31 / 32
31話「本心を伝えて」
しおりを挟む
勇気を出し、気持ちを伝えた。
けれどパトリーは怪訝な顔をするばかり。私の言葉だと信じてくれていない様子だ。
せっかく頑張って言ったのだ。このままでうやむやになるようなことがあっては、とても耐えられない。
「私は本気です!」
だが、いきなり「恋人になってほしい」などと言われたら、戸惑ってしまうのも無理はないだろう。私だって、そのくらいのことは分かる。何がどうなってそうなったのか理解できぬまま頷けというのは、さすがに酷だ。
なので私は事情を説明することに決めた。
「……というのも、実は先日、親から突然結婚の話が出てきまして……」
「なっ! 結婚だと!?」
ガタン、と、勢いよく椅子から立ち上がるパトリー。
「はい」
「それで……?」
食い入るように見つめてくる。
パトリーらしくない。
彼はあっさりした言動が多い。小さなことで大慌てするような質ではない。それだけに、今の振る舞いには少々特別感がある。
「もちろんお断りしました。正直好みのタイプでなかったですし……それに、いきなり結婚だなんて、よく分からなくて」
本心を真っ直ぐ言ってしまうのは良くないかもしれないとも思ったが、だからといって偽りの言葉を放つのもおかしな感じがして。少し考え、結局、本当のところを述べることにしたのだった。
私の発言を聞いたパトリーは、ふっ、と笑みをこぼす。
「それは正論だな」
安堵しているような笑みだった。
「出会ったばかりの者に結婚だの何だのと言われると、不快感しかなくなる——個人的にではあるが、それはよく分かる」
分かってくれたようで、嬉しい。
そういえば、私たちが初めて会ったあの夜会の時、パトリーは女性たちに囲まれていた。パトリーは女性たちからとても人気があるようだった。
だからきっと、求婚されたことも多いのだろう。
私がそんな彼と親しくなれたというのは少しばかり不思議だけれど……。
「で、その返事だが」
「え?」
「恋人になるか否かという件の返事だが」
「あっ……は、はい!」
今になって緊張が戻ってくる。
「私はそれでも構わない」
パトリーは淡々とそう述べた。
「え……えっ?」
彼が発した言葉の意味が理解できなくて、私は、暫し戸惑うことしかできなかった。
私はパトリーの瞳へ視線を向ける。
パトリーは私の顔をまじまじと見つめている。
「……どうした?リリエラ」
「い、いえ。その、えっと……」
「何だそれは」
「えと、あの……」
間を繋ぐための曖昧な言葉しか発することができない。
「恋人になりたいと思ってくれているのではなかったのか?」
堂々と言わないで! 恥ずかしいから!
「そ、そうですけど……」
「決まりだ。今日からは友人ではなく恋人と呼ぼう」
「そんなさらっと!?」
思わず突っ込みを入れてしまった。
「リリエラもそれを望んでいたのなら、こちらとしても好都合だ」
リリエラ『も』……って、えっ?
