53 / 113
Four-leaf Cross〔Shota〕
◆第五十三話◆
しおりを挟む
葡萄の果肉をプチュと突き刺す。潰れた箇所から赤黒い果汁が次から次に溢れ出て、辺り一面を朱に染めていく。このままだと溺れてしまう・・怖くなって逃げ出そうとしても足が地面に張り付いてしまったかのように動かない。そうしている間にも、並々と溜まっていく血の海。
「助けてくれ」
叫びながら手を伸ばすと、誰かがその手を掴んでくれた。
「ヒッ・・」
自分の口から悲鳴が漏れる。視線の先で、血の涙を流した律が笑っている・・。
ガタンと大きく電車が揺れて須藤 祥太は目を覚ました。あの日から連日見続けている夢。最初は恐ろしくて眠れなくなったけれど、最近ではそれが夢であると理解できるため、目覚めた瞬間に取り乱すことも無くなった。
「だからぁ、結構面白いから見てみてよ!」
須藤は耳に響く大きな声に眉を顰める。横に立っている二人組の若い女性がスマートフォンを熱心に覗き込んでいた。見たくなくても視界に入ってくる位置、小さな画面の中で人影が蠢いている。
「ゲイとか気持ち悪いって思ってたけど、見出したらハマっちゃった」
「えー、これなんてやつ?」
そこで駅に停車し、女性二人は話を中断して電車を降りた。須藤は静かになった車内でもう一度瞼を閉じる。自分の降りる駅まではまだまだ時間があるから仮眠したいのに、今の女性達の会話のせいで、昼間の出来事が頭をよぎり目が冴えてしまった。
突然自分の前に現れた裕臣さんの恋人だと言う男。そして彼の口から語られた真実。自分にとって、これ以上無いくらいに望まれた内容だった。けれど、今自分が置かれている状況がそれを許さない。手に入れられるはずの幸せが自分の手からこぼれ落ちていくのを、黙って見ているしか出来ない。
一ヶ月半前、律とビアガーデンに行った日、律はたまたま居合わせた裕臣さんの恋人を追いかけて道に迷い、酔っ払った二人の男に酷い性暴行を受けた。スマートフォンを店に忘れて行ってしまったがために、連絡が取れず。ようやく見つけ出せたのは、翌朝になってからだった。
律は自分の目の前で、笑いながら律自身の眼球に指を突き刺した。足がすくんで動けなくなった自分に代わり、交番の警察官がすぐに気付いて止めてくれたおかげで自傷行為は右目だけで済んだが、傷が深く、片目を失明してしまった。
律の心と頭が壊れてしまったきっかけは間違いなくレイプされたことだ。でも根源はそれじゃない。何故、律が自身の瞳を手にかけたのか、淡く綺麗な瞳が赤黒く染まる様を見て自分はゾッとした。律は直接口にはしないが、原因は自分の裕臣さんへの未練にある。
あの頃自分は律の瞳を通して、いつも裕臣さんを見ていた。それを自分の中だけの問題だと思っていたのが甘かった。律は誰か分からない存在を敏感に感じ取っていたのだ。恋人にそんな事をされていたらショックを受け、不信感を持って当然だろう。
自分には律をおかしくしてしまった責任がある。だから何があっても彼の傍にいて、一生をかけて償わなくちゃいけないと思っている。
「助けてくれ」
叫びながら手を伸ばすと、誰かがその手を掴んでくれた。
「ヒッ・・」
自分の口から悲鳴が漏れる。視線の先で、血の涙を流した律が笑っている・・。
ガタンと大きく電車が揺れて須藤 祥太は目を覚ました。あの日から連日見続けている夢。最初は恐ろしくて眠れなくなったけれど、最近ではそれが夢であると理解できるため、目覚めた瞬間に取り乱すことも無くなった。
「だからぁ、結構面白いから見てみてよ!」
須藤は耳に響く大きな声に眉を顰める。横に立っている二人組の若い女性がスマートフォンを熱心に覗き込んでいた。見たくなくても視界に入ってくる位置、小さな画面の中で人影が蠢いている。
「ゲイとか気持ち悪いって思ってたけど、見出したらハマっちゃった」
「えー、これなんてやつ?」
そこで駅に停車し、女性二人は話を中断して電車を降りた。須藤は静かになった車内でもう一度瞼を閉じる。自分の降りる駅まではまだまだ時間があるから仮眠したいのに、今の女性達の会話のせいで、昼間の出来事が頭をよぎり目が冴えてしまった。
突然自分の前に現れた裕臣さんの恋人だと言う男。そして彼の口から語られた真実。自分にとって、これ以上無いくらいに望まれた内容だった。けれど、今自分が置かれている状況がそれを許さない。手に入れられるはずの幸せが自分の手からこぼれ落ちていくのを、黙って見ているしか出来ない。
一ヶ月半前、律とビアガーデンに行った日、律はたまたま居合わせた裕臣さんの恋人を追いかけて道に迷い、酔っ払った二人の男に酷い性暴行を受けた。スマートフォンを店に忘れて行ってしまったがために、連絡が取れず。ようやく見つけ出せたのは、翌朝になってからだった。
律は自分の目の前で、笑いながら律自身の眼球に指を突き刺した。足がすくんで動けなくなった自分に代わり、交番の警察官がすぐに気付いて止めてくれたおかげで自傷行為は右目だけで済んだが、傷が深く、片目を失明してしまった。
律の心と頭が壊れてしまったきっかけは間違いなくレイプされたことだ。でも根源はそれじゃない。何故、律が自身の瞳を手にかけたのか、淡く綺麗な瞳が赤黒く染まる様を見て自分はゾッとした。律は直接口にはしないが、原因は自分の裕臣さんへの未練にある。
あの頃自分は律の瞳を通して、いつも裕臣さんを見ていた。それを自分の中だけの問題だと思っていたのが甘かった。律は誰か分からない存在を敏感に感じ取っていたのだ。恋人にそんな事をされていたらショックを受け、不信感を持って当然だろう。
自分には律をおかしくしてしまった責任がある。だから何があっても彼の傍にいて、一生をかけて償わなくちゃいけないと思っている。
0
あなたにおすすめの小説
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
「普通を探した彼の二年間の物語」
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる