平凡女子高生、美少女に転生する。〜夜会で出会った彼は、蜘蛛好き〜

四季

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31話「本心を伝えて」

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 勇気を出し、気持ちを伝えた。
 けれどパトリーは怪訝な顔をするばかり。私の言葉だと信じてくれていない様子だ。
 せっかく頑張って言ったのだ。このままでうやむやになるようなことがあっては、とても耐えられない。

「私は本気です!」

 だが、いきなり「恋人になってほしい」などと言われたら、戸惑ってしまうのも無理はないだろう。私だって、そのくらいのことは分かる。何がどうなってそうなったのか理解できぬまま頷けというのは、さすがに酷だ。

 なので私は事情を説明することに決めた。

「……というのも、実は先日、親から突然結婚の話が出てきまして……」
「なっ! 結婚だと!?」

 ガタン、と、勢いよく椅子から立ち上がるパトリー。

「はい」
「それで……?」

 食い入るように見つめてくる。

 パトリーらしくない。
 彼はあっさりした言動が多い。小さなことで大慌てするような質ではない。それだけに、今の振る舞いには少々特別感がある。

「もちろんお断りしました。正直好みのタイプでなかったですし……それに、いきなり結婚だなんて、よく分からなくて」

 本心を真っ直ぐ言ってしまうのは良くないかもしれないとも思ったが、だからといって偽りの言葉を放つのもおかしな感じがして。少し考え、結局、本当のところを述べることにしたのだった。

 私の発言を聞いたパトリーは、ふっ、と笑みをこぼす。

「それは正論だな」

 安堵しているような笑みだった。

「出会ったばかりの者に結婚だの何だのと言われると、不快感しかなくなる——個人的にではあるが、それはよく分かる」

 分かってくれたようで、嬉しい。

 そういえば、私たちが初めて会ったあの夜会の時、パトリーは女性たちに囲まれていた。パトリーは女性たちからとても人気があるようだった。
 だからきっと、求婚されたことも多いのだろう。

 私がそんな彼と親しくなれたというのは少しばかり不思議だけれど……。

「で、その返事だが」
「え?」
「恋人になるか否かという件の返事だが」
「あっ……は、はい!」

 今になって緊張が戻ってくる。

「私はそれでも構わない」

 パトリーは淡々とそう述べた。

「え……えっ?」

 彼が発した言葉の意味が理解できなくて、私は、暫し戸惑うことしかできなかった。

 私はパトリーの瞳へ視線を向ける。
 パトリーは私の顔をまじまじと見つめている。

「……どうした?リリエラ」
「い、いえ。その、えっと……」
「何だそれは」
「えと、あの……」

 間を繋ぐための曖昧な言葉しか発することができない。

「恋人になりたいと思ってくれているのではなかったのか?」

 堂々と言わないで! 恥ずかしいから!

「そ、そうですけど……」
「決まりだ。今日からは友人ではなく恋人と呼ぼう」
「そんなさらっと!?」

 思わず突っ込みを入れてしまった。

「リリエラもそれを望んでいたのなら、こちらとしても好都合だ」

 リリエラ『も』……って、えっ?

「もしかして、パトリーさんもその気になって……?」
「いつかは言おうと思っていた」

 パトリーは落ち着いた口調ではっきりと述べる。
 抱いていた気持ちを口から出すとなると、普通は多少恥ずかしくなりそうなものだ。だがパトリーは、恥じらいというものは欠片も抱いていない様子。不思議なくらい、冷静さを保っている。

「ではリリエラ。恋人として、これからもよろしく頼む」

 椅子から腰を浮かせ、立ち上がると、彼は数歩こちらへ寄ってきた。そして、音もなく片手を差し出してくる。

 恐らく、手を取れということなのだろう。
 説明がないから不明な部分も多くあるけれど、私はそう解釈した。

 だから私は、パトリーの手を握るべく、片手を伸ばす。

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

 手と手が近づき、やがて指と指が触れた——直後。

 ズキン、と頭に痛みが走った。

「っ……」

 それは普通の頭痛とはとても思えないような、おかしいくらいの痛みだった。

 ただの頭痛なら、これまでも幾度かなったことがある。熱が出た時は特に調子が良くなかったし、それ以外でも頭が痛いという経験をしたことはある。

 でも、この痛みはそれらとは違う。
 静電気と雷の違いほど、大きな差があるのだ。

「リリエラ!?」

 恐ろしい痛みに立っていられず、思わずしゃがみ込む。
 すぐ近くにいるパトリーが驚いて私の名を呼ぶのが微かに聞こえたが、それに応じる余裕はない。

「どうしたんだ!? リリエラ!?」

 思考できぬほどに頭が痛い。血が出ている感覚はないから物理的な怪我ではないはずだが、呼吸をすることさえ辛いほどの苦痛。みるみるうちに血の気が引いていく。

 何が起きているのか分からない。
 これは一体何なのか。

 特別なことなんて何もなかった、ただパトリーと手を繋ごうとしただけで。

 指と指が触れただけなのに、いきなりこんな頭痛が起こるなんて、信じられない。欠片も予想していなかった。

「しっかりしろ、リリエラ!」
「……パト、リー……」
「今、誰か呼んでくる! 待っていろ!」

 ——意識が徐々に薄れていく。
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