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二章【トモダチ】
2-7 ともだち
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小さな家。
屋根は何度か壊れたのであろう、何枚もの板で固定されている。
中にはテーブルだとか食器だとか、生活に必要な物しかない。
無駄な物は何もないーーと言うべきだろうか。
アイムとフィレアが十年間共に過ごした場所。
リオがこの家に来て三日目になる。特にまだ、何も行動はしていない。
ここ数日‥‥カシルどころかレイラとも会っていない。
レイラに宿屋を出たことを言っていないからであろう。
宿屋にリオがいないので、今頃レイラは怒っているだろうか?
「フィレアさん、私少し、街の方に行ってきます」
先に朝食を終えたリオが言って、
「買い物にでも行くの?」
と、フィレアがスープを飲みながら聞くと、
「まあ、そんな感じです」
リオは困った顔をして笑う。
「カシルに見つからないようにね。一人じゃ危ないから」
「はい、気をつけますね」
リオは頷きながら、
(と言っても、何度も私、一人でカシルさんに会ったことあるんだけどな)
リオはそう思いつつ、食べ終わった皿を片付けた。
「リオや」
すると、アイムがリオを呼び止め、
「行ってらっしゃい」
なんて言ってきて。
リオはむず痒さを感じ、へらっと笑う。
◆◆◆◆◆
(さて。フィレアさんにはただの買い物だとか、気をつけるって言ったけど‥‥)
リオは今からレイラに会うつもりだった。
会うーーと言うより、様子を見に行くと言った方が適切だろうか。
(まだ、カシルさんはレイラちゃんの傍にいるのかな?カシルさんは本当に、ただのレイラちゃんの護衛なのかな)
リオはそうであればいいと願う。
そうでなければ、レイラはとても危険な状況にいるのかもしれない。
(わからないけど‥‥二人が一緒にいる所を私はほんの少ししか見たことないけど‥‥)
ーーレイラちゃんは‥‥。
「リオくーん」
「!?」
リオの思考は聞き覚えのある明るい声に遮られる。
「ハトネ‥‥さん?」
先日、行方をくらませたハトネが目の前にいて、リオは驚いた。
「ごめんねリオ君‥‥何も言わず、黙って行っちゃって‥‥」
ハトネがリオに頭を下げるので、
「ハトネさん‥‥!一体どこにっ‥‥じゃなくて、あっ、謝るのは私の方です!私、シュイアさんがいなくなったことしか考えていなくて!せっかくハトネさんが心配してくれていたのに、あなたの気持ちを考えないで‥‥ごめんなさい。ハトネさんが呆れて行ってしまったのは仕方ないですよ」
リオはそう言って、同じように頭を下げる。
「え?呆れる?私がリオ君のことを?」
ハトネは困った顔でリオを見て、
「違うよリオ君。私そんなことでいなくなったんじゃないよ」
ハトネは可笑しそうに笑った。
リオは顔を上げ、目を丸くしながら彼女を見る。
「私がリオ君に呆れるわけないじゃない」
「え?じゃあ‥‥?」
リオが不思議そうにハトネを見ると、彼女は黙りこんでしまって。
「私が‥‥私がいても、リオ君楽しそうじゃなかったから。一緒にいるの迷惑かな‥‥って思って」
ハトネは消え入りそうな声を出し、そう言った。
リオの予想とは全く違う答えだった。
リオに呆れてどこかへ行ったのではなかったようで‥‥
「そっ、そんなことないです!迷惑なんかじゃないです」
リオはそう言って、ハトネに笑顔を向ける。
「ほっ、本当?本当に?良かった‥‥まだこの国にリオ君いるかなって思って戻って来たの。良かった‥‥」
ハトネは本当に嬉しそうで、リオは言葉が出なかった。
この前までの自分は、どうして彼女の気持ちを考えてやれなかったんだろうと。
自分とシュイアのことしか考えていなかった以前の自分‥‥でも、今は。
「じゃあ、これからは一緒にいていいの?」
ハトネがそう聞いてきて、リオはハトネを見る。
「じゃあ、今度こそ!これからずーっとリオ君の傍にいるね」
ハトネはそう言って軽くリオに抱きつき、頬に口付けをした。
「わっ!びっくりしたー」
