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うわさ 2
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「ヴァレン兄さん、質問があります」
三人そろって、ヴァレンに向かって切り出した。
「……何だい、そんなに怖い顔をして……」
ヴァレンは苦笑を浮かべる。
「学校で、ヴァレン兄さんについていろいろ聞かれるんです」
「適当に答えておけばいいじゃないか」
「それが、本当なのかと僕たちも気になったんです」
「はあ……いや、まあ質問くらい答えるけれど……」
やや引き気味のヴァレン。
「じゃあ、まずは僕からです。灯台の一番上から飛び降りたことがあるっていうのは本当なんですか?」
「何だい、それ。この島の灯台だよね。あの灯台なんて、建物にしたら十階分くらいになるじゃないか。いくら何でも、そんなところから飛び降りたら死ぬよ。俺は三階から飛び降りたことくらいしかないって」
コリンが右手を上げて質問を開始すると、ヴァレンはあっさりと否定した。
「次は俺です。賭博場をひとつ潰したことがあるのは本当なんですか?」
「いや、潰してないよ。出入り禁止になっただけ。十三歳になったばかりの頃、それまで稼いだ金を元手に大勝ちして、一晩で借金返した程度」
続いてブラムが質問をする。しかし、ヴァレンはまたも否定した。
「なんだー……って一瞬言いそうになりましたけれど、実際にやらかしたほうも十分すごいですね……」
感嘆と呆れの滲んだ声で、アルンはしみじみと呟く。
「……これで終わりかい?」
どことなく疲労の伺える声をヴァレンは漏らす。
「いえ、僕がまだです。ちょっと馬鹿馬鹿しいんですけれど……呪術師の家系の生まれで、予知ができるっていうのは本当ですか? 予知のおかげで試験は常に満点だったと聞きました」
「……俺は、商家の生まれだよ。予知なんてできないって。試験が常に満点だったっていうのは本当だけれど」
いよいよぐったりとした様子でヴァレンはアルンの質問に答える。
「常に満点だったっていうのは本当なんですか?」
そこは本当だったのか。驚きながらアルンはさらに問う。
「だって、試験問題なんて本の内容からしか出ないよね。俺、一度読めば全部覚えるし。ただ、花月琴が致命的に駄目だから、基礎課程修了まではそれなりにかかったけれど。音が本当に駄目でね。おまえは頭が空っぽだからなあって、教師によく言われたよ」
「……頭が良いのか、そうでないのか、何だかよくわかりませんね……」
三人そろって、ヴァレンに向かって切り出した。
「……何だい、そんなに怖い顔をして……」
ヴァレンは苦笑を浮かべる。
「学校で、ヴァレン兄さんについていろいろ聞かれるんです」
「適当に答えておけばいいじゃないか」
「それが、本当なのかと僕たちも気になったんです」
「はあ……いや、まあ質問くらい答えるけれど……」
やや引き気味のヴァレン。
「じゃあ、まずは僕からです。灯台の一番上から飛び降りたことがあるっていうのは本当なんですか?」
「何だい、それ。この島の灯台だよね。あの灯台なんて、建物にしたら十階分くらいになるじゃないか。いくら何でも、そんなところから飛び降りたら死ぬよ。俺は三階から飛び降りたことくらいしかないって」
コリンが右手を上げて質問を開始すると、ヴァレンはあっさりと否定した。
「次は俺です。賭博場をひとつ潰したことがあるのは本当なんですか?」
「いや、潰してないよ。出入り禁止になっただけ。十三歳になったばかりの頃、それまで稼いだ金を元手に大勝ちして、一晩で借金返した程度」
続いてブラムが質問をする。しかし、ヴァレンはまたも否定した。
「なんだー……って一瞬言いそうになりましたけれど、実際にやらかしたほうも十分すごいですね……」
感嘆と呆れの滲んだ声で、アルンはしみじみと呟く。
「……これで終わりかい?」
どことなく疲労の伺える声をヴァレンは漏らす。
「いえ、僕がまだです。ちょっと馬鹿馬鹿しいんですけれど……呪術師の家系の生まれで、予知ができるっていうのは本当ですか? 予知のおかげで試験は常に満点だったと聞きました」
「……俺は、商家の生まれだよ。予知なんてできないって。試験が常に満点だったっていうのは本当だけれど」
いよいよぐったりとした様子でヴァレンはアルンの質問に答える。
「常に満点だったっていうのは本当なんですか?」
そこは本当だったのか。驚きながらアルンはさらに問う。
「だって、試験問題なんて本の内容からしか出ないよね。俺、一度読めば全部覚えるし。ただ、花月琴が致命的に駄目だから、基礎課程修了まではそれなりにかかったけれど。音が本当に駄目でね。おまえは頭が空っぽだからなあって、教師によく言われたよ」
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