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28.呪いの元凶
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「いったん発動した呪いは、術者であっても取り消すことはできない。セレにかけられた呪いを一部でも書き換えることができた魔女は、かなりの力の持ち主だよ。でも、書き換えたのはセレの分だけだ。そして、呪いというものは、かけた者にも戻ってくる」
「どういうこと?」
「簡単に言うと、まずセレに発動したのは書き換え後の呪い。初めてなのに、とっても気持ちよくなっちゃった、あのやつ」
「ちょっ……」
つい慌てた声がセレディローサの口から漏れてしまった。あれからもう幾度となくデイネストと肌を重ねているが、それだけに初めてにしてあの痴態は異常だったと羞恥がわき上がる。
「で、返っていった呪いは書き換え前のやつ。依頼者はセレが十八歳のときに、恐怖と苦痛のうちに生を終えることになる。だから、セレが十九歳になった今日には、もう命尽きているはず」
デイネストはセレディローサの恥じらいなど気にすることもなく、話を続けた。
羞恥のためにやや混乱しかけていたセレディローサだったが、デイネストが語る内容に意識を引き戻される。
「そんな……お義母さまが……」
ただ呆然とセレディローサは掠れた声を紡ぐ。
「呪いというのは、必ず二つ発動するんだ。相手の分と、自分の分。相手を呪えば、必ず自分にも同じものが返ってくる。今回、依頼者がそれを知っていたかどうかは知らないけれどね。……まあ、多分知らなかったんだろうな。自業自得、というやつだよ」
義母である王妃は、元はセレディローサの母の侍女であったという。自らが王妃の座に着くため、セレディローサに呪いをかけたのだろうか。それとも、セレディローサの母に恨みがあって娘に呪いをかけたのだろうか。
今となっては、もうわからないことだ。だが、世継ぎの王子までもうけながら、セレディローサに対して常に優位を保とうとしていたのは、呪いによって得た地位への不安だったのではないだろうか。
呪いによってセレディローサの人生は大きく歪められた。
王家からほぼ見捨てられ、ひっそりと身を潜めるように生きてきたのだ。本来、王女としてあるべき華やかな暮らしなどとは無縁だった。
常に死への恐怖が胸の奥にくすぶり、立派な王女として最期を迎えることだけを考えて十八年を過ごした。一人の少女が背負うには、あまりにも重い荷物だろう。
その元凶が、義母である王妃だったいうのだ。
「どういうこと?」
「簡単に言うと、まずセレに発動したのは書き換え後の呪い。初めてなのに、とっても気持ちよくなっちゃった、あのやつ」
「ちょっ……」
つい慌てた声がセレディローサの口から漏れてしまった。あれからもう幾度となくデイネストと肌を重ねているが、それだけに初めてにしてあの痴態は異常だったと羞恥がわき上がる。
「で、返っていった呪いは書き換え前のやつ。依頼者はセレが十八歳のときに、恐怖と苦痛のうちに生を終えることになる。だから、セレが十九歳になった今日には、もう命尽きているはず」
デイネストはセレディローサの恥じらいなど気にすることもなく、話を続けた。
羞恥のためにやや混乱しかけていたセレディローサだったが、デイネストが語る内容に意識を引き戻される。
「そんな……お義母さまが……」
ただ呆然とセレディローサは掠れた声を紡ぐ。
「呪いというのは、必ず二つ発動するんだ。相手の分と、自分の分。相手を呪えば、必ず自分にも同じものが返ってくる。今回、依頼者がそれを知っていたかどうかは知らないけれどね。……まあ、多分知らなかったんだろうな。自業自得、というやつだよ」
義母である王妃は、元はセレディローサの母の侍女であったという。自らが王妃の座に着くため、セレディローサに呪いをかけたのだろうか。それとも、セレディローサの母に恨みがあって娘に呪いをかけたのだろうか。
今となっては、もうわからないことだ。だが、世継ぎの王子までもうけながら、セレディローサに対して常に優位を保とうとしていたのは、呪いによって得た地位への不安だったのではないだろうか。
呪いによってセレディローサの人生は大きく歪められた。
王家からほぼ見捨てられ、ひっそりと身を潜めるように生きてきたのだ。本来、王女としてあるべき華やかな暮らしなどとは無縁だった。
常に死への恐怖が胸の奥にくすぶり、立派な王女として最期を迎えることだけを考えて十八年を過ごした。一人の少女が背負うには、あまりにも重い荷物だろう。
その元凶が、義母である王妃だったいうのだ。
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「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
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