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第96話 笑顔
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祭を終えてクリスは賢者に呼ばれている。
旅立つ前に賢者との訓練は貴重な時間だ。
そして賢者の部屋にマリアも現れた。
「賢者様、宜しくお願いします!」
クリスは真面目に指導を受けようと心を入れ直した。
だが予想外の展開になってしまい動揺するとは思いもしない。
「よし、お前達よく来たね」
賢者は笑顔で二人を迎えている。
城の生活と料理に飽きており二人の訓練を手伝えると聞いて歓喜していたのだ。
「私も全力で指導しよう!」
そしてマリアが徐に口を開く。
今までの訓練も楽しかったが今回の内容が気になっていた。
「あの…
クリスと何をすれば?」
賢者はニヤリと笑みを浮かべた。
しかし、クリスはその笑みに嫌な予感がしている。
「まずはこの前、観察をしたね
次のステップは触れることだよ」
「へ?」
クリスは何するのか緊張で汗をかいてきた。
女性経験が少ないため焦っている。
「そうだね、
まずはお互いの手を握るんだ」
クリスは一瞬拍子抜けしているが、
勿論、賢者がそれだけで許すはずがない。
「ほら、早く繋ぎなさい」
改めて意識してしまうと恥ずかしいが、
お互いにゆっくりと手を繋いでいく。
「何やってるのさ、恋人繋ぎだよ」
「はい?」
マリアも賢者の言葉に驚いている…
お互いに指を絡めていくと二人の心も重なり合っていく。
「は、恥ずかしいよ…
クリス…」
見られている状況は恥ずかしいものがある。
賢者は二人を見て心から楽しんでいた。
「次はマリア、
クリスのどこに触れたい?」
「へ?」
クリスは賢者の予想外の言葉に驚愕する。
まさかマリアが触れたい場所を触らせるとは思いもしない。
「……………」
「聞こえないぞ、マリア」
マリアは恥ずかしさに顔が赤くなっていた。
言葉にするのが恥ずかしすぎて死にそうなのだ。
「………うで」
「ほう、では触りなさい」
クリスは緊張でおかしくなりそうだった。
マリアから触れられて嬉しくない訳がない。
「ク、クリス…」
マリアの感情が昂ぶっているのを賢者が見逃さない。
だがその声は優しさに溢れている。
「マリア…
お前の好きなようにしなさい」
するとマリアはクリスの腕に自分の腕を絡めたのだ。
咄嗟の行動にクリスは驚き、更に絡まる腕からマリアの体温を感じて心臓の鼓動が高鳴ってしまう。
「ま、マリアさん」
マリアは美しく綺麗な笑顔を見せた。
その瞬間、クリスは何も考えられなくなってしまう。
そんな綺麗な笑顔で返事をされたら何もかも許すだろう。
「お前達…
良かったじゃないかい」
「賢者様…」
マリアは急に甘えたように絡めた腕に力を込めた。
クリスは、それが嬉しくて胸が一杯になってしまう。
「たまに甘えても良いじゃないか、
クリスは嬉しい顔してるよ」
「へ?」
するとじっくりマリアがクリスの顔を観察する。
今度はクリスが顔を赤くする番だ。
「け、賢者様!」
「はははは、
でも、お前死ぬほど嬉しそうだぞ!」
そ、そうですよ…
どうせ、俺は死ぬほど嬉しいですよ!
「二人で愛を育みなさい…
ゆっくりで良いんだよ」
賢者はそう言うと優しくクリス達に微笑む。
王都を出てしまうと、特訓も出来なくなる。
賢者は二人に大切な事を伝えたかったのかもしれない。
クリスはそのように考えていた。
そして賢者との秘密の特訓は終わりを迎えたのだった…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
レガードの屋敷の一階では今日も明るく飛び跳ねるリリスの姿がある。
「サリーおばちゃーん」
リリスはサリーの胸へ飛び込んだ。
ベルは微笑ましく日常の光景を見ている。
そして何故サリーがその呼び方で呼ばれているか、それは一年前に遡る。
サリーは目が鋭い美人である。
笑っていない顔は人によれば怖いと感じてしまう。
そのため小さいリリスからすると怒っていると感じたのかもしれない。
サリーの顔を見ると、リリスはいつも泣き出していたのだ。
サリーは飯が喉を通らない程にショックを受けていた。
妹に似た雰囲気を持つ子供から拒絶されるのは胸が痛い。
そんな時にユーリが悪ふざけをしたのである。
するとリリスは、その呼び方をお気に召したのか一切泣かなくなった。
サリーにとっては複雑な心境だが今はその呼び方が定着してしまったのだ。
「サリー、サリー、サリーおばちゃーん」
サリーは変な歌を口ずさむリリスを見ても一切怒らない。
毎日笑顔で撫でている姿を見てベルは感心していたのだった。
ようやく城から帰ってきた人物がいる。
それはクリスではなくアリスだ。
今日も朝から城の訓練場に呼ばれ疲れ果てていた。
「アリス~」
リリスがアリスを出迎える。
いつの間にかアリスは呼び捨てになっていた。
「姉の威厳が…」
アリスは危機感を感じている…
このまま決して許してはいけないと心から誓ったのだ。