ハトネがいきなり抱きついてきたのでリオは驚き、そして自分の頬を触りながら、
「今のはなんですか?」
と、不思議そうに首を傾げて尋ねる。
「今のって?」
ハトネは首を傾げた。
「私のほっぺに口つけましたよね?何かついていましたか?」
「キスのこと?」
「きす?」
リオは更に首を傾げる。
「リオ君知らないの?キスはね、今みたいに好きな人にするものなのよ。まあ‥‥本当は口にだけど‥‥それはまた、追い追い‥‥ふふっ!」
と、ハトネは一人照れ臭そうにした。
「くち‥‥」
リオはパーティ会場でのレイラとカシルのやりとりを思い出す。
「あっ、ねえリオ君。聞きたいことがあるんだけど。この国の王女様、レイラ王女に新しくついた護衛の名前‥‥カシ‥‥」
ハトネが聞こうとしたが、急にリオはどこかに向かって走り出してしまって‥‥
「ちょっ、リオ君ーー!?」
ハトネは呆気にとられた。
◆◆◆◆◆
(あぁああ‥‥あれは、キスってやつだったんだ?!)
リオはあれこれ考えて走り、いつの間にかフォード城の城門前で立ち止まっていた‥‥
(レイラちゃんは、やっぱりカシルさんのこと‥‥でも‥‥二人はまだ出会ったばかりで‥‥)
ーー出会ったばかりで、どうして。
(でも、皆そうだ。出会ったばかりの人と、皆すぐに仲良くなる)
レイラも、ハトネも、フィレアも、皆そうだ。
(出会ったばかりだとかそんなのは‥‥関係ないのかな)
この六年間、リオはシュイア以外の誰とも関わったことがなかったから。
(好きってなんだろ?友達ってなんだろ?ただ‥‥)
リオは己の中に芽生えた感情に戸惑いつつ、
(ただ、私は‥‥なんだかよく分からないけど、レイラちゃんを守ってあげたいと思う。カシルさんと一緒にいるのは危険かもしれないから‥‥だから。もしかして、それが‥‥友達?)
リオはその答えに辿り着き、口をぽかんと開けた。
「あ、リオ!」
「ーー!」
リオは知っているその声に振り返る。そして、
「げっ?!」
と、一言‥‥驚くように言った。
「え!?何よその反応!失礼ね!」
やはりそれは、レイラだった。
まあ、実際のところレイラに会いに来たリオだが、なんの心の準備もしていないのにいきなり彼女が目の前に現れたので、リオは戸惑う。
それに‥‥
やはり、レイラの傍にはカシルがいた。
レイラといる時のカシルは本当にリオのことを知らないフリをする。
今もそっぽを向いていた。
「リオ!宿屋を数日前に出たんですってね!この数日、私どれほどあなたを捜したことか‥‥!」
レイラは頬を膨らませ、やはりとても怒っていて、
「ごっ、ごめん」
「私にぐらい報告してよね!で?今はどこにいるの?家あるの?」
そう聞かれて、リオはただ苦笑いを浮かべた。
(居候させてもらってる身だし、それに、貴族と言うか王女様であるレイラちゃんが来るような場所じゃないし‥‥押し掛けられても嫌だし‥‥)
リオはいろいろ考えて、今の居場所ーーフィレアとアイムの家のことは黙っておくことにする。
「何よ?教えてくれないの?今、どこにい‥‥」
ぎゅっーー。
リオはいきなりレイラの手を取り握った。それに、レイラは目を丸くする。
「なっ、何よ?リオ‥‥」
「レイラちゃん」
リオはレイラの顔をしっかりと見て、笑ってこう言った。
「私は、レイラちゃんと友達になりたいな」
ーーと。
レイラに困った顔をされて、リオは気まずそうに笑う。
「いっ、いきなり何それ?私達は前から友達じゃなかったの?」
「えっ?いや‥‥私、今まで友達なんていなかったから。友達ってなんだろうって思ってて。いろいろ考えて、レイラちゃんとなら友達ってやつになれるかもって思って‥‥わっ、私はいきなり何を言っているんだろう」
リオは照れ臭そうに笑った。
それに、レイラが大きく息を吐き、
「まったく。『なれるかも』じゃなくて、もう友達でしょ?」
レイラは少し怒ったように言うが、内心は驚きと‥‥嬉しさの二つでいっぱいだった。
ようやくリオが、心を開いてくれたように思えたから。
(友達‥‥なんだろう?なんだかすごく嬉しいな。でも、レイラちゃんはカシルさんを好きなのかな?それともカシルさんがレイラちゃんを好きなのかな?)