「もしかして、パトリーさんもその気になって……?」
「いつかは言おうと思っていた」
パトリーは落ち着いた口調ではっきりと述べる。
抱いていた気持ちを口から出すとなると、普通は多少恥ずかしくなりそうなものだ。だがパトリーは、恥じらいというものは欠片も抱いていない様子。不思議なくらい、冷静さを保っている。
「ではリリエラ。恋人として、これからもよろしく頼む」
椅子から腰を浮かせ、立ち上がると、彼は数歩こちらへ寄ってきた。そして、音もなく片手を差し出してくる。
恐らく、手を取れということなのだろう。
説明がないから不明な部分も多くあるけれど、私はそう解釈した。
だから私は、パトリーの手を握るべく、片手を伸ばす。
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
手と手が近づき、やがて指と指が触れた——直後。
ズキン、と頭に痛みが走った。
「っ……」
それは普通の頭痛とはとても思えないような、おかしいくらいの痛みだった。
ただの頭痛なら、これまでも幾度かなったことがある。熱が出た時は特に調子が良くなかったし、それ以外でも頭が痛いという経験をしたことはある。
でも、この痛みはそれらとは違う。
静電気と雷の違いほど、大きな差があるのだ。
「リリエラ!?」
恐ろしい痛みに立っていられず、思わずしゃがみ込む。
すぐ近くにいるパトリーが驚いて私の名を呼ぶのが微かに聞こえたが、それに応じる余裕はない。
「どうしたんだ!? リリエラ!?」
思考できぬほどに頭が痛い。血が出ている感覚はないから物理的な怪我ではないはずだが、呼吸をすることさえ辛いほどの苦痛。みるみるうちに血の気が引いていく。
何が起きているのか分からない。
これは一体何なのか。
特別なことなんて何もなかった、ただパトリーと手を繋ごうとしただけで。
指と指が触れただけなのに、いきなりこんな頭痛が起こるなんて、信じられない。欠片も予想していなかった。
「しっかりしろ、リリエラ!」
「……パト、リー……」
「今、誰か呼んでくる! 待っていろ!」
——意識が徐々に薄れていく。
けれどパトリーは怪訝な顔をするばかり。私の言葉だと信じてくれていない様子だ。
せっかく頑張って言ったのだ。このままでうやむやになるようなことがあっては、とても耐えられない。
「私は本気です!」
だが、いきなり「恋人になってほしい」などと言われたら、戸惑ってしまうのも無理はないだろう。私だって、そのくらいのことは分かる。何がどうなってそうなったのか理解できぬまま頷けというのは、さすがに酷だ。
なので私は事情を説明することに決めた。
「……というのも、実は先日、親から突然結婚の話が出てきまして……」
「なっ! 結婚だと!?」
ガタン、と、勢いよく椅子から立ち上がるパトリー。
「はい」
「それで……?」
食い入るように見つめてくる。
パトリーらしくない。
彼はあっさりした言動が多い。小さなことで大慌てするような質ではない。それだけに、今の振る舞いには少々特別感がある。
「もちろんお断りしました。正直好みのタイプでなかったですし……それに、いきなり結婚だなんて、よく分からなくて」
本心を真っ直ぐ言ってしまうのは良くないかもしれないとも思ったが、だからといって偽りの言葉を放つのもおかしな感じがして。少し考え、結局、本当のところを述べることにしたのだった。
私の発言を聞いたパトリーは、ふっ、と笑みをこぼす。
「それは正論だな」
安堵しているような笑みだった。
「出会ったばかりの者に結婚だの何だのと言われると、不快感しかなくなる——個人的にではあるが、それはよく分かる」
分かってくれたようで、嬉しい。
そういえば、私たちが初めて会ったあの夜会の時、パトリーは女性たちに囲まれていた。パトリーは女性たちからとても人気があるようだった。
だからきっと、求婚されたことも多いのだろう。
私がそんな彼と親しくなれたというのは少しばかり不思議だけれど……。
「で、その返事だが」
「え?」
「恋人になるか否かという件の返事だが」
「あっ……は、はい!」
今になって緊張が戻ってくる。
「私はそれでも構わない」
パトリーは淡々とそう述べた。
「え……えっ?」
彼が発した言葉の意味が理解できなくて、私は、暫し戸惑うことしかできなかった。
私はパトリーの瞳へ視線を向ける。
パトリーは私の顔をまじまじと見つめている。
「……どうした?リリエラ」
「い、いえ。その、えっと……」
「何だそれは」
「えと、あの……」
間を繋ぐための曖昧な言葉しか発することができない。
「恋人になりたいと思ってくれているのではなかったのか?」
堂々と言わないで! 恥ずかしいから!
「そ、そうですけど……」
「決まりだ。今日からは友人ではなく恋人と呼ぼう」
「そんなさらっと!?」
思わず突っ込みを入れてしまった。
「リリエラもそれを望んでいたのなら、こちらとしても好都合だ」
リリエラ『も』……って、えっ?
