279 / 317
■特典①『羽の生えたうさぎ』
8
しおりを挟む
その言葉に着衣を見たけれど、そんなに乱れてない。
強いて言えば、一番上のボタンとコサージュ付きタイが緩められてることくらい。
でもこれ、気絶したことを思えば処置としては許容範囲内……だよ、ね?
「よ、頼綱はそんなことしないものっ」
それを直しながらそう言ったら、小さく微笑まれた。
その笑顔がすごくかっこよくて、今更のように「ホテルの部屋に異性とふたりきり」と言う言葉が頭をぐるぐる回り始める。
「まぁそれはそうだけど。キミは何故そう思うの?」
ベッドに腰掛けてきた頼綱に、あごをすくい上げられる。
いやん! 変にドキドキするからやめてっ。
「よっ、頼綱はっ。私が怒ったり慌てたりする反応を見るのを、た、楽しむタイプだもの。意識のない私じゃ、面白く感じないはずだわっ!」
ソワソワしながらしどろもどろに言ったら、ニヤリと微笑われた。
「よく分かってるね、花々里。そう、こんな風に、ね……」
言って、親指の腹で唇をなぞられて、小さく破り開かされる。
頼綱の指先が歯列に触れたのが分かって、身体に力が入ってしまう。
「俺が何かするたび、キミが過剰なくらい反応してくれるのを見るのが、僕はたまらなく好きなんだ。――その先の反応が知りたくて、ゾクゾクする」
「そ、その先の反応なんて……っ」
口に何か入ってきたら噛み付くくらいしか思いつかない……。
唇に触れる頼綱の手をギュッと握って、その動きを封じる。
そうしたまま、私はソワソワしながらあちこちに視線を泳がせた。
今更のように自分が今いるベッドはキングサイズの大きなものだと気が付いてドキッとした。
えっと……このお部屋。
もしかして、私が倒れちゃったから急遽押さえた、とかではなく予め取ってあったりしましたか?
ベッドがひとつしかないように見えるのは……気のせいでしょうか?
あ、もしかしたらもう一部屋、別室が押さえてあったりします……か?
き、きっとそうですよね?
うん、仮にそうだとして。
多分ここは頼綱用のお部屋で……私には別にもう少し庶民的な小さなお部屋が取ってあるんだと思います。思うことに決めました。
そうでも思わないとやってられない危険なシチュエーションなんだもの。
頼綱の手を押さえたまま、彼の背中越しの景色に目を凝らせば、向こうのほうにリビングと思しき部屋も見えて。
どうやらそちらにはダイニングテーブルもあるみたい。
そうしてその上には……。
強いて言えば、一番上のボタンとコサージュ付きタイが緩められてることくらい。
でもこれ、気絶したことを思えば処置としては許容範囲内……だよ、ね?
「よ、頼綱はそんなことしないものっ」
それを直しながらそう言ったら、小さく微笑まれた。
その笑顔がすごくかっこよくて、今更のように「ホテルの部屋に異性とふたりきり」と言う言葉が頭をぐるぐる回り始める。
「まぁそれはそうだけど。キミは何故そう思うの?」
ベッドに腰掛けてきた頼綱に、あごをすくい上げられる。
いやん! 変にドキドキするからやめてっ。
「よっ、頼綱はっ。私が怒ったり慌てたりする反応を見るのを、た、楽しむタイプだもの。意識のない私じゃ、面白く感じないはずだわっ!」
ソワソワしながらしどろもどろに言ったら、ニヤリと微笑われた。
「よく分かってるね、花々里。そう、こんな風に、ね……」
言って、親指の腹で唇をなぞられて、小さく破り開かされる。
頼綱の指先が歯列に触れたのが分かって、身体に力が入ってしまう。
「俺が何かするたび、キミが過剰なくらい反応してくれるのを見るのが、僕はたまらなく好きなんだ。――その先の反応が知りたくて、ゾクゾクする」
「そ、その先の反応なんて……っ」
口に何か入ってきたら噛み付くくらいしか思いつかない……。
唇に触れる頼綱の手をギュッと握って、その動きを封じる。
そうしたまま、私はソワソワしながらあちこちに視線を泳がせた。
今更のように自分が今いるベッドはキングサイズの大きなものだと気が付いてドキッとした。
えっと……このお部屋。
もしかして、私が倒れちゃったから急遽押さえた、とかではなく予め取ってあったりしましたか?
ベッドがひとつしかないように見えるのは……気のせいでしょうか?
あ、もしかしたらもう一部屋、別室が押さえてあったりします……か?
き、きっとそうですよね?
うん、仮にそうだとして。
多分ここは頼綱用のお部屋で……私には別にもう少し庶民的な小さなお部屋が取ってあるんだと思います。思うことに決めました。
そうでも思わないとやってられない危険なシチュエーションなんだもの。
頼綱の手を押さえたまま、彼の背中越しの景色に目を凝らせば、向こうのほうにリビングと思しき部屋も見えて。
どうやらそちらにはダイニングテーブルもあるみたい。
そうしてその上には……。
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
溺愛なんてされるものではありません
彩里 咲華
恋愛
社長御曹司と噂されている超絶イケメン
平国 蓮
×
干物系女子と化している蓮の話相手
赤崎 美織
部署は違うが同じ会社で働いている二人。会社では接点がなく会うことはほとんどない。しかし偶然だけど美織と蓮は同じマンションの隣同士に住んでいた。蓮に誘われて二人は一緒にご飯を食べながら話をするようになり、蓮からある意外な悩み相談をされる。 顔良し、性格良し、誰からも慕われるそんな完璧男子の蓮の悩みとは……!?
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
【完結】その男『D』につき~初恋男は独占欲を拗らせる~
蓮美ちま
恋愛
最低最悪な初対面だった。
職場の同僚だろうと人妻ナースだろうと、誘われればおいしく頂いてきた来る者拒まずでお馴染みのチャラ男。
私はこんな人と絶対に関わりたくない!
独占欲が人一倍強く、それで何度も過去に恋を失ってきた私が今必死に探し求めているもの。
それは……『Dの男』
あの男と真逆の、未経験の人。
少しでも私を好きなら、もう私に構わないで。
私が探しているのはあなたじゃない。
私は誰かの『唯一』になりたいの……。
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
ただいま冷徹上司を調・教・中!
伊吹美香
恋愛
同期から男を寝取られ棄てられた崖っぷちOL
久瀬千尋(くぜちひろ)28歳
×
容姿端麗で仕事もでき一目置かれる恋愛下手課長
平嶋凱莉(ひらしまかいり)35歳
二人はひょんなことから(仮)恋人になることに。
今まで知らなかった素顔を知るたびに、二人の関係は近くなる。
意地と恥から始まった(仮)恋人は(本)恋人になれるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる