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逃がさない
第七話
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目が覚めると、あの男の姿は消えていた。
ワンルームの部屋は、特別荒らされた形跡はなく、いつもと変わらない。
いっそ、夢だったらいいと思うが、身体に残された無数の赤い跡がそんな現実逃避を許さない。
怠い身体を引きずり、バスルームに向かう。
歩く度に大量に注ぎ込まれたものが流れ落ちるのを感じて、吐き気がしてくる。
(最悪だ……)
肌が赤くなるまで洗っても、あの男に犯された感触がなくならない。
あの男の匂いが消えない。
(どうして……)
痛みだけなら、きっと忘れられた。
でも、痛みを凌駕するほどの強烈な快感は、俺を更なる地獄へ突き落とした。
あんなありえない場所を犯されて、気持ちよくなるなんて信じられない。
『忘れるなよ、美咲。君はもう俺だけの物だ。……これから先もずっと』
あの男が、最後に言った言葉が忘れられない。
またあの男に、犯されるのか。
(そんなの絶対に嫌だ!!)
でも、どうしたらいいかわからない。
家の場所は知られている。
バイト先や学校だってそうだ。
何もかも捨てて、逃げることなんて出来ない。
(……もう、何も考えたくない)
俺は濡れた髪を乾かすこともなく、ベッドに倒れ込んだ。
ずっと鳴り続ける玄関チャイムの音で目が覚めた。
身体が異常に怠くて、動く気にならない。
居留守を使おうと思ったが、いつまでもチャイムの音は鳴り止まない。
ここまでしつこいと、うるさいを通り越して怖くなってくる。
(……いい加減に諦めてくれよ)
布団を被ってやり過ごそうと思った瞬間、今度はスマホの着信が鳴り始めた。
まるで俺の思考がわかっているみたいな行動に恐怖しか生まれない。
(まさか、アイツが戻ってきたのか?)
部屋の中は暖房が効いていて寒くないのに、身体が勝手に震えだす。
(……怖い)
またあの男にいいようにされるのか?
そんなの絶対に嫌だ。
逃げたい。でも、どこへ?
周りを見渡しても、玄関を塞がれていれば逃げ場なんて、どこにもない。
(……しまった)
そういえば、あの男が出て行った後、鍵を掛けた記憶がない。
このまま、ドアを開けられたら、簡単に部屋に入られる。
(誰か、助けて!!)
「美咲っ!大丈夫なのか?」
「え……?」
ドアの向こうから聞き慣れた親友の声が聞こえた。
防音があまり効いていない安アパートは、容易に外の音を拾う。
「美咲?いるのか?」
「……慎」
極度の緊張状態から解放された俺は、ベッドの上から立ち上がることが出来ない。
手を伸ばして未だ鳴り続けているスマホを取る。
『美咲!?良かった。やっと繋がった』
「……慎」
『なんの連絡もなしに大学休むから、心配したんだぞ?どうした?』
「ごめん。体調崩してて……」
『大丈夫か?今お前の部屋の前まで来てるんだ。入ってもいいか?』
「……うん。いいよ。鍵は開いてるから勝手に入って来て」
正直誰とも会いたい気分じゃないが、わざわざ部屋まで来てくれたのに追い返すのは気が引ける。
『わかった』
部屋に入って来た慎の顔を見て、昨日からの張り詰めていた神経が、やっと緩んだ気がした。
ワンルームの部屋は、特別荒らされた形跡はなく、いつもと変わらない。
いっそ、夢だったらいいと思うが、身体に残された無数の赤い跡がそんな現実逃避を許さない。
怠い身体を引きずり、バスルームに向かう。
歩く度に大量に注ぎ込まれたものが流れ落ちるのを感じて、吐き気がしてくる。
(最悪だ……)
肌が赤くなるまで洗っても、あの男に犯された感触がなくならない。
あの男の匂いが消えない。
(どうして……)
痛みだけなら、きっと忘れられた。
でも、痛みを凌駕するほどの強烈な快感は、俺を更なる地獄へ突き落とした。
あんなありえない場所を犯されて、気持ちよくなるなんて信じられない。
『忘れるなよ、美咲。君はもう俺だけの物だ。……これから先もずっと』
あの男が、最後に言った言葉が忘れられない。
またあの男に、犯されるのか。
(そんなの絶対に嫌だ!!)
でも、どうしたらいいかわからない。
家の場所は知られている。
バイト先や学校だってそうだ。
何もかも捨てて、逃げることなんて出来ない。
(……もう、何も考えたくない)
俺は濡れた髪を乾かすこともなく、ベッドに倒れ込んだ。
ずっと鳴り続ける玄関チャイムの音で目が覚めた。
身体が異常に怠くて、動く気にならない。
居留守を使おうと思ったが、いつまでもチャイムの音は鳴り止まない。
ここまでしつこいと、うるさいを通り越して怖くなってくる。
(……いい加減に諦めてくれよ)
布団を被ってやり過ごそうと思った瞬間、今度はスマホの着信が鳴り始めた。
まるで俺の思考がわかっているみたいな行動に恐怖しか生まれない。
(まさか、アイツが戻ってきたのか?)
部屋の中は暖房が効いていて寒くないのに、身体が勝手に震えだす。
(……怖い)
またあの男にいいようにされるのか?
そんなの絶対に嫌だ。
逃げたい。でも、どこへ?
周りを見渡しても、玄関を塞がれていれば逃げ場なんて、どこにもない。
(……しまった)
そういえば、あの男が出て行った後、鍵を掛けた記憶がない。
このまま、ドアを開けられたら、簡単に部屋に入られる。
(誰か、助けて!!)
「美咲っ!大丈夫なのか?」
「え……?」
ドアの向こうから聞き慣れた親友の声が聞こえた。
防音があまり効いていない安アパートは、容易に外の音を拾う。
「美咲?いるのか?」
「……慎」
極度の緊張状態から解放された俺は、ベッドの上から立ち上がることが出来ない。
手を伸ばして未だ鳴り続けているスマホを取る。
『美咲!?良かった。やっと繋がった』
「……慎」
『なんの連絡もなしに大学休むから、心配したんだぞ?どうした?』
「ごめん。体調崩してて……」
『大丈夫か?今お前の部屋の前まで来てるんだ。入ってもいいか?』
「……うん。いいよ。鍵は開いてるから勝手に入って来て」
正直誰とも会いたい気分じゃないが、わざわざ部屋まで来てくれたのに追い返すのは気が引ける。
『わかった』
部屋に入って来た慎の顔を見て、昨日からの張り詰めていた神経が、やっと緩んだ気がした。
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ちゃま様
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