「もしかして、パトリーさんもその気になって……?」
「いつかは言おうと思っていた」
パトリーは落ち着いた口調ではっきりと述べる。
抱いていた気持ちを口から出すとなると、普通は多少恥ずかしくなりそうなものだ。だがパトリーは、恥じらいというものは欠片も抱いていない様子。不思議なくらい、冷静さを保っている。
「ではリリエラ。恋人として、これからもよろしく頼む」
椅子から腰を浮かせ、立ち上がると、彼は数歩こちらへ寄ってきた。そして、音もなく片手を差し出してくる。
恐らく、手を取れということなのだろう。
説明がないから不明な部分も多くあるけれど、私はそう解釈した。
だから私は、パトリーの手を握るべく、片手を伸ばす。
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
手と手が近づき、やがて指と指が触れた——直後。
ズキン、と頭に痛みが走った。
「っ……」
それは普通の頭痛とはとても思えないような、おかしいくらいの痛みだった。
ただの頭痛なら、これまでも幾度かなったことがある。熱が出た時は特に調子が良くなかったし、それ以外でも頭が痛いという経験をしたことはある。
でも、この痛みはそれらとは違う。
静電気と雷の違いほど、大きな差があるのだ。
「リリエラ!?」
恐ろしい痛みに立っていられず、思わずしゃがみ込む。
すぐ近くにいるパトリーが驚いて私の名を呼ぶのが微かに聞こえたが、それに応じる余裕はない。
「どうしたんだ!? リリエラ!?」
思考できぬほどに頭が痛い。血が出ている感覚はないから物理的な怪我ではないはずだが、呼吸をすることさえ辛いほどの苦痛。みるみるうちに血の気が引いていく。
何が起きているのか分からない。
これは一体何なのか。
特別なことなんて何もなかった、ただパトリーと手を繋ごうとしただけで。
指と指が触れただけなのに、いきなりこんな頭痛が起こるなんて、信じられない。欠片も予想していなかった。
「しっかりしろ、リリエラ!」
「……パト、リー……」
「今、誰か呼んでくる! 待っていろ!」
——意識が徐々に薄れていく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】王宮内は安定したらしいので、第二王子と国内の視察に行ってきます!(呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。の続編です)
まりぃべる
恋愛
異世界に呼ばれた佐川マリア。マリア・サガワとしてこの世界で生きて行く事に決め、第二王子殿下のルークウェスト=ヴァン=ケルンベルトと一緒に、この国をより良くしていきます!って、実際は2人で旅行がしたかっただけ?
呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。の続編です。
長くなりましたので、前作の続きでは無く新しくしました。前作でしおりを挟んでくれた方ありがとうございました。
読んでなくても分かるようにしております。けれど、分かりにくかったらすみません。
前作も読んで下さると嬉しいです。
まだまだ未熟なので、稚拙ではありますが、読んでいただけると嬉しいです。
☆前作で読者様よりご指摘が有りましたのでこちらにも記載しておきます。
主人公の年齢は設定としてありますが、読者様が主人公になれたらな(もしくは好きな年齢に当てはめて読めたら)という思いを込めて敢えて年齢を記載していません。
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
【本編完結】獣人国での異種族婚
しろねこ。
恋愛
獣人とひと言で言っても多種多様だ。
力の強いもの弱いもの、体の大きいもの小さいもの、違いがあり過ぎて皆が仲良く暮らすというのは難しい。
その中でも変わらず皆が持っているのは感情だ。喜怒哀楽、憎悪や猜疑心、無関心やら悪戯心……そして愛情。
人を好きになるのは幸せで、苦しい。
色々な愛情表現をお楽しみください。
ハピエン厨なので、こちらもそのような話となる予定。
ご都合主義、自己満、それと両片思いが大好きです(n*´ω`*n)
同名キャラにて色々なお話を書いておりますが、作品により立場、性格、関係性に多少の違いがあります。
他サイトさんでも投稿中!
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる