モブ令嬢は白旗など掲げない

セイラ

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修復と絆

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声の主はベレンテだった。

「メルファーナ家の使用人と警備兵を、舐めないで頂きたい。ゴロツキ共。」

ベレンテはキレていた。ランスを狙ったばかりか、セシリアをも傷つけようとしたからだ。

「ただで済むと思うなよ。」
何時もの穏やかな雰囲気はない。どす黒い殺気と一段と低い声は、恐怖を思わせる。

〈・・・私この屋敷から無事に出られるかな?〉
〈今のままじゃ、無理だね。〉

私はレイピアを鞘にしまった。コハクも私のもとへ戻って来た。

ベレンテは一瞬で、黒尽くめ達の懐近くまで近づき、回し蹴りをした。

1人は受け止めようとしたが吹き飛び、もう1人は避けた。吹き飛んだ黒尽くめは、右腕が負傷した。

「おやおや、この屋敷に踏み入る腕前、流石に今の一撃では倒せませんか。」

私は直ぐにランスのもとへ行く。前世の記憶がある私はランスに見せてはいけない。

ランスは私が近づいて来た事に驚いていたが、銀色の瞳を涙で溜めて、抱きついて来た。

少し驚いたが、私はランスへ言う。
「目と耳を閉じて、ここからは見てはダメ。」

私の感が、ここから大変な事になる気がする。けどまだ敵がいるかもしれない時点で、動けない。

「お嬢様、ご安心ください。貴方方の酷い事は致しません。」

ベレンテよ。前での所を強調したと言う事は・・・深く聞かない様にしよう。

そう、忘れるのよ。今の言葉を純粋なランスに聞かせない様に耳は防いだもの。

〈コハク、私は無事にここを出られるかな?〉
〈頑張るしかないだろうね。〉

ベレンテだけは、怒らせない様にしよう。彼等の黒幕はベレンテの説教で言うと思うし。

そう考え、長い夜を終えた。


朝、目が覚めて直ぐに、父親の執務室に呼ばれた。勿論ベレンテと祖父母も一緒だ。そして祖父母の執事。

祖父母の執事はダンさん。しらがが混じった青い髪にルビーの瞳をした美形のおじ様。

「セシリア、昨日はランスを守ってくれて、ありがとう。」

「弟ですもの。守るのは当然です。しかしながら、今回の件、お父様の事は許しませんわ。」

これは母親の為の仕返しである。
「・・・セシリア、どう言う事だい?」

父親は見た事もないくらい泣きそうな顔をしている。拒否されたのがそんなに悲しいか?

