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27.十九歳
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この日、王城では王妃セレディローサの十九歳の誕生祝いが盛大に行われていた。
十八で生を終えると言われたセレディローサが、十九歳を迎えたのだ。呪いが完全に消えうせたことの証明でもある。
王と王妃の愛が呪いに打ち勝ったのだという話は、すでに有名だ。幻想的な狼に王と王妃が手を携えて立ち向かい、勝利したという話は護衛兵たちからも広がった。
こぞって吟遊詩人たちに歌われ、この国のみならず、各国に伝わっている。国外からの祝いの使者たちも、呪いの話は聞いているようだった。
かつて呪いを打ち破った者はいないとされている。初めて乗り越えた人間であるセレディローサは注目の的であり、祝福された王妃として賞賛を浴びていた。
初の快挙を成し遂げたセレディローサにあやかろうと、挨拶の順番を待つ人々が列を成している。
セレディローサの故国からも、使いはやってきた。
故国の使者からの話によると、セレディローサが国を出てからまもなく、王妃が病に倒れたそうだ。使者が国を発つ前には、もう余命幾ばくもないだろうと宣告されていたという。
ここだけの話だが、と前置きして使者は声を潜める。
「姫様の出立後、王妃様を金色の光が貫いたという噂があるのです。それから王妃様が倒れたのだと……。侍女たちの間では、姫様をないがしろにした罰が当たったのではないかという声が広がっていました」
セレディローサは胸騒ぎを覚えたが、挨拶を待つ人々がまだ並んでいる。詳しいことを尋ねるような余裕もなく、次の客へと微笑むのだった。
「お義母さまが病に倒れていたなんて……どうしましょう」
誕生祝いの宴も終わり、ようやく奥に引っ込むことができたセレディローサは、デイネストと二人きりである。そこでやっと息をつき、お茶を飲みながら夫に相談を持ちかける。
「どうすることもないさ。もう、命尽きているだろうよ」
無慈悲な夫の言葉にセレディローサは一瞬、眉を寄せたが、あまりにきっぱりと言い切ったことに疑問を抱く。
「……何か知っているの?」
「狼を退けたとき、呪いはすべて消えうせたと言っただろう。でも、それはセレにかかった呪いのことだ。呪いそのものは、かけた者のところに戻ったのさ」
「呪いをかけた者? それは魔女じゃあ……」
「実際にかけたのは魔女だろうけど、魔女は依頼をこなしただけさ。依頼者のもとに呪いがいったんだよ」
「まさか……お義母さまが……?」
呆然と呟くが、デイネストは沈黙するだけだ。何も語らないということが、セレディローサの疑問を肯定していた。
十八で生を終えると言われたセレディローサが、十九歳を迎えたのだ。呪いが完全に消えうせたことの証明でもある。
王と王妃の愛が呪いに打ち勝ったのだという話は、すでに有名だ。幻想的な狼に王と王妃が手を携えて立ち向かい、勝利したという話は護衛兵たちからも広がった。
こぞって吟遊詩人たちに歌われ、この国のみならず、各国に伝わっている。国外からの祝いの使者たちも、呪いの話は聞いているようだった。
かつて呪いを打ち破った者はいないとされている。初めて乗り越えた人間であるセレディローサは注目の的であり、祝福された王妃として賞賛を浴びていた。
初の快挙を成し遂げたセレディローサにあやかろうと、挨拶の順番を待つ人々が列を成している。
セレディローサの故国からも、使いはやってきた。
故国の使者からの話によると、セレディローサが国を出てからまもなく、王妃が病に倒れたそうだ。使者が国を発つ前には、もう余命幾ばくもないだろうと宣告されていたという。
ここだけの話だが、と前置きして使者は声を潜める。
「姫様の出立後、王妃様を金色の光が貫いたという噂があるのです。それから王妃様が倒れたのだと……。侍女たちの間では、姫様をないがしろにした罰が当たったのではないかという声が広がっていました」
セレディローサは胸騒ぎを覚えたが、挨拶を待つ人々がまだ並んでいる。詳しいことを尋ねるような余裕もなく、次の客へと微笑むのだった。
「お義母さまが病に倒れていたなんて……どうしましょう」
誕生祝いの宴も終わり、ようやく奥に引っ込むことができたセレディローサは、デイネストと二人きりである。そこでやっと息をつき、お茶を飲みながら夫に相談を持ちかける。
「どうすることもないさ。もう、命尽きているだろうよ」
無慈悲な夫の言葉にセレディローサは一瞬、眉を寄せたが、あまりにきっぱりと言い切ったことに疑問を抱く。
「……何か知っているの?」
「狼を退けたとき、呪いはすべて消えうせたと言っただろう。でも、それはセレにかかった呪いのことだ。呪いそのものは、かけた者のところに戻ったのさ」
「呪いをかけた者? それは魔女じゃあ……」
「実際にかけたのは魔女だろうけど、魔女は依頼をこなしただけさ。依頼者のもとに呪いがいったんだよ」
「まさか……お義母さまが……?」
呆然と呟くが、デイネストは沈黙するだけだ。何も語らないということが、セレディローサの疑問を肯定していた。
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