【完結】【R18】結婚相手を間違えました

鷹槻れん

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36.終止符

責任転嫁

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***


 離婚届を提出して、さあ帰ろうと車にエンジンをかけたところで。

そうちゃん。私ね、偉央いおさんのご両親に……子供が産めない嫁は要らないって言われちゃった……」

 結葉ゆいはがポツンとつぶやいた。

「えっ。――何だよそれ。いつの話だ⁉︎」

 そんなの初耳だったそうだ。
 思わず「いつ」とか責めるみたいに問いかけてしまって。
 グッとハンドルを握りしめて、心の中に渦巻く激情を何とか逃そうと頑張る。

「――ちょっと前に。その……向こうの親御さんから私の携帯に電話がかかって……きたの」

 結葉ゆいは山波やまなみ建設宛に偉央いおからの荷物が届いてすぐ、偉央いおと離婚する様になるであろうことは伏せたまま、義理両親に連絡先が新しくなった旨を知らせたらしい。

「教えるかどうか迷ったんだけどね、キッズ携帯前の番号は通じないから……ご心配お掛けしちゃうかなって思って。それで――」

「だからってわざわざ」

「うん。そうちゃんの言いたい事も分かってるつもり。だから今まで言えずに黙ってたの。ごめんなさい」

 しゅんとする結葉ゆいはに、そうは小さく吐息を落とす。

「俺の方こそ頭ごなしに否定しちまってすまん。多分……お前にはお前なりの考えがあってのことだったんだよな? ――ちゃんと聞くから。お前の思い、俺に聞かせてくれるか?」

 そうの言葉に、結葉ゆいはがギュッと手指を握り締めたのが分かった。

偉央いおさんが……。ご両親から私と連絡が取れないのはどう言うことか?って問い詰められたら面倒かなって思ったの。向こうのお母さん、昼間に時々家の方に電話くださってたから」

 結葉ゆいはは家を出てしまっていたから、それには出られない。きっとそれが続けばキッズ携帯に電話が掛かってくるはずで。

「あの携帯がどうなったのかは分からないけれど……。もし解約されていなかったとしても、私が出られないことに変わりはなかったから。家の電話にも携帯にも出られないとなったら……きっと色々変に思われるかなって思ったの」

 偉央いおが下手に問い詰められて、離婚の危機にあるとあちらの両親にバレてしまったら。
 もしかしたら偉央いおとゆっくり話し合う機会に恵まれなくなってしまうかも知れない、と考えてしまったのだと結葉ゆいはは言った。

「もちろん、ご両親にも関係のあるお話だし。ずっと隠し通すつもりだったわけじゃないの。でも……ある程度は偉央いおさんとちゃんと話してからがいいって思っちゃったの。ワガママでごめんね」

 眉根を寄せて悲しそうな顔をする結葉ゆいはに、そうは「何バカなことしてんだよ!」と思わないわけじゃない。
 でも、そういう、どこか変なところで律儀なのが結葉ゆいはだというのも分かっていたから。
 喉元まで迫り上げてきたモヤモヤした気持ちを、顔に出さないようにしてグッと飲み込んだ。

 それに、当人同士で話し合う前に第三者に出てこられたくないという気持ちだって分からないわけじゃない。

「それで……御庄みしょうさんには番号――」

「教えてない」

 偉央いおの両親も、まさか息子が妻の連絡先を知らないなどと思いはしなかったのか、現状義理両親から偉央いお結葉ゆいはの携帯番号が漏れてしまった気配はないらしい。

 だけど。

「落ち着いたら番号変えような?」

 そうは思わずそう言わずにはいられなかった。

「え、でも……そうちゃん」

「嫌だったんだろ? 向こうの親からの電話」

 ぶっきら棒につぶやいたら、結葉ゆいはが言葉に詰まったみたいに押し黙った。

 結葉ゆいはを傷つけるような電話が掛かってきた以上、愛しい結葉ゆいはにその番号を持たせ続けるのは、正直そう嫌なのだ。

 それに、一度あちら側に伝えてしまった番号が、いつ偉央いおに知られないとも言い切れないのが正直容認出来なかったそうだ。


 さっき、離婚届を提出した以上、結葉ゆいははもう偉央いおの妻ではない。

 そうとしては二度と他の男に好き勝手されたくはないというのが本音なわけで。




 おそらく偉央いおは自分の親が結葉ゆいはにそんな酷い言葉を投げかけたことを知らないんだろう。

 偉央いおのマンションや、結葉ゆいはの実家での、数回に渡る話し合いの最中も、今日離婚届を出しに行った時も、偉央いおの口からそんな話は微塵も出なかったから。

 きっと偉央いおは事務的に淡々と、結葉ゆいはと離婚することになったと両親に伝えただけなんだと思う。

 離婚の理由をどう話したのかまでは分からないけれど、偉央いおが誰にはばかるでもなく、惜しみなく結葉ゆいはに慰謝料などを渡そうとしたことから鑑みるに、離婚の原因は自分だから、みたいには話していたのだろう。

 だが、さすがに、偉央いおだって自分の親に妻を監禁していたなんてことは言わなかったんじゃないだろうか。
 実際結葉ゆいはだって偉央いおの両親にはもちろん、自分の親たちにですら、まだそのことは言えていないみたいだし。

 だけど――。いや、だからこそ――。

 偉央いおの両親はきっと、結葉よめの方に原因があるとんだろう。
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