リオはそんなことを考え、それを確かめたいと思った。だから、
「ごっ‥‥護衛さん」
リオは真っ直ぐにカシルを見て声を掛け、それでやっとカシルはリオを見る。
(‥‥どっ、どうしよう。レイラちゃんと二人きりになってカシルさんから離れた方がいいってもう一回言うべきか‥‥もしくはカシルさんと二人きりで話して目的を聞き出すべきか‥‥)
話し掛けたはいいが、リオの顔色が悪くなった。
決断すると言うのが苦手だからだ。
それになんでカシルに声をかけてしまったんだろうと後悔する。
それでもリオはなんとか言葉を続けた。
「護衛さん‥‥あなたは‥‥」
あなたは何をするつもりですか?
レイラちゃんのことが好きなんですか?
なぜシュイアさんと戦うんですか?
聞きたいことはたくさんあるが、今、一番聞かなければいけないことは彼の目的。
だが、レイラの前でそんなことは聞けないし‥‥カシルが話してくれるわけもない‥‥
「リオ?」
疑問に思ったレイラがリオに声をかける。
「いっ、いえ!やっぱりなんでもありません!」
リオは自分を情けないなと感じ、諦めて俯いた。そこで、
「レイラ様」
さっきまで、何ひとつ言わなかったカシルが口を開く。
「はっ、はい?」
呼ばれたレイラは驚いたように返事をして、
「少々、このこぞーー‥‥レイラ様のご友人と話をしてもいいですか?」
なぜかカシルがそう切り出した。
(あっ。今、小僧って言いそうになりましたね)
リオは口には出さずそう思うが、
(でも、どういうこと?)
まさかカシルの方からそう言ってくるとはーーと、リオは疑問に思う。
「え?‥‥ええ、いいですけど‥‥」
レイラは首を傾げながら、不思議そうにしていた。
せっかく訪れたチャンスだ、リオはレイラを巻き込まないよう、
「レイラちゃん、よくわからないけどたぶんすぐ話終わると思うから。あそこの店でも見てて!あそこで欲しい物があるんだけど、レイラちゃんに選んでほしくて。すぐに行くから」
リオはそう言って、適当に店を指差す。
「そっ、そう?わかったわ。何の話かは知らないけど‥‥邪魔しないようにするわ」
レイラはリオが適当に指差した店に行こうとして、
「ところで、二人は本当に知り合いじゃないの?」
振り返ってそう聞いた。
リオとカシルは無言で頷く。
「そっ」
レイラはそう言って、今度こそ店に向かった。
「ーーそれで?カシルさん。なんでしょうか?」
リオが聞く。
「まあ、お前には何も出来ないとは思うが、聞かせておいてやろう」
「?」
「俺の目的は世界を殺すことだ。この大地に何も残さないようにな」
その言葉をリオは理解できず、頭の中が真っ白になる。
「言うなれば、お前の大好きなシュイア‘さん’は世界を護る側にあって、『世界を生かす者』ーーそう言ったらどうする?」
リオはただ、彼の言葉を聞くことしかできなかった。
世界を殺す者?
