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告白せずにはいられなかった
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それからも、薫にとって悩ましい毎日が続いた。
玄冬を見る度に、煩悶が薫の胸を締め上げた。気づけば彼のことばかりを考えている自分がそこにいる。好きだった位置情報利用アプリゲームにもログインが途絶えてしまったし、トレーディングカードの新しい拡張パック発売日のことさえも忘れてしまっていた。同じカードを収集している玄冬に発売日の話をされて、やっと思い出した程だ。
トレーディングカードの拡張パックを買った後、その日も薫は玄冬の家に誘われて赴いた。玄冬の家には、いつも玄冬しかいない。両親が共働きであるためだという。
「なぁ」
「ん?」
意を決した薫は、とうとう玄冬にあることを話すことにした。
「お前は頭もいいし、それに良い奴だ。俺が変なこと言っても馬鹿にしたり言いふらしたりしないって、俺信じてるからな。」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。分かった。約束しよう」
それを聞いた薫は、ごくり、と、自らの唾を飲み込んだ。その肩は強張り、顔の筋肉も硬直していた。そして一拍置いて、口を開いた。
「俺、滝川と出会ってから、ずっと胸がどきどきするというか……何というか……兎に角変なんだ。お前と遊ぶのは楽しいんだけどさ……それで、」
「それで……?」
「きっと俺、お前のことが好きだ。付き合ってほしい」
言ってしまった。とうとう言ってしまった。もう後戻りは出来ない。薫はルビコン川を渡ったのである。
「ごめんな……やっぱ変だよな……俺もお前も男だし」
薫が自身の心情に下した判定は、それは恋慕の情である。ということだった。
「いや、嬉しいよ。僕も君のことが好きだ」
「え……」
「信じられないって顔してるけど、僕は本気だから」
それを聞いて、薫は一瞬、耳を疑った。けれども玄冬の返答が偽りでないことが分かり、薫の目は、歓喜のあまりに俄かに潤んだ。勇気を出して踏み出した一歩は、見事に報われた。
「それにしても、やっぱりとは思ったよ。だって本条くん、いや、薫ときたら分かりやすいんだもの」
「何だよそれ。まるで俺が単純な奴みたいじゃんか」
薫はそう返したものの、その声色に非難の色はなく、寧ろ晴れやかでさえあった。思い返してみれば、あれだけ煩悶していたのだから、聡い玄冬に察せぬはずもない。そう薫は納得した
「でも、玄冬は俺なんかでいいのか? だってその……俺なんか背も低いし、玄冬みたいなイケメンでもないし、他に特別取り柄があるわけでも……」
「それは秘密。第一、人を好きになるのにたいそうな理由なんて必要ないんじゃないかな」
玄冬は自分の唇に人差し指を当てて悪戯っぽく言った。
「むー、そう言われると増々気になる……」
玄冬は良い奴には違いないが、所々で煙に巻くようなことがある。だがそれ故に、何処かミステリアスな雰囲気があって、より一層彼を深追いさせられてしまうのだ。
「それに、そんなに卑屈になることはないと思うよ。自分に自信がないというのなら、俺は誰もが羨む美男子に愛されているんだ、ということを誇りにすればいい」
「誰もが羨む美男子って、それ自分で言うかよ」
玄冬の自画自賛に可笑しみを感じて、今度は薫がくすりと笑った。
「はは、確かに自分で言うのは甚だ可笑しい」
玄冬もつられたように笑った。
玄冬を見る度に、煩悶が薫の胸を締め上げた。気づけば彼のことばかりを考えている自分がそこにいる。好きだった位置情報利用アプリゲームにもログインが途絶えてしまったし、トレーディングカードの新しい拡張パック発売日のことさえも忘れてしまっていた。同じカードを収集している玄冬に発売日の話をされて、やっと思い出した程だ。
トレーディングカードの拡張パックを買った後、その日も薫は玄冬の家に誘われて赴いた。玄冬の家には、いつも玄冬しかいない。両親が共働きであるためだという。
「なぁ」
「ん?」
意を決した薫は、とうとう玄冬にあることを話すことにした。
「お前は頭もいいし、それに良い奴だ。俺が変なこと言っても馬鹿にしたり言いふらしたりしないって、俺信じてるからな。」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。分かった。約束しよう」
それを聞いた薫は、ごくり、と、自らの唾を飲み込んだ。その肩は強張り、顔の筋肉も硬直していた。そして一拍置いて、口を開いた。
「俺、滝川と出会ってから、ずっと胸がどきどきするというか……何というか……兎に角変なんだ。お前と遊ぶのは楽しいんだけどさ……それで、」
「それで……?」
「きっと俺、お前のことが好きだ。付き合ってほしい」
言ってしまった。とうとう言ってしまった。もう後戻りは出来ない。薫はルビコン川を渡ったのである。
「ごめんな……やっぱ変だよな……俺もお前も男だし」
薫が自身の心情に下した判定は、それは恋慕の情である。ということだった。
「いや、嬉しいよ。僕も君のことが好きだ」
「え……」
「信じられないって顔してるけど、僕は本気だから」
それを聞いて、薫は一瞬、耳を疑った。けれども玄冬の返答が偽りでないことが分かり、薫の目は、歓喜のあまりに俄かに潤んだ。勇気を出して踏み出した一歩は、見事に報われた。
「それにしても、やっぱりとは思ったよ。だって本条くん、いや、薫ときたら分かりやすいんだもの」
「何だよそれ。まるで俺が単純な奴みたいじゃんか」
薫はそう返したものの、その声色に非難の色はなく、寧ろ晴れやかでさえあった。思い返してみれば、あれだけ煩悶していたのだから、聡い玄冬に察せぬはずもない。そう薫は納得した
「でも、玄冬は俺なんかでいいのか? だってその……俺なんか背も低いし、玄冬みたいなイケメンでもないし、他に特別取り柄があるわけでも……」
「それは秘密。第一、人を好きになるのにたいそうな理由なんて必要ないんじゃないかな」
玄冬は自分の唇に人差し指を当てて悪戯っぽく言った。
「むー、そう言われると増々気になる……」
玄冬は良い奴には違いないが、所々で煙に巻くようなことがある。だがそれ故に、何処かミステリアスな雰囲気があって、より一層彼を深追いさせられてしまうのだ。
「それに、そんなに卑屈になることはないと思うよ。自分に自信がないというのなら、俺は誰もが羨む美男子に愛されているんだ、ということを誇りにすればいい」
「誰もが羨む美男子って、それ自分で言うかよ」
玄冬の自画自賛に可笑しみを感じて、今度は薫がくすりと笑った。
「はは、確かに自分で言うのは甚だ可笑しい」
玄冬もつられたように笑った。
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