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4.出戻り男と眼鏡女子*
久々にシようぜ?
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隆利が、何を言っているのか分からない。
頭もズキズキ痛むし、押さえつけられた腕も、彼の身体に乗り掛かられたままの下腹部も、限界だって悲鳴を上げている。
私はどうしてこの人のことをあんなに好きだって思えていたんだろう。
自分勝手で我儘で、私のことなんてちっとも考えてない。
今だってきっと、寄生先から追い出されたから古巣に戻るか、ぐらいの気持ちでここに居るだけだと思う。
男性と付き合ったことのなかった私は、隆利にあれこれ要求されるたび、それに応えるのが愛情なんだと勘違いして、彼の傍若無人ぶりを助長させてしまった。
でも、私ばかりが一方的に搾取されるこんな関係、愛なんかじゃない。
彰久さんと一緒にいて、私、それが分かった。
彼はいつも私にも沢山のものを与えようとしてくれたもの。
彰久さんは、自分の要求ばかりを押し付けてくる隆利とは違う!
彼は常に私のことを考えて、誠実に向き合ってくれていた。
そう思ったら、彰久さんの話も聞かずに勝手に色々思い込んで、メソメソ泣きながら逃げて来た自分の事が凄く愚かに思えた。
***
「なぁ、久々にシようぜ?」
下卑た笑みと共に隆利にグッと身体を押さえつけられて、恐怖で全身が強張った。
「ヤッ。私、彼氏、出来た……」
押さえつけられた手を振り解こうと必死に力を込めてみたけれど全然ダメで。
私は、自分が如何に非力なのかを思い知らされる。
「は? 茶碗増えてたの、そう言う事?」
ジタバタもがく私を面倒臭そうに見下ろして隆利が目を眇めるから、私は必死に頷いた。
その通りだから! 貴方に付け入る隙はないの!と知らしめたかった。
「ふ~ん」
隆利は私の言葉に身体を離すと、寝室のカーテンを全開にした。
私はてっきりそのまま窓から出て行ってくれるんだとホッとしたの。
なのに――。
窓に施錠をした隆利は、くるりと踵を返してリビングに行くと、無造作に放り出していた私の鞄の中を漁って。
お金を取ろうとしてる?って思ったけれど彼が持って来たのは私のスマートフォンだった。
「な、何を――」
眼鏡がなくてぼやける視界のまま、ベッドに起き上がって隆利から一番離れた壁際で震えながら彼を見つめたら、ヌッとスマホが眼前に突きつけられてビクッとする。
「ロック解除ね」
言われて、フェイスIDでロックを外されたんだと分かった私は、慌ててスマホに手を伸ばした。
でもスルリとかわされて、少し距離をあけられてしまう。
「なぁ、もしかしてこの……鬼のように着歴残ってる一羽とか何とかってのが彼氏? こいつ、ストーカーか何かなの? すげぇ着信数なんだけど。怖」
音を消したままにしていたから気付かなかった。
私があんな態度を取ったからだろうか。
彰久さんからの不在着信が山の様にきていると隆利に示唆されて、私は思わずスマホに手を伸ばしそうになった。
でも、今そんなことをしたら彰久さんが彼氏だと認める事になりそうで。
隆利にそれがバレてはいけない気がした私は、慌てて顔を背けた。
「お前、ホント分かりやすいよな」
いやらしい笑みを浮かべた隆利が、勝ち誇ったようにスマホの画面をタップする。
やけに大きくコール音が響くのは、スピーカー通話にされてるから?
呼び出し音が一回鳴るか鳴らないかですぐ、『実迦ちゃん⁉︎』という彰久さんの声がして。
私がそれに応えようとしたら、隆利にグッと口を押さえられて阻止されてしまった。
通話口からは彰久さんが心配そうに私の名を呼ぶ声がずっとしていて。
隆利は私に見せつける様にしながらスマホをベッドの宮棚に置いた。
頭もズキズキ痛むし、押さえつけられた腕も、彼の身体に乗り掛かられたままの下腹部も、限界だって悲鳴を上げている。
私はどうしてこの人のことをあんなに好きだって思えていたんだろう。
自分勝手で我儘で、私のことなんてちっとも考えてない。
今だってきっと、寄生先から追い出されたから古巣に戻るか、ぐらいの気持ちでここに居るだけだと思う。
男性と付き合ったことのなかった私は、隆利にあれこれ要求されるたび、それに応えるのが愛情なんだと勘違いして、彼の傍若無人ぶりを助長させてしまった。
でも、私ばかりが一方的に搾取されるこんな関係、愛なんかじゃない。
彰久さんと一緒にいて、私、それが分かった。
彼はいつも私にも沢山のものを与えようとしてくれたもの。
彰久さんは、自分の要求ばかりを押し付けてくる隆利とは違う!
彼は常に私のことを考えて、誠実に向き合ってくれていた。
そう思ったら、彰久さんの話も聞かずに勝手に色々思い込んで、メソメソ泣きながら逃げて来た自分の事が凄く愚かに思えた。
***
「なぁ、久々にシようぜ?」
下卑た笑みと共に隆利にグッと身体を押さえつけられて、恐怖で全身が強張った。
「ヤッ。私、彼氏、出来た……」
押さえつけられた手を振り解こうと必死に力を込めてみたけれど全然ダメで。
私は、自分が如何に非力なのかを思い知らされる。
「は? 茶碗増えてたの、そう言う事?」
ジタバタもがく私を面倒臭そうに見下ろして隆利が目を眇めるから、私は必死に頷いた。
その通りだから! 貴方に付け入る隙はないの!と知らしめたかった。
「ふ~ん」
隆利は私の言葉に身体を離すと、寝室のカーテンを全開にした。
私はてっきりそのまま窓から出て行ってくれるんだとホッとしたの。
なのに――。
窓に施錠をした隆利は、くるりと踵を返してリビングに行くと、無造作に放り出していた私の鞄の中を漁って。
お金を取ろうとしてる?って思ったけれど彼が持って来たのは私のスマートフォンだった。
「な、何を――」
眼鏡がなくてぼやける視界のまま、ベッドに起き上がって隆利から一番離れた壁際で震えながら彼を見つめたら、ヌッとスマホが眼前に突きつけられてビクッとする。
「ロック解除ね」
言われて、フェイスIDでロックを外されたんだと分かった私は、慌ててスマホに手を伸ばした。
でもスルリとかわされて、少し距離をあけられてしまう。
「なぁ、もしかしてこの……鬼のように着歴残ってる一羽とか何とかってのが彼氏? こいつ、ストーカーか何かなの? すげぇ着信数なんだけど。怖」
音を消したままにしていたから気付かなかった。
私があんな態度を取ったからだろうか。
彰久さんからの不在着信が山の様にきていると隆利に示唆されて、私は思わずスマホに手を伸ばしそうになった。
でも、今そんなことをしたら彰久さんが彼氏だと認める事になりそうで。
隆利にそれがバレてはいけない気がした私は、慌てて顔を背けた。
「お前、ホント分かりやすいよな」
いやらしい笑みを浮かべた隆利が、勝ち誇ったようにスマホの画面をタップする。
やけに大きくコール音が響くのは、スピーカー通話にされてるから?
呼び出し音が一回鳴るか鳴らないかですぐ、『実迦ちゃん⁉︎』という彰久さんの声がして。
私がそれに応えようとしたら、隆利にグッと口を押さえられて阻止されてしまった。
通話口からは彰久さんが心配そうに私の名を呼ぶ声がずっとしていて。
隆利は私に見せつける様にしながらスマホをベッドの宮棚に置いた。
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