「お言葉通りです。貴方方に通すべき筋がある事は理解しています。しかし、お母様にも通すべき筋がある事はお忘れなく。」

「どう言う事ですの?」
祖母の問い掛けに私は笑顔で返す。

「ランスに秘密がある事は分かっています。内容は聞きません。ですが、何も知らない事はとても不安を呼ぶと言う事です。」

「どう言う事かしら?ねぇ?」
祖母は私の言葉を理解し、父親に微笑みかける。

しかし、その目は笑っていない。この場に母親がいない時点で薄々勘付いていたのだろう。

私の言葉で確信に変わった今怒りを覚えている祖母。同じ女性として、理解しているのだ。

しかし、鈍い男は気付かない。父親と祖父は首を傾げている。

ダンさんはそんな2人に呆れ顔だ。ベレンテは青い顔をしている。

ベレンテも父親が母親に説明していると思っていたのだろう。

「お父様。今回の件は、お母様に相談しましたか?」
「いいや。相談していない。」

「相談していないのですか!」
その言葉を聞き、ベレンテは死んだ顔をしている。

「お母様はお父様に信頼を置いています。」
そう。父親の事を母親は信頼し、ランスの件をしかと受け止めている。

「ですが、お母様からすれば、信頼されていないと思うのは当然の行動です。」

ようやく何を言っているのか気づいたみたい。

どうして仕事は完璧なのに、母親の事になると鈍感になるのか分からない。

「どうしよう・・・」
慌てだし顔を真っ青にする父親。

「侯爵様の考えがあっての事でしょうから、私は怒る権利はありません。ですが、お母様にした事は許しません。」

にっこりと笑い、ベレンテに視線を向ける。
「我が侯爵家に愚行な事をした人々のお片付けは済んだのでしょう?」

父親の事だ。祖父母と協力して、敵を叩き潰したに違いない。

「ええ、綺麗になりました。」
いい顔で笑うベレンテに、次に父親へ視線を向ける。

「それでしたら、お母様に説明してあげてください。お父様。」

「ああ、勿論だ!」
慌てて出て行こうとする父親を呼び止める。

「お婆様。今回私は、侯爵様に言った無礼な言葉を深く反省します。その罰を。」

「そうね。ランスを守った事に免じて、罰は軽くしましょう。父親と1週間の会話を禁止します。」

「何故だ!私は迷惑など思っていない。母上!」
「謹んでお受けします。」

これは私と祖母のアイコンタクトによりなされた。

祖母も父親の行動に少し腹が立ったので、その報復が今の罰である。

セシリア本人は知らないが、ハインズが娘をとても溺愛しているのだ。

〈コハク、今日は温室でゆっくりしよ。〉
〈そうだね、セシー!〉

そんな事を知らないセシリアは、呑気に温室へ向かうのだった。

「姉さん!」
呼ばれた方向に目を向けると、ランスが走って来た。

「何?」
「あの時守ってくれて、ありがとうございました。」

「大丈夫よ。家族だもの。」
「あの!今から一緒に・・あ、遊びませんか!」

「ふふふ。構わないわよ。」
〈コハク、ごめんね。〉

〈大丈夫だよ!だけど後でよしよししてね!〉
〈ええ、約束よ。〉

ランスと仲良く遊んだのだった。勿論、ルカやアリサと一緒に。

それから、ルカは私の専属執事となった。ルカがそう望んだらしい。

一度ランスの専属従者となったのは、襲撃された時に守る為だったらしい。

それからも、シスイ様・エジス・レオン・カインとも一緒に遊んでいた。


けれど、私は悲鳴を上げそうになったのだ。シスイ殿下から王宮に遊びに来る様に書かれていたから。

こんな展開聞いてない!メイド達に朝から磨かれた。

薄桃色のドレスに薄紫色のレースが重なっている。髪型は三つ編みを横に流している。

父親は仕事があり、ランスは勉強で来られない為、母親がついて来た。

王宮につき案内されたのは、王宮の中庭だった。

そこには王妃のルージュ様とシスイ様、その後ろには男の子と女の子がいた。

「セシリアちゃん。この子達は息子と娘なの!」
知っています。とは言えないので、挨拶をする。

「お初にお目にかかります。私はハインズ・メルファーナの娘、セシリアと申します。」
カーテシーをして微笑む。

「私はソフィアと申しますわ。」
第1王女のソフィア様。銀色の髪にブルージルコンの瞳をした美少女。

「僕はハイネと言う。」
プラチナブランドの髪に、アクアマリンの瞳をした美少年でこの国の第2王子。

ソフィア様は乙女ゲームの悪役王女にもなる。公爵令嬢と悪役は2人いるのだ。

ハイネ様は乙女ゲームの攻略対象者である。嫌だな。帰りたいな。

「子供達で仲良く遊んでいらっしゃい。」
王妃様!嫌です!行きたくない!

「セシリア、仲良くね。」
母親よ。見捨てないで!

私達、子供は遊ぶべく移動した。執事であるルカとハイネ様の従者も一緒だ。

ハイネ様の従者もサポートキャラで名は、カイト・シトレイヤだ。

薄紫色の髪にミントガーネットの瞳に、口の下にホクロがある美少年。




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