ヒューマナイズ・ラブロマンス

武州人也

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契りを交わす

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「それで、君はどうしたい?」
「どうって……それは考えたことなかった」
「はは、ごめんね。つい意地の悪い質問をしてしまったよ。それもこれも薫、君が可愛らしいからさ」
 言いながら、玄冬は薫の前髪を指でいた。
「それにしても……」
 玄冬が、急に薫に接近した。お互いの吐息がかかる距離に踏み込まれた薫は、驚愕の色を顔に浮かべた。
「な、何だよ急に」
 薫は背後の壁に手をついた。薫の位置は、丁度壁と玄冬の間に挟まれるようになっていて、逃げ場のない閉塞感に襲われる。
「本当に、君は実に分かりやすい……」
 玄冬は突然、薫の股間をまさぐり始めた。
「おい、ちょっ……」
「ああ、ごめん。これで気がついたかな。君は僕の方を見てはいつもこうして男性器を勃起させている……」
 玄冬に指摘されて初めて気がついたが、薫が彼のことを考えている時、いつも股間の辺りが張り詰めるような感覚があった。
「僕が君のことを分かりやすい、と言ったのはこういうことだよ」
 玄冬の目が、妖しい光を帯びたような、そんな気がした。まるで、獲物を前にした狼のような……
「それで、改めて聞こうか。僕と恋仲になって、君はどうしたい?」
 玄冬の口から出た、恋仲、という単語に、薫は気恥ずかしくなって頬を朱色に染めた。
「僕の体を好きにしたいとか、そういう欲求はないのかい?」
「俺お前の言ってる意味が分かんねぇ……」
 急に、玄冬が自分とはまるで別の世界の住人なのではないかと思えてきた。彼の考えていることと、自分が予想しうることに、著しく乖離が生じていることを認めざるを得ない。 
「そうか……じゃあ僕がじっくり教えてあげるよ」
 玄冬は薫の前に跪くと、薫の下半身を裸にさせた。露出した一物は、皮を被っていたが、上反りになって天を向いている。その怒張を、玄冬の繊指が絡め取って扱き始めた。
「あっ……何だ……これ……?」
 感じたことのない刺激に、薫は甚だ当惑した。その感覚の正体は知らないが、気持ちがいい、ということだけは、今の薫にも分かっていた。
「もしかして、まだ出したことない?」
「出すって……何を……?」
「ああ、その様子じゃ知らないんだね」
 玄冬の手の動きが徐々に早まる。薫は、下半身にこみ上げてくる何かを感じていたが、その正体を薫はまだ知らない。
「あっ、ヤバい何か出そう……」
「いいよ。このまま出しちゃえ」
 とうとう、薫は耐えきれなくなった。薫の体内に貯蔵されていた配偶子は、玄冬の執拗な攻撃に屈した肉棒によって吐き出され、初めて外界に放たれた。噴出したそれは玄冬の顔面に降りかかり、その麗しい玉顔ぎょくがんを汚した。
 薫は披露のあまり、力なく床に座り込んでしまった。玄冬は顔についたそれを指で掬って舐め取った。その様子は、何処となく艶めかしいものであった。
「そんなの舐めて大丈夫なのかよ……」
「まぁ、あんまり美味しいものではないね……」
 玄冬は引き出しからタオルを取り出すと、顔面に付着した液を拭い取った。
「まぁ、今日はこんな所かな」
 玄冬の様子は、如何にも満足げであった。
「俺の体、どうしちまったんだ……玄冬なら知ってるんだろ?」
 一方の薫は、未だ先程の自分の体の反応について分かりかねていた。自分の体が自分のものでないような、不思議であり恐ろしくもある感覚を抱いていた。
「今のは射精という生理現象さ。ヒトの男性が性的興奮の絶頂に至った時に起こるものだ。有性生殖を行う際に必要な精子が放出される。この精子がヒトの女性の卵子と結合して受精卵になり、それが胎児となる訳だね。尤も僕はヒトの女性ではないから、繁殖行動にはならないのだけれど」
 何だか漢語調の堅い説明だが、射精、精子といった単語は保健の授業で聞いたことがあったのを思い出した。これは本来は人間の男女が子孫を残す為のものらしい。
「でも、気持ちよかっただろう?」
「ああ……確かに」
 それは否定しない。確かにあの時、薫は快感の坩堝の中にいた。
「次はもっと気持ちいいことをしよう。明日でも明後日でも、気が向いたらうちに来なよ」
 それを聞いて、薫はまたしてもどきりとした。これよりももっと気持ちいいこととは一体何なのだろうか。知ってしまったら引き返せないような気もするが、湧出した好奇心も愈々いよいよ以て抑え難かった。
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