世界を生かす者?
意味が、わからない。
屋根は何度か壊れたのであろう、何枚もの板で固定されている。
中にはテーブルだとか食器だとか、生活に必要な物しかない。
無駄な物は何もないーーと言うべきだろうか。
アイムとフィレアが十年間共に過ごした場所。
リオがこの家に来て三日目になる。特にまだ、何も行動はしていない。
ここ数日‥‥カシルどころかレイラとも会っていない。
レイラに宿屋を出たことを言っていないからであろう。
宿屋にリオがいないので、今頃レイラは怒っているだろうか?
「フィレアさん、私少し、街の方に行ってきます」
先に朝食を終えたリオが言って、
「買い物にでも行くの?」
と、フィレアがスープを飲みながら聞くと、
「まあ、そんな感じです」
リオは困った顔をして笑う。
「カシルに見つからないようにね。一人じゃ危ないから」
「はい、気をつけますね」
リオは頷きながら、
(と言っても、何度も私、一人でカシルさんに会ったことあるんだけどな)
リオはそう思いつつ、食べ終わった皿を片付けた。
「リオや」
すると、アイムがリオを呼び止め、
「行ってらっしゃい」
なんて言ってきて。
リオはむず痒さを感じ、へらっと笑う。
◆◆◆◆◆
(さて。フィレアさんにはただの買い物だとか、気をつけるって言ったけど‥‥)
リオは今からレイラに会うつもりだった。
会うーーと言うより、様子を見に行くと言った方が適切だろうか。
(まだ、カシルさんはレイラちゃんの傍にいるのかな?カシルさんは本当に、ただのレイラちゃんの護衛なのかな)
リオはそうであればいいと願う。
そうでなければ、レイラはとても危険な状況にいるのかもしれない。
(わからないけど‥‥二人が一緒にいる所を私はほんの少ししか見たことないけど‥‥)
ーーレイラちゃんは‥‥。
「リオくーん」
「!?」
リオの思考は聞き覚えのある明るい声に遮られる。
「ハトネ‥‥さん?」
先日、行方をくらませたハトネが目の前にいて、リオは驚いた。
「ごめんねリオ君‥‥何も言わず、黙って行っちゃって‥‥」
ハトネがリオに頭を下げるので、
「ハトネさん‥‥!一体どこにっ‥‥じゃなくて、あっ、謝るのは私の方です!私、シュイアさんがいなくなったことしか考えていなくて!せっかくハトネさんが心配してくれていたのに、あなたの気持ちを考えないで‥‥ごめんなさい。ハトネさんが呆れて行ってしまったのは仕方ないですよ」
リオはそう言って、同じように頭を下げる。
「え?呆れる?私がリオ君のことを?」
ハトネは困った顔でリオを見て、
「違うよリオ君。私そんなことでいなくなったんじゃないよ」
ハトネは可笑しそうに笑った。
リオは顔を上げ、目を丸くしながら彼女を見る。
「私がリオ君に呆れるわけないじゃない」
「え?じゃあ‥‥?」
リオが不思議そうにハトネを見ると、彼女は黙りこんでしまって。
「私が‥‥私がいても、リオ君楽しそうじゃなかったから。一緒にいるの迷惑かな‥‥って思って」
ハトネは消え入りそうな声を出し、そう言った。
リオの予想とは全く違う答えだった。
リオに呆れてどこかへ行ったのではなかったようで‥‥
「そっ、そんなことないです!迷惑なんかじゃないです」
リオはそう言って、ハトネに笑顔を向ける。
「ほっ、本当?本当に?良かった‥‥まだこの国にリオ君いるかなって思って戻って来たの。良かった‥‥」
ハトネは本当に嬉しそうで、リオは言葉が出なかった。
この前までの自分は、どうして彼女の気持ちを考えてやれなかったんだろうと。
自分とシュイアのことしか考えていなかった以前の自分‥‥でも、今は。
「じゃあ、これからは一緒にいていいの?」
ハトネがそう聞いてきて、リオはハトネを見る。
「じゃあ、今度こそ!これからずーっとリオ君の傍にいるね」
ハトネはそう言って軽くリオに抱きつき、頬に口付けをした。
「わっ!びっくりしたー」
ハトネがいきなり抱きついてきたのでリオは驚き、そして自分の頬を触りながら、
「今のはなんですか?」
と、不思議そうに首を傾げて尋ねる。
