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■特典①『羽の生えたうさぎ』
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前菜――鶏むね肉のテリーヌ――とともに運ばれてきた、シャンメリーとシャンパン。
店員さんによって、それぞれのボトルからグラスに注がれた感じは、どちらも一緒に見えた。
やや黄色みの強い琥珀色のキラキラした液体に、小さな気泡がぷつぷつと上がる。
頼綱と軽くグラスを合わせて乾杯をして、各々ひとくち口に含んで――。
うん、これこれ。
この甘くてシュワァ~っと弾ける大人の?お味。
美味しいっ。
思わず口元が緩んでしまいそうになるのを必死にこらえてから頼綱に「あの……」と声をかける。
約束のにおいを……。
私の期待に満ちた目を見てクスッと笑った頼綱から、「どうぞ」とグラスを差し出されて、私は恐る恐る鼻を近付けた。
そのくせ思いっきりスーッとにおいを吸い込んで――。
「――あ、れれれ……!?」
***
ありゃ?
ここ……どこ?
とっても高い天井に、羽のついたウサギがキラキラと舞い飛んでいて。
「シャン、デリア?」
ポツリと小声でつぶやいたら、「目、覚めたかい?」って顔を覗き込まれた。
「ひょりつな!?」
ひゃ!という悲鳴と頼綱が混ざって変なことになってしまった。
名前の呼び方に関しては結構厳しそうなイメージの頼綱なのに、何故か今回はスルーしてくれて。
そればかりか、
「身体、起こせるかな?」
っていたわるように聞いてくれるの。
何だろう、これ。
もしかして……目が覚めたつもりでいるけれど、私、まだ夢の中にいるのかしら?
「シャンパンのにおいを嗅いだだけで倒れるとか……一体誰が想像できる? キミは鼻からも飲み食いできる特殊体質か何かなのかい?」
水の入ったグラスを差し出されて、ベッドの上にぼんやりした頭で座ったまま、それを受け取って。
促されるままにひと口飲んでから「え?」と思う。
「頼綱、今なんて……?」
「キミはシャンパンの香りを嗅いだ途端倒れたんだよ。覚えてない?」
うそ……。
全然覚えてないっ!
「頼綱、ごめんっ! 私たちご飯、食べ損ねちゃったよね!?」
あーん、残念!と眉根を寄せて言ったら、瞳を見開かれてしまった。
「………花々里。気にするのはそこなのかい?」
溜め息混じりに言われて、
「知らない間にホテルの部屋に連れ込まれて、ベッドで目が覚めたんだよ、キミは。――気を失っている間に色々されてるかもしれない、とか思わないの?」
真剣な目で見つめられた。
店員さんによって、それぞれのボトルからグラスに注がれた感じは、どちらも一緒に見えた。
やや黄色みの強い琥珀色のキラキラした液体に、小さな気泡がぷつぷつと上がる。
頼綱と軽くグラスを合わせて乾杯をして、各々ひとくち口に含んで――。
うん、これこれ。
この甘くてシュワァ~っと弾ける大人の?お味。
美味しいっ。
思わず口元が緩んでしまいそうになるのを必死にこらえてから頼綱に「あの……」と声をかける。
約束のにおいを……。
私の期待に満ちた目を見てクスッと笑った頼綱から、「どうぞ」とグラスを差し出されて、私は恐る恐る鼻を近付けた。
そのくせ思いっきりスーッとにおいを吸い込んで――。
「――あ、れれれ……!?」
***
ありゃ?
ここ……どこ?
とっても高い天井に、羽のついたウサギがキラキラと舞い飛んでいて。
「シャン、デリア?」
ポツリと小声でつぶやいたら、「目、覚めたかい?」って顔を覗き込まれた。
「ひょりつな!?」
ひゃ!という悲鳴と頼綱が混ざって変なことになってしまった。
名前の呼び方に関しては結構厳しそうなイメージの頼綱なのに、何故か今回はスルーしてくれて。
そればかりか、
「身体、起こせるかな?」
っていたわるように聞いてくれるの。
何だろう、これ。
もしかして……目が覚めたつもりでいるけれど、私、まだ夢の中にいるのかしら?
「シャンパンのにおいを嗅いだだけで倒れるとか……一体誰が想像できる? キミは鼻からも飲み食いできる特殊体質か何かなのかい?」
水の入ったグラスを差し出されて、ベッドの上にぼんやりした頭で座ったまま、それを受け取って。
促されるままにひと口飲んでから「え?」と思う。
「頼綱、今なんて……?」
「キミはシャンパンの香りを嗅いだ途端倒れたんだよ。覚えてない?」
うそ……。
全然覚えてないっ!
「頼綱、ごめんっ! 私たちご飯、食べ損ねちゃったよね!?」
あーん、残念!と眉根を寄せて言ったら、瞳を見開かれてしまった。
「………花々里。気にするのはそこなのかい?」
溜め息混じりに言われて、
「知らない間にホテルの部屋に連れ込まれて、ベッドで目が覚めたんだよ、キミは。――気を失っている間に色々されてるかもしれない、とか思わないの?」
真剣な目で見つめられた。
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