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うわさ 1
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ミゼアスが島を去ってから、二週間が経つ。
やっと最初の大波が収まり、徐々に穏やかな日常を取り戻しつつあった。
ミゼアス付き見習いだったアルン達三人は、今ではヴァレン付きとなっている。ミゼアスが島を去ってすぐの頃は、学校でミゼアスのことについて質問攻めにあっていた。それがだんだん収まってくると、今度はヴァレンについての質問をされるようになってきたのだ。
「お疲れ様」
授業が終わり、同級生たちから逃げるように待ち合わせ場所に向かうと、苦笑を浮かべたブラムが待っていた。アルンもつられて苦笑を浮かべる。
「……そっちも、大変だったのかな」
「まあね。でも、俺はすぐに逃げてこられたから、まだよかったよ。コリンが捕まっていないか、心配だな……」
アルンの呟きにブラムは肩をすくめて答え、コリンの教室の方向に視線を向ける。すると今にも泣き出しそうな表情を浮かべたコリンが走ってきた。
「もう、やだっ!」
コリンは息を切らせてアルンとブラムの元までやってくると、悲痛な叫びをあげた。艶やかな黒髪がやや乱れている。
「あぁ……大変だったんだな……よしよし、帰ろう」
ぽんぽんとコリンの頭を撫で、ブラムは優しく宥める。張り詰めていたコリンの顔が、わずかに和らいだ。
「うん……今日は、ヴァレン兄さんが灯台の一番上から飛び降りたことがあるっていうのは本当なのかって聞かれた。知らないよ、そんなこと……」
唇を尖らせながら呟くコリン。
「俺は、ヴァレン兄さんが賭博場をひとつ潰したことがあるのは本当なのかって聞かれた……」
ゆっくりとため息を漏らすブラム。
「……僕は、実はヴァレン兄さんは呪術師の家系の生まれで、予知ができるっていうのは本当かっていう話だったよ。予知のおかげで、試験は常に満点だったとか」
馬鹿馬鹿しいと、大きく息を吐き出すアルン。
三人は顔を見合わせ、渋面を作る。
どうして、こうとんでもない曰くばかりあるのだろうか。それも白花とは関係のないようなことばかりだ。
ミゼアスにもいろいろな曰くはあった。しかし、どれほど金を積まれても気に入らねば口すらきかないなど、五花の白花として納得できるものばかりだった。ヴァレンとは違う。
「……でもさ、ヴァレン兄さんなら本当にやっていそうだよな」
ぼそりとブラムが呟く。
「……確かに」
アルンとコリンも同時に納得の声をあげた。呪術師の家系はともかくとして、他の二つはありえそうで恐ろしい。
三人は再び顔を見合わせ、神妙な顔を作る。こうなったら、方法はひとつだ。三人はお互いに頷き合う。
「……本人に聞いてみよう」
やっと最初の大波が収まり、徐々に穏やかな日常を取り戻しつつあった。
ミゼアス付き見習いだったアルン達三人は、今ではヴァレン付きとなっている。ミゼアスが島を去ってすぐの頃は、学校でミゼアスのことについて質問攻めにあっていた。それがだんだん収まってくると、今度はヴァレンについての質問をされるようになってきたのだ。
「お疲れ様」
授業が終わり、同級生たちから逃げるように待ち合わせ場所に向かうと、苦笑を浮かべたブラムが待っていた。アルンもつられて苦笑を浮かべる。
「……そっちも、大変だったのかな」
「まあね。でも、俺はすぐに逃げてこられたから、まだよかったよ。コリンが捕まっていないか、心配だな……」
アルンの呟きにブラムは肩をすくめて答え、コリンの教室の方向に視線を向ける。すると今にも泣き出しそうな表情を浮かべたコリンが走ってきた。
「もう、やだっ!」
コリンは息を切らせてアルンとブラムの元までやってくると、悲痛な叫びをあげた。艶やかな黒髪がやや乱れている。
「あぁ……大変だったんだな……よしよし、帰ろう」
ぽんぽんとコリンの頭を撫で、ブラムは優しく宥める。張り詰めていたコリンの顔が、わずかに和らいだ。
「うん……今日は、ヴァレン兄さんが灯台の一番上から飛び降りたことがあるっていうのは本当なのかって聞かれた。知らないよ、そんなこと……」
唇を尖らせながら呟くコリン。
「俺は、ヴァレン兄さんが賭博場をひとつ潰したことがあるのは本当なのかって聞かれた……」
ゆっくりとため息を漏らすブラム。
「……僕は、実はヴァレン兄さんは呪術師の家系の生まれで、予知ができるっていうのは本当かっていう話だったよ。予知のおかげで、試験は常に満点だったとか」
馬鹿馬鹿しいと、大きく息を吐き出すアルン。
三人は顔を見合わせ、渋面を作る。
どうして、こうとんでもない曰くばかりあるのだろうか。それも白花とは関係のないようなことばかりだ。
ミゼアスにもいろいろな曰くはあった。しかし、どれほど金を積まれても気に入らねば口すらきかないなど、五花の白花として納得できるものばかりだった。ヴァレンとは違う。
「……でもさ、ヴァレン兄さんなら本当にやっていそうだよな」
ぼそりとブラムが呟く。
「……確かに」
アルンとコリンも同時に納得の声をあげた。呪術師の家系はともかくとして、他の二つはありえそうで恐ろしい。
三人は再び顔を見合わせ、神妙な顔を作る。こうなったら、方法はひとつだ。三人はお互いに頷き合う。
「……本人に聞いてみよう」
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