「今のって?」
ハトネは首を傾げた。
「私のほっぺに口つけましたよね?何かついていましたか?」
「キスのこと?」
「きす?」
リオは更に首を傾げる。
「リオ君知らないの?キスはね、今みたいに好きな人にするものなのよ。まあ‥‥本当は口にだけど‥‥それはまた、追い追い‥‥ふふっ!」
と、ハトネは一人照れ臭そうにした。
「くち‥‥」
リオはパーティ会場でのレイラとカシルのやりとりを思い出す。
「あっ、ねえリオ君。聞きたいことがあるんだけど。この国の王女様、レイラ王女に新しくついた護衛の名前‥‥カシ‥‥」
ハトネが聞こうとしたが、急にリオはどこかに向かって走り出してしまって‥‥
「ちょっ、リオ君ーー!?」
ハトネは呆気にとられた。
◆◆◆◆◆
(あぁああ‥‥あれは、キスってやつだったんだ?!)
リオはあれこれ考えて走り、いつの間にかフォード城の城門前で立ち止まっていた‥‥
(レイラちゃんは、やっぱりカシルさんのこと‥‥でも‥‥二人はまだ出会ったばかりで‥‥)
ーー出会ったばかりで、どうして。
(でも、皆そうだ。出会ったばかりの人と、皆すぐに仲良くなる)
レイラも、ハトネも、フィレアも、皆そうだ。
(出会ったばかりだとかそんなのは‥‥関係ないのかな)
この六年間、リオはシュイア以外の誰とも関わったことがなかったから。
(好きってなんだろ?友達ってなんだろ?ただ‥‥)
リオは己の中に芽生えた感情に戸惑いつつ、
(ただ、私は‥‥なんだかよく分からないけど、レイラちゃんを守ってあげたいと思う。カシルさんと一緒にいるのは危険かもしれないから‥‥だから。もしかして、それが‥‥友達?)
リオはその答えに辿り着き、口をぽかんと開けた。
「あ、リオ!」
「ーー!」
リオは知っているその声に振り返る。そして、
「げっ?!」
と、一言‥‥驚くように言った。
「え!?何よその反応!失礼ね!」
やはりそれは、レイラだった。
まあ、実際のところレイラに会いに来たリオだが、なんの心の準備もしていないのにいきなり彼女が目の前に現れたので、リオは戸惑う。
それに‥‥
やはり、レイラの傍にはカシルがいた。
レイラといる時のカシルは本当にリオのことを知らないフリをする。
今もそっぽを向いていた。
「リオ!宿屋を数日前に出たんですってね!この数日、私どれほどあなたを捜したことか‥‥!」
レイラは頬を膨らませ、やはりとても怒っていて、
「ごっ、ごめん」
「私にぐらい報告してよね!で?今はどこにいるの?家あるの?」
そう聞かれて、リオはただ苦笑いを浮かべた。
(居候させてもらってる身だし、それに、貴族と言うか王女様であるレイラちゃんが来るような場所じゃないし‥‥押し掛けられても嫌だし‥‥)
リオはいろいろ考えて、今の居場所ーーフィレアとアイムの家のことは黙っておくことにする。
「何よ?教えてくれないの?今、どこにい‥‥」
ぎゅっーー。
リオはいきなりレイラの手を取り握った。それに、レイラは目を丸くする。
「なっ、何よ?リオ‥‥」
「レイラちゃん」
リオはレイラの顔をしっかりと見て、笑ってこう言った。
「私は、レイラちゃんと友達になりたいな」
ーーと。
レイラに困った顔をされて、リオは気まずそうに笑う。
「いっ、いきなり何それ?私達は前から友達じゃなかったの?」
「えっ?いや‥‥私、今まで友達なんていなかったから。友達ってなんだろうって思ってて。いろいろ考えて、レイラちゃんとなら友達ってやつになれるかもって思って‥‥わっ、私はいきなり何を言っているんだろう」
リオは照れ臭そうに笑った。
それに、レイラが大きく息を吐き、
「まったく。『なれるかも』じゃなくて、もう友達でしょ?」
レイラは少し怒ったように言うが、内心は驚きと‥‥嬉しさの二つでいっぱいだった。
ようやくリオが、心を開いてくれたように思えたから。
(友達‥‥なんだろう?なんだかすごく嬉しいな。でも、レイラちゃんはカシルさんを好きなのかな?それともカシルさんがレイラちゃんを好きなのかな?)
