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1.あっくんさんと、三番ちゃん
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レシートにおばあちゃんが走り書きしてくださった番号を言いながら恐る恐る窓口に声を掛けたら、中からヒョコッと優しそうな顔の男性が顔を覗かせて。
私はビクッと飛び上がりそうになる。
てっきりさっきみたいにおばあちゃんが応対してくださるものと思っていたのに。
「お買い物、無事終わられましたか?」
おばあさんは三角巾だったけれど、彼は黒いキャップを被っていて、それが三角巾代わりなのかな?と思う。
「ひゃっ、〝あっくん〟さんっ!」
身を乗り出すようにして話しかけられた私は、彼の笑顔のまぶしさに思わず後ずさる。
あまりに動揺しすぎて、無意識に彼の名前(?)を口走っていたことにも気付かなかった。
「わー、三番さん、俺の名前覚えてくれてんの?」
どうやら私が最後のお客だったのか、〝あっくん〟さんは「ちょっと待ってね」と言い置いて受付窓を閉ざしてしまう。
(あ。あれ? 私のクレープは⁉︎)
ちょっと待ってね、って言われたからもしかしてまだ出来ていなかったとか?
ふと腕時計に視線を落とすと、注文してから優に二〇分は経っていた。
「あれれ?」
何でだろう?とお預けを食らったワンコの気持ちでその場に立ち尽くしていたら、死角になった向こう側で車のドアの開閉音がして、〝あっくん〟さんが私のすぐ横に立った。
(うわっ、大っきい)
身長が一四九センチしかない私からしてみれば、子供とお年寄り以外、大抵の人々はみんな大きいのだけれど。
〝あっくん〟さんはその中でもずば抜けて大きく見えて。
多分一八〇センチ以上はあるんじゃないかしら?と思ってしまう。
「はわぁ~」
思わず彼を見上げて間の抜けた声を出したらククッと笑われてしまった。
「デカイってよく言われんだ。三番ちゃんは小さくて可愛いってしょっちゅう言われるでしょ?」
とか。
じっと彼を見上げてしまったんだから仕方ない。
でも、ハンサムな彼にいつまでも整理番号で呼ばれるのは何だか嫌だなって思って。
「三番じゃありません。私、大野実迦って言います……。えっと、それで〝あっくん〟さんは……」
もうついでだから名前聞いちゃえ。
私は学校の事務職でつちかった対人スキルを発揮してみることにした。
もうアレコレ恥ずかしいところ見られちゃってるんだもん。
今更一個増えたってもういいや、って開き直ったって言うのもある。
「ミカちゃんか~。可愛い名前だね。俺はイチバカセ・アキヒサ」
「いちば、かせ……さん……?」
聞き慣れない名前のはずなのに、何か知っているような引っ掛かりを覚えてしどろもどろになったら、
「ああ、珍しい苗字だから耳馴染みないよね。えっと……こう書くんだ」
彼は黒色のエプロンのポケットからスマートフォンを取り出すと、そこに『一羽ヶ瀬彰久』と打ち込んで見せてくれた。
何となくその字面にさえも既視感があるのは気のせい?
「ミカちゃんは?」
彼の声にハッとした私は、ちょっと戸惑って鞄から一羽ヶ瀬さん同様スマートフォンを取り出すと、『大野実迦』と打ち込んで彼に見せる。
「実迦ちゃんも漢字、少し珍しいね」
言われて、
「はい、辞書登録していないパソコンでは一発で変換できないのでいっつも苦労しています」
はぁっと溜め息をつきながら言ったら、「それ、めっちゃ分かる」と、一羽ヶ瀬さんが同調してくれた。
「ああ、一羽ヶ瀬さんも出そうにないですもんね」
言ったら「彰久でいいよ」とやけにフレンドリー。
私はビクッと飛び上がりそうになる。
てっきりさっきみたいにおばあちゃんが応対してくださるものと思っていたのに。
「お買い物、無事終わられましたか?」
おばあさんは三角巾だったけれど、彼は黒いキャップを被っていて、それが三角巾代わりなのかな?と思う。
「ひゃっ、〝あっくん〟さんっ!」
身を乗り出すようにして話しかけられた私は、彼の笑顔のまぶしさに思わず後ずさる。
あまりに動揺しすぎて、無意識に彼の名前(?)を口走っていたことにも気付かなかった。
「わー、三番さん、俺の名前覚えてくれてんの?」
どうやら私が最後のお客だったのか、〝あっくん〟さんは「ちょっと待ってね」と言い置いて受付窓を閉ざしてしまう。
(あ。あれ? 私のクレープは⁉︎)
ちょっと待ってね、って言われたからもしかしてまだ出来ていなかったとか?
ふと腕時計に視線を落とすと、注文してから優に二〇分は経っていた。
「あれれ?」
何でだろう?とお預けを食らったワンコの気持ちでその場に立ち尽くしていたら、死角になった向こう側で車のドアの開閉音がして、〝あっくん〟さんが私のすぐ横に立った。
(うわっ、大っきい)
身長が一四九センチしかない私からしてみれば、子供とお年寄り以外、大抵の人々はみんな大きいのだけれど。
〝あっくん〟さんはその中でもずば抜けて大きく見えて。
多分一八〇センチ以上はあるんじゃないかしら?と思ってしまう。
「はわぁ~」
思わず彼を見上げて間の抜けた声を出したらククッと笑われてしまった。
「デカイってよく言われんだ。三番ちゃんは小さくて可愛いってしょっちゅう言われるでしょ?」
とか。
じっと彼を見上げてしまったんだから仕方ない。
でも、ハンサムな彼にいつまでも整理番号で呼ばれるのは何だか嫌だなって思って。
「三番じゃありません。私、大野実迦って言います……。えっと、それで〝あっくん〟さんは……」
もうついでだから名前聞いちゃえ。
私は学校の事務職でつちかった対人スキルを発揮してみることにした。
もうアレコレ恥ずかしいところ見られちゃってるんだもん。
今更一個増えたってもういいや、って開き直ったって言うのもある。
「ミカちゃんか~。可愛い名前だね。俺はイチバカセ・アキヒサ」
「いちば、かせ……さん……?」
聞き慣れない名前のはずなのに、何か知っているような引っ掛かりを覚えてしどろもどろになったら、
「ああ、珍しい苗字だから耳馴染みないよね。えっと……こう書くんだ」
彼は黒色のエプロンのポケットからスマートフォンを取り出すと、そこに『一羽ヶ瀬彰久』と打ち込んで見せてくれた。
何となくその字面にさえも既視感があるのは気のせい?
「ミカちゃんは?」
彼の声にハッとした私は、ちょっと戸惑って鞄から一羽ヶ瀬さん同様スマートフォンを取り出すと、『大野実迦』と打ち込んで彼に見せる。
「実迦ちゃんも漢字、少し珍しいね」
言われて、
「はい、辞書登録していないパソコンでは一発で変換できないのでいっつも苦労しています」
はぁっと溜め息をつきながら言ったら、「それ、めっちゃ分かる」と、一羽ヶ瀬さんが同調してくれた。
「ああ、一羽ヶ瀬さんも出そうにないですもんね」
言ったら「彰久でいいよ」とやけにフレンドリー。
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