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10.人だかり
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窓から光が差し込んでいる。
アデルジェスはゆっくりと目を開け、眩しさに目を細めた。
随分とぐっすり眠った気がする。もしかして寝過ごしてしまっただろうか。朝の訓練に間に合うだろうかと考えたところでふと気づき、がばっと身を起こす。
見慣れない部屋だった。狭い兵舎ではない。
そこで昨日のことを思い出す。今、自分は不夜島にいるのだ。兵舎でも戦場付近の野営場でもない。
広場でネリーと出会い、流されるがまま部屋までやってきて、マッサージをしてもらったのだ。
「起きた? おはよう。もう昼だけれど」
ネリーがパンとスープを持って部屋に入ってきた。
「もう……昼……?」
アデルジェスは呆然と呟く。
「ええ、よっぽど疲れていたのね。マッサージしている最中に寝てしまって、そのままぐっすりだったわ」
笑いながら、ネリーはパンとスープを卓に置く。
食欲をそそる香りが漂ってくる。
「あたしのマッサージがお気に召してもらえたのは光栄だけれど、放置されて寝入られるのって女としては微妙よね」
そう言いながら、ネリーの目元は悪戯っぽく笑っている。
「えっと……その……ごめん……」
アデルジェスは小声で詫びる。
「冗談よ。さ、簡単なものだけれど食べて。食べ終わったら街を案内するわ」
ネリーに促され、アデルジェスはパンとスープを食べる。
簡素なものではあったが、味は良かった。兵舎で出る食事よりも、ずっと高級な食材を使っていそうだ。
さすが貴族や富豪たちのための島だと、アデルジェスは唸る。
食べ終えると身支度をして、外に出た。
昨日も歩いた大通を、今日はネリーの案内で歩いていく。
「あそこのお店がパンの美味しいお店、あっちは焼き菓子類が絶妙なお店、向こうは……」
「食べ物ばかり」
食べ物の店ばかり指し示すネリーに、アデルジェスは笑う。
「あら、美味しい物食べるって幸せでしょう。そのために生きているようなものだわ」
軽く唇を尖らせながらネリーが答える。
「まあね……あれ?」
前方に人だかりができている。何だろうと思ってアデルジェスは近づいてみる。
すると、数人の少年たちが対峙しているようだった。
アデルジェスはゆっくりと目を開け、眩しさに目を細めた。
随分とぐっすり眠った気がする。もしかして寝過ごしてしまっただろうか。朝の訓練に間に合うだろうかと考えたところでふと気づき、がばっと身を起こす。
見慣れない部屋だった。狭い兵舎ではない。
そこで昨日のことを思い出す。今、自分は不夜島にいるのだ。兵舎でも戦場付近の野営場でもない。
広場でネリーと出会い、流されるがまま部屋までやってきて、マッサージをしてもらったのだ。
「起きた? おはよう。もう昼だけれど」
ネリーがパンとスープを持って部屋に入ってきた。
「もう……昼……?」
アデルジェスは呆然と呟く。
「ええ、よっぽど疲れていたのね。マッサージしている最中に寝てしまって、そのままぐっすりだったわ」
笑いながら、ネリーはパンとスープを卓に置く。
食欲をそそる香りが漂ってくる。
「あたしのマッサージがお気に召してもらえたのは光栄だけれど、放置されて寝入られるのって女としては微妙よね」
そう言いながら、ネリーの目元は悪戯っぽく笑っている。
「えっと……その……ごめん……」
アデルジェスは小声で詫びる。
「冗談よ。さ、簡単なものだけれど食べて。食べ終わったら街を案内するわ」
ネリーに促され、アデルジェスはパンとスープを食べる。
簡素なものではあったが、味は良かった。兵舎で出る食事よりも、ずっと高級な食材を使っていそうだ。
さすが貴族や富豪たちのための島だと、アデルジェスは唸る。
食べ終えると身支度をして、外に出た。
昨日も歩いた大通を、今日はネリーの案内で歩いていく。
「あそこのお店がパンの美味しいお店、あっちは焼き菓子類が絶妙なお店、向こうは……」
「食べ物ばかり」
食べ物の店ばかり指し示すネリーに、アデルジェスは笑う。
「あら、美味しい物食べるって幸せでしょう。そのために生きているようなものだわ」
軽く唇を尖らせながらネリーが答える。
「まあね……あれ?」
前方に人だかりができている。何だろうと思ってアデルジェスは近づいてみる。
すると、数人の少年たちが対峙しているようだった。
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