【完結】【R18】キス先② 大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!

鷹槻れん

文字の大きさ
57 / 105
11.羽住酒造と藤原家の稼業

この子は次にどんなことを言ってくるんだろう?

しおりを挟む
日織ひおりさん、貴女の……というより僕らのお義父とうさんは木を扱う仕事をしておられます」

 詳しいことは、(もしも知りたいと思われたなら)日織ひおりさんご自身が直接日之進氏におたずねになられたらいいと思った修太郎しゅうたろうは、『藤原ふじわら木材』の仕事内容について、多くを語ろうとは思わなかった。


 いわゆる「製材所」を営む日之進の会社は、近隣の森林組合で丸太を落札し、建築資材として加工したのちに客先へ納品するといった仕事で生計を立てている。

 工程をざっと述べると、
 森林組合の競りで落札した丸太を自社・または契約している運送会社のトラックに乗せて藤原木材製材所まで持ち帰る。
 持ち帰った丸太の皮を剥いて、一般的な建築資材の大きさに製材する。
 出来上がった製品を乾燥センターに持ち込み、そこでしっかりと乾燥させる。
 乾燥させた木材をプレナ加工機という機材で均一な大きさに整える。
 出来上がった建築資材を、トラックに乗せて客の元へ納品する。
 といった感じだ。


「木を……」

 修太郎の言葉に、小さくそうつぶやいてから口元に手を当てて考え込むような仕草をする日織ひおりが可愛くて、「この子は次にどんなことを言ってくるんだろう?」と、修太郎は内心ワクワクした。

「あのっ、修太郎しゅうたろうさん。木って……例えばあれですかね? 昔、一世を風靡ふうびしたとかいう北海道のお土産みやげの定番、木彫りのクマさん! ひょっとしてお父様はそういうものを作っていらっしゃるのでしょうか?」

 目の端、「うちにもお父様のお部屋に飾ってあるのですっ! シャケを咥えた木彫りのクマちゃんが!」とか嬉しそうにポンっと手を打って夢見がちな表情をする日織ひおりの愛らしい姿が見えて、修太郎は思わず胸がキュウッと締め付けられるような愛しさに駆られる。

 しかし同時に、「日織さん、何故に北海道土産に思考が飛んだのですか!?」と思ってしまったのも事実だ。


「えっと……日織さん? その……我々が住んでいるのは山口県ですよ?」

 控えめを心掛けたとはいえ、修太郎はそう突っ込まずにはいられなかった。


「えっと……もしかして山口県にクマはいませんでしたか?」

 ハッとしたように聞かれて、

「……ツキノワグマならいますけど、ヒグマはいませんね」

 ハンドルを握ったまま、クソ真面目に日織からの質問に返しながらも、ではいるからと言ってツキノワグマを工芸品として土産物屋に並べてあるか?と聞かれたら見たことないですよね?と心の中で突っ込みまくりの修太郎だ。けれど、果たしてそれを日織に〝やんわりと伝えるには〟どうすべきかと思案する。

 というかそもそも――。

日織ひおりさん、日之進おとうさんが扱っておられるのは『木材』です」

 考えてみれば、木、という漠然とした言い方をした自分が悪かったのだ、きっと日織さんは悪くない、と反省しきりの修太郎しゅうたろうだった。


「木、材……?」

 修太郎がそう言って初めて、日織がハッとしたように息を呑んで。

「私、木ってそんな大きなもののことだなんて、想像も及びませんでしたっ!」

 不覚なのですっ!と続けている日織を横目に、修太郎は
(もしもこの場に異母弟おとうとの健二がいたなら、「いや、日織さん! 普通はそっちが先に来るものですからね!?」とすぐさまツッコんでいただろうな?)
 と思わずにはいられない。

 けれど、あいにくというか幸いというか。〝日織という女性〟を熟知している修太郎は違うのだ。
 彼は(日織さんなら斜め上の想像をして、ふんわりした妄想を繰り広げてきても何ら不思議ではないし、寧ろそうでなくちゃ彼女らしくない)とすら思っている。

 思えば修太郎自身、まるでそれを期待するように、「この子は次にどんなことを言ってくるんだろう?」と、内心ワクワクしていたのだから。

 案外最初の時「木材」と言わずに無意識に「木」という言葉を選んでしまったのだって、それを期待していたのかも知れないな?と、ひとり心の中で苦笑した修太郎だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜

yuzu
恋愛
 人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて…… 「オレを好きになるまで離してやんない。」

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...