リオはそんなことを考え、それを確かめたいと思った。だから、
「ごっ‥‥護衛さん」
リオは真っ直ぐにカシルを見て声を掛け、それでやっとカシルはリオを見る。
(‥‥どっ、どうしよう。レイラちゃんと二人きりになってカシルさんから離れた方がいいってもう一回言うべきか‥‥もしくはカシルさんと二人きりで話して目的を聞き出すべきか‥‥)
話し掛けたはいいが、リオの顔色が悪くなった。
決断すると言うのが苦手だからだ。
それになんでカシルに声をかけてしまったんだろうと後悔する。
それでもリオはなんとか言葉を続けた。
「護衛さん‥‥あなたは‥‥」
あなたは何をするつもりですか?
レイラちゃんのことが好きなんですか?
なぜシュイアさんと戦うんですか?
聞きたいことはたくさんあるが、今、一番聞かなければいけないことは彼の目的。
だが、レイラの前でそんなことは聞けないし‥‥カシルが話してくれるわけもない‥‥
「リオ?」
疑問に思ったレイラがリオに声をかける。
「いっ、いえ!やっぱりなんでもありません!」
リオは自分を情けないなと感じ、諦めて俯いた。そこで、
「レイラ様」
さっきまで、何ひとつ言わなかったカシルが口を開く。
「はっ、はい?」
呼ばれたレイラは驚いたように返事をして、
「少々、このこぞーー‥‥レイラ様のご友人と話をしてもいいですか?」
なぜかカシルがそう切り出した。
(あっ。今、小僧って言いそうになりましたね)
リオは口には出さずそう思うが、
(でも、どういうこと?)
まさかカシルの方からそう言ってくるとはーーと、リオは疑問に思う。
「え?‥‥ええ、いいですけど‥‥」
レイラは首を傾げながら、不思議そうにしていた。
せっかく訪れたチャンスだ、リオはレイラを巻き込まないよう、
「レイラちゃん、よくわからないけどたぶんすぐ話終わると思うから。あそこの店でも見てて!あそこで欲しい物があるんだけど、レイラちゃんに選んでほしくて。すぐに行くから」
リオはそう言って、適当に店を指差す。
「そっ、そう?わかったわ。何の話かは知らないけど‥‥邪魔しないようにするわ」
レイラはリオが適当に指差した店に行こうとして、
「ところで、二人は本当に知り合いじゃないの?」
振り返ってそう聞いた。
リオとカシルは無言で頷く。
「そっ」
レイラはそう言って、今度こそ店に向かった。
「ーーそれで?カシルさん。なんでしょうか?」
リオが聞く。
「まあ、お前には何も出来ないとは思うが、聞かせておいてやろう」
「?」
「俺の目的は世界を殺すことだ。この大地に何も残さないようにな」
その言葉をリオは理解できず、頭の中が真っ白になる。
「言うなれば、お前の大好きなシュイア‘さん’は世界を護る側にあって、『世界を生かす者』ーーそう言ったらどうする?」
リオはただ、彼の言葉を聞くことしかできなかった。
世界を殺す者?
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