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■番外編/『相性がいいみたいなのですっ』
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「修太郎さん、これなのです」
藤原家の玄関先。
金曜の仕事後に日織さんをお迎えに上がったら、白のニットにラベンダー色のマキシスカートをお召しになった日織さんが、にっこり笑って下駄箱前に置かれた大きな袋を指さしていらした。
一升瓶入りの木製化粧箱が2つ入っているようにしか見えないその袋に、僕はあれは本気だったのですね、と思わず脱力する。
「日織、何も2本も持っていかなくても。1本でいいんじゃないの? 修太郎さんも呆れていらっしゃるわ」
そんな日織さんの横。お義母さんが眉根を寄せてオロオロなさって。
その後ろでお義父さんが、
「いいじゃないか、母さん。持って行ったからって全部飲まないといけないというわけじゃなし。修太郎くんの家に置かせてもらっておいて、2人でちびちび飲めばいい」
とおっしゃって。
それはそうだな、と僕も思ったのだけれど。
「あら、お父様。先程私に2本で足りるのか?っておっしゃったの、お忘れになられたんですか?」
って嘘でしょう!?
日織さんの言葉にお義父さんが明らかに挙動不審に瞳を揺らしたのを、僕は見逃さなかった。
これは……絶対本気な話だ。
先日お電話でお義父さんからそれとなく日織さんの日本酒への耐性的なお話はお伺いしたけれど。
でも、僕は実際まだ半信半疑で。
だってこの愛らしい日織さんが……。
日本酒に対してだけとはいえ、〝ザルになる〟とか……誰が信じられる?
***
結局すったもんだありつつもマンションに持ち帰ってきてしまった、木製の化粧箱入りの、くだんの一升瓶2本。
1本は先日日織さんとの話に上がった、「獺祭」の純米大吟醸磨き2割3分。
もう1本は同じく市内の蔵元の、「金雀飛翔」の純米大吟醸4割。
獺祭は想定の範囲内だったけれど、金雀には正直驚いてしまった。
「日織さん、金雀なんて知ってらしたんですね」
市内に蔵元を構える地酒でメジャーなものは、「五橋」、「金冠黒松」、「雁木」あたりで、「金雀」はどちらかというと地元の店でも余り見かけないお酒だ。
「以前、お父様がお知り合いの方からいただいたんです。少し小耳に挟んだんですが、ちょっとレアなお酒なんですよね?」
この口ぶりから察するに、獺祭と違って「お好きだから」持っていらしたわけではなく、「珍しいから」僕に飲ませてあげようと思ってくださったのかな?と思いいたる。
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「日織、何も2本も持っていかなくても。1本でいいんじゃないの? 修太郎さんも呆れていらっしゃるわ」
そんな日織さんの横。お義母さんが眉根を寄せてオロオロなさって。
その後ろでお義父さんが、
「いいじゃないか、母さん。持って行ったからって全部飲まないといけないというわけじゃなし。修太郎くんの家に置かせてもらっておいて、2人でちびちび飲めばいい」
とおっしゃって。
それはそうだな、と僕も思ったのだけれど。
「あら、お父様。先程私に2本で足りるのか?っておっしゃったの、お忘れになられたんですか?」
って嘘でしょう!?
日織さんの言葉にお義父さんが明らかに挙動不審に瞳を揺らしたのを、僕は見逃さなかった。
これは……絶対本気な話だ。
先日お電話でお義父さんからそれとなく日織さんの日本酒への耐性的なお話はお伺いしたけれど。
でも、僕は実際まだ半信半疑で。
だってこの愛らしい日織さんが……。
日本酒に対してだけとはいえ、〝ザルになる〟とか……誰が信じられる?
***
結局すったもんだありつつもマンションに持ち帰ってきてしまった、木製の化粧箱入りの、くだんの一升瓶2本。
1本は先日日織さんとの話に上がった、「獺祭」の純米大吟醸磨き2割3分。
もう1本は同じく市内の蔵元の、「金雀飛翔」の純米大吟醸4割。
獺祭は想定の範囲内だったけれど、金雀には正直驚いてしまった。
「日織さん、金雀なんて知ってらしたんですね」
市内に蔵元を構える地酒でメジャーなものは、「五橋」、「金冠黒松」、「雁木」あたりで、「金雀」はどちらかというと地元の店でも余り見かけないお酒だ。
「以前、お父様がお知り合いの方からいただいたんです。少し小耳に挟んだんですが、ちょっとレアなお酒なんですよね?」
この口ぶりから察するに、獺祭と違って「お好きだから」持っていらしたわけではなく、「珍しいから」僕に飲ませてあげようと思ってくださったのかな?と思いいたる。
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