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すれ違い 1
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「ヴァレン、勝負だ!」
酒瓶をだん、と卓に叩きつけて客が叫ぶ。
「あー……今日はちょっと趣向を変えてみませんか?」
「趣向?」
「飲み比べではなく、利き酒というのはいかがですか? いろいろな種類の酒をご用意してあります。味や香りでどれが何かを当てるのはどうでしょう」
「ほう……まあ、それもよいか」
ヴァレンの提案に、客は一瞬考えて頷いた。
ヴァレンと客の利き酒勝負は、終始和やかに行われた。
勝負という点でいえば、ヴァレンの圧勝ではある。しかし、その酒にまつわる逸話や産地に関連した伝承、さらにはお伽話までを交えながら面白く語るヴァレンに、客だけではなく見習いたちも引き込まれた。
客の故郷で最近、新しく売り出し始めたという酒も用意してあり、後半は客が思い出話を懐かしく語る流れになっていた。
何はともあれ、客は満足したようだ。
穏やかで、すっきりとした笑顔を浮かべて帰っていった。
アルンたち見習いもヴァレンの後ろに控えながら、客を見送る。
見習いとして控えているだけとはいえ、気分良く帰っていく客の姿を見るのは、やはり嬉しいものだ。それなのに何故か、もやもやとしたすっきりしない気分を抱えてアルンは呻く。
ふと見てみれば、同じく見習いのブラムとコリンも妙な表情をしていた。どうやら似たような思いを抱えているらしい。
三人は顔を見合わせ、首を傾げたのだった。
酒瓶をだん、と卓に叩きつけて客が叫ぶ。
「あー……今日はちょっと趣向を変えてみませんか?」
「趣向?」
「飲み比べではなく、利き酒というのはいかがですか? いろいろな種類の酒をご用意してあります。味や香りでどれが何かを当てるのはどうでしょう」
「ほう……まあ、それもよいか」
ヴァレンの提案に、客は一瞬考えて頷いた。
ヴァレンと客の利き酒勝負は、終始和やかに行われた。
勝負という点でいえば、ヴァレンの圧勝ではある。しかし、その酒にまつわる逸話や産地に関連した伝承、さらにはお伽話までを交えながら面白く語るヴァレンに、客だけではなく見習いたちも引き込まれた。
客の故郷で最近、新しく売り出し始めたという酒も用意してあり、後半は客が思い出話を懐かしく語る流れになっていた。
何はともあれ、客は満足したようだ。
穏やかで、すっきりとした笑顔を浮かべて帰っていった。
アルンたち見習いもヴァレンの後ろに控えながら、客を見送る。
見習いとして控えているだけとはいえ、気分良く帰っていく客の姿を見るのは、やはり嬉しいものだ。それなのに何故か、もやもやとしたすっきりしない気分を抱えてアルンは呻く。
ふと見てみれば、同じく見習いのブラムとコリンも妙な表情をしていた。どうやら似たような思いを抱えているらしい。
三人は顔を見合わせ、首を傾げたのだった。
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