上 下
5 / 13

契りを交わす

しおりを挟む
「それで、君はどうしたい?」
「どうって……それは考えたことなかった」
「はは、ごめんね。つい意地の悪い質問をしてしまったよ。それもこれも薫、君が可愛らしいからさ」
 言いながら、玄冬は薫の前髪を指でいた。
「それにしても……」
 玄冬が、急に薫に接近した。お互いの吐息がかかる距離に踏み込まれた薫は、驚愕の色を顔に浮かべた。
「な、何だよ急に」
 薫は背後の壁に手をついた。薫の位置は、丁度壁と玄冬の間に挟まれるようになっていて、逃げ場のない閉塞感に襲われる。
「本当に、君は実に分かりやすい……」
 玄冬は突然、薫の股間をまさぐり始めた。
「おい、ちょっ……」
「ああ、ごめん。これで気がついたかな。君は僕の方を見てはいつもこうして男性器を勃起させている……」
 玄冬に指摘されて初めて気がついたが、薫が彼のことを考えている時、いつも股間の辺りが張り詰めるような感覚があった。
「僕が君のことを分かりやすい、と言ったのはこういうことだよ」
 玄冬の目が、妖しい光を帯びたような、そんな気がした。まるで、獲物を前にした狼のような……
「それで、改めて聞こうか。僕と恋仲になって、君はどうしたい?」
 玄冬の口から出た、恋仲、という単語に、薫は気恥ずかしくなって頬を朱色に染めた。
「僕の体を好きにしたいとか、そういう欲求はないのかい?」
「俺お前の言ってる意味が分かんねぇ……」
 急に、玄冬が自分とはまるで別の世界の住人なのではないかと思えてきた。彼の考えていることと、自分が予想しうることに、著しく乖離が生じていることを認めざるを得ない。 
「そうか……じゃあ僕がじっくり教えてあげるよ」
 玄冬は薫の前に跪くと、薫の下半身を裸にさせた。露出した一物は、皮を被っていたが、上反りになって天を向いている。その怒張を、玄冬の繊指が絡め取って扱き始めた。
「あっ……何だ……これ……?」
 感じたことのない刺激に、薫は甚だ当惑した。その感覚の正体は知らないが、気持ちがいい、ということだけは、今の薫にも分かっていた。
「もしかして、まだ出したことない?」
「出すって……何を……?」
「ああ、その様子じゃ知らないんだね」
 玄冬の手の動きが徐々に早まる。薫は、下半身にこみ上げてくる何かを感じていたが、その正体を薫はまだ知らない。
「あっ、ヤバい何か出そう……」
「いいよ。このまま出しちゃえ」
 とうとう、薫は耐えきれなくなった。薫の体内に貯蔵されていた配偶子は、玄冬の執拗な攻撃に屈した肉棒によって吐き出され、初めて外界に放たれた。噴出したそれは玄冬の顔面に降りかかり、その麗しい玉顔ぎょくがんを汚した。
 薫は披露のあまり、力なく床に座り込んでしまった。玄冬は顔についたそれを指で掬って舐め取った。その様子は、何処となく艶めかしいものであった。
「そんなの舐めて大丈夫なのかよ……」
「まぁ、あんまり美味しいものではないね……」
 玄冬は引き出しからタオルを取り出すと、顔面に付着した液を拭い取った。
「まぁ、今日はこんな所かな」
 玄冬の様子は、如何にも満足げであった。
「俺の体、どうしちまったんだ……玄冬なら知ってるんだろ?」
 一方の薫は、未だ先程の自分の体の反応について分かりかねていた。自分の体が自分のものでないような、不思議であり恐ろしくもある感覚を抱いていた。
「今のは射精という生理現象さ。ヒトの男性が性的興奮の絶頂に至った時に起こるものだ。有性生殖を行う際に必要な精子が放出される。この精子がヒトの女性の卵子と結合して受精卵になり、それが胎児となる訳だね。尤も僕はヒトの女性ではないから、繁殖行動にはならないのだけれど」
 何だか漢語調の堅い説明だが、射精、精子といった単語は保健の授業で聞いたことがあったのを思い出した。これは本来は人間の男女が子孫を残す為のものらしい。
「でも、気持ちよかっただろう?」
「ああ……確かに」
 それは否定しない。確かにあの時、薫は快感の坩堝の中にいた。
「次はもっと気持ちいいことをしよう。明日でも明後日でも、気が向いたらうちに来なよ」
 それを聞いて、薫はまたしてもどきりとした。これよりももっと気持ちいいこととは一体何なのだろうか。知ってしまったら引き返せないような気もするが、湧出した好奇心も愈々いよいよ以て抑え難かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫乱少年の性活

こうはらみしろ
BL
『ボクはあの日、淫乱になった…』 ある日、格は兄の淫らな行為を見てしまう。 そこから格の人生は大きく変わっていく──

僕の調教監禁生活。

まぐろ
BL
ごく普通の中学生、鈴谷悠佳(すずやはるか)。 ある日、見ず知らずのお兄さんに誘拐されてしまう! ※♡喘ぎ注意です 若干気持ち悪い描写(痛々しい?)あるかもです。

山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜

ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。 高校生×中学生。 1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。

身体検査が恥ずかしすぎる

Sion ショタもの書きさん
BL
桜の咲く季節。4月となり、陽物男子中学校は盛大な入学式を行った。俺はクラスの振り分けも終わり、このまま何事もなく学校生活が始まるのだと思っていた。 しかし入学式の一週間後、この学校では新入生の身体検査を行う。内容はとてもじゃないけど言うことはできない。俺はその検査で、とんでもない目にあった。 ※注意:エロです

鍵っ子少年のはじめて

Ruon
BL
5時45分頃、塾帰りのナツキは見知らぬ男の人に後をつけられていると知らずに帰宅した瞬間、家に押し入られてしまう。 両親の帰ってくるまで二時間、欲塗れの男にナツキは身体をいやらしく開発されてしまう。 何も知らない少年は、玩具で肉棒で、いやらしく堕ちていく─────。 ※本作品は同人誌『鍵っ子少年のはじめて』のサンプル部分となります。

男色官能小説短編集

明治通りの民
BL
男色官能小説の短編集です。

両腕のない義弟との性事情

papporopueeee
BL
父子家庭で育ったケンと、母子家庭で育ったカオル。 親の再婚によりふたりは義兄弟となったが、 交通事故により両親とカオルの両腕が失われてしまう。 ケンは両腕を失ったカオルの世話を始めるが、 思春期であるカオルは性介助を求めていて……。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...