魔王軍を退けてルミナスにもようやく平和が訪れた。
それぞれが失った日常を取り戻している。
今日もルミナスは、笑顔で満ち溢れていた…
旅立つ前に賢者との訓練は貴重な時間だ。
そして賢者の部屋にマリアも現れた。
「賢者様、宜しくお願いします!」
クリスは真面目に指導を受けようと心を入れ直した。
だが予想外の展開になってしまい動揺するとは思いもしない。
「よし、お前達よく来たね」
賢者は笑顔で二人を迎えている。
城の生活と料理に飽きており二人の訓練を手伝えると聞いて歓喜していたのだ。
「私も全力で指導しよう!」
そしてマリアが徐に口を開く。
今までの訓練も楽しかったが今回の内容が気になっていた。
「あの…
クリスと何をすれば?」
賢者はニヤリと笑みを浮かべた。
しかし、クリスはその笑みに嫌な予感がしている。
「まずはこの前、観察をしたね
次のステップは触れることだよ」
「へ?」
クリスは何するのか緊張で汗をかいてきた。
女性経験が少ないため焦っている。
「そうだね、
まずはお互いの手を握るんだ」
クリスは一瞬拍子抜けしているが、
勿論、賢者がそれだけで許すはずがない。
「ほら、早く繋ぎなさい」
改めて意識してしまうと恥ずかしいが、
お互いにゆっくりと手を繋いでいく。
「何やってるのさ、恋人繋ぎだよ」
「はい?」
マリアも賢者の言葉に驚いている…
お互いに指を絡めていくと二人の心も重なり合っていく。
「は、恥ずかしいよ…
クリス…」
見られている状況は恥ずかしいものがある。
賢者は二人を見て心から楽しんでいた。
「次はマリア、
クリスのどこに触れたい?」
「へ?」
クリスは賢者の予想外の言葉に驚愕する。
まさかマリアが触れたい場所を触らせるとは思いもしない。
「……………」
「聞こえないぞ、マリア」
マリアは恥ずかしさに顔が赤くなっていた。
言葉にするのが恥ずかしすぎて死にそうなのだ。
「………うで」
「ほう、では触りなさい」
クリスは緊張でおかしくなりそうだった。
マリアから触れられて嬉しくない訳がない。
「ク、クリス…」
マリアの感情が昂ぶっているのを賢者が見逃さない。
だがその声は優しさに溢れている。
「マリア…
お前の好きなようにしなさい」
するとマリアはクリスの腕に自分の腕を絡めたのだ。
咄嗟の行動にクリスは驚き、更に絡まる腕からマリアの体温を感じて心臓の鼓動が高鳴ってしまう。
「ま、マリアさん」
マリアは美しく綺麗な笑顔を見せた。
その瞬間、クリスは何も考えられなくなってしまう。
そんな綺麗な笑顔で返事をされたら何もかも許すだろう。
「お前達…
良かったじゃないかい」
「賢者様…」
マリアは急に甘えたように絡めた腕に力を込めた。
クリスは、それが嬉しくて胸が一杯になってしまう。
「たまに甘えても良いじゃないか、
クリスは嬉しい顔してるよ」
「へ?」
するとじっくりマリアがクリスの顔を観察する。
今度はクリスが顔を赤くする番だ。
「け、賢者様!」
「はははは、
でも、お前死ぬほど嬉しそうだぞ!」
そ、そうですよ…
どうせ、俺は死ぬほど嬉しいですよ!
「二人で愛を育みなさい…
ゆっくりで良いんだよ」
賢者はそう言うと優しくクリス達に微笑む。
王都を出てしまうと、特訓も出来なくなる。
賢者は二人に大切な事を伝えたかったのかもしれない。
クリスはそのように考えていた。
そして賢者との秘密の特訓は終わりを迎えたのだった…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
レガードの屋敷の一階では今日も明るく飛び跳ねるリリスの姿がある。
「サリーおばちゃーん」
リリスはサリーの胸へ飛び込んだ。
ベルは微笑ましく日常の光景を見ている。
そして何故サリーがその呼び方で呼ばれているか、それは一年前に遡る。
サリーは目が鋭い美人である。
笑っていない顔は人によれば怖いと感じてしまう。
そのため小さいリリスからすると怒っていると感じたのかもしれない。
サリーの顔を見ると、リリスはいつも泣き出していたのだ。
サリーは飯が喉を通らない程にショックを受けていた。
妹に似た雰囲気を持つ子供から拒絶されるのは胸が痛い。
そんな時にユーリが悪ふざけをしたのである。
するとリリスは、その呼び方をお気に召したのか一切泣かなくなった。
サリーにとっては複雑な心境だが今はその呼び方が定着してしまったのだ。
「サリー、サリー、サリーおばちゃーん」
サリーは変な歌を口ずさむリリスを見ても一切怒らない。
毎日笑顔で撫でている姿を見てベルは感心していたのだった。
ようやく城から帰ってきた人物がいる。
それはクリスではなくアリスだ。
今日も朝から城の訓練場に呼ばれ疲れ果てていた。
「アリス~」
リリスがアリスを出迎える。
いつの間にかアリスは呼び捨てになっていた。
「姉の威厳が…」
アリスは危機感を感じている…
このまま決して許してはいけないと心から誓ったのだ。
魔王軍を退けてルミナスにもようやく平和が訪れた。
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