金の髪」
「黒檀のような黒い髪」
「新緑の芽吹き、春の息吹を感じさせる緑色の瞳」
「深い夜空の輝きを思わせる暗紫色の瞳」
金髪の少年に率いられた三人の子供たちと、黒髪の少年に率いられた三人の子供たちが何かを言い合っている。
言っている内容は攻撃的なものではなかったが、どうも雰囲気が攻撃的だ。
口を開くのは子供たちで、皆十歳前後くらいだろうか。率いている金髪と黒髪の少年はそれより上で、十代半ばから後半くらいのようだ。
「ああ……ミゼアスとエアイールね。名物みたいなものよ」
呆れたようなネリーの声が響く。
「ミゼアス?」
昨日、聞いた名前のような気がする。
しばし考え、アデルジェスは思い出す。船着場にいた毒花のような少年だ。
よく見てみれば、同じ顔のようだった。ただ、今日は素顔のままで目の周りの縁取りがないせいか、昨日よりも幼く見える。
「ミゼアスは白花の第一位よ。金髪のほうね。自由奔放でわがままだとか言われているわ。第二位が黒髪のエアイール。あの二人は仲が悪くて、出会うと喧嘩になるのよ。内容はどうせくだらないことか恥ずかしいことよ」
ネリーの言葉を裏付けるように、子供たちの声が高らかに響く。
「ミゼアス兄さんの燦然と輝く色彩こそ至高!」
「エアイール兄さんこそ夜の精霊の寵愛を受けた方!」
そう宣言して、両陣営が睨み合う。
聴衆たちがため息を漏らしたり、どこか居心地悪そうに天を仰いだりしている。
「太陽の光がこれほど似合う方はいないと思わない?」
「ここをどこだと思っているんだい? 夜こそ本領を発揮するところだよ」
「夜が暗いのは当たり前だろう? 闇夜に輝く光は鮮烈で心を奪われるよね」
「光に暴かれるのは好ましくないだろう? 秘め事は暗闇の中でと決まっているよね
」
周囲の反応など気にも留めず、子供たちは言い争う。
「うん、くだらないっていうか……恥ずかしいよね。道端で称えさせているわけ? 何ていうか……凄いね……」
思わずアデルジェスは呟いてしまった。
「……何か言ったかい?」
甘くも冷たい声が響く。
その声に気圧されたように周囲が静まり返る。
気が付けば、今まで黙っていたはずのミゼアスがアデルジェスに微笑みかけていた。背後に黒い炎が揺らめいているような微笑だった。
「黒檀のような黒い髪」
「新緑の芽吹き、春の息吹を感じさせる緑色の瞳」
「深い夜空の輝きを思わせる暗紫色の瞳」
金髪の少年に率いられた三人の子供たちと、黒髪の少年に率いられた三人の子供たちが何かを言い合っている。
言っている内容は攻撃的なものではなかったが、どうも雰囲気が攻撃的だ。
口を開くのは子供たちで、皆十歳前後くらいだろうか。率いている金髪と黒髪の少年はそれより上で、十代半ばから後半くらいのようだ。
「ああ……ミゼアスとエアイールね。名物みたいなものよ」
呆れたようなネリーの声が響く。
「ミゼアス?」
昨日、聞いた名前のような気がする。
しばし考え、アデルジェスは思い出す。船着場にいた毒花のような少年だ。
よく見てみれば、同じ顔のようだった。ただ、今日は素顔のままで目の周りの縁取りがないせいか、昨日よりも幼く見える。
「ミゼアスは白花の第一位よ。金髪のほうね。自由奔放でわがままだとか言われているわ。第二位が黒髪のエアイール。あの二人は仲が悪くて、出会うと喧嘩になるのよ。内容はどうせくだらないことか恥ずかしいことよ」
ネリーの言葉を裏付けるように、子供たちの声が高らかに響く。
「ミゼアス兄さんの燦然と輝く色彩こそ至高!」
「エアイール兄さんこそ夜の精霊の寵愛を受けた方!」
そう宣言して、両陣営が睨み合う。
聴衆たちがため息を漏らしたり、どこか居心地悪そうに天を仰いだりしている。
「太陽の光がこれほど似合う方はいないと思わない?」
「ここをどこだと思っているんだい? 夜こそ本領を発揮するところだよ」
「夜が暗いのは当たり前だろう? 闇夜に輝く光は鮮烈で心を奪われるよね」
「光に暴かれるのは好ましくないだろう? 秘め事は暗闇の中でと決まっているよね
」
周囲の反応など気にも留めず、子供たちは言い争う。
「うん、くだらないっていうか……恥ずかしいよね。道端で称えさせているわけ? 何ていうか……凄いね……」
思わずアデルジェスは呟いてしまった。
「……何か言ったかい?」
甘くも冷たい声が響く。
その声に気圧されたように周囲が静まり返る。
気が付けば、今まで黙っていたはずのミゼアスがアデルジェスに微笑みかけていた。背後に黒い炎が揺らめいているような微笑だった。
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