Waning Moon

椎奈風音

文字の大きさ
3 / 3
Waning Moon

第二話

しおりを挟む
「……くそっ。面倒臭いな」
 私服に着替えてソファに腰掛けた俺は、悪友からのメールを開いた。
 添付されたURLにアクセスすると、月をイメージしたトップページに繋がる。
 ダウンロード画面でアプリをダウンロードし、『新規登録』をクリックすると名前を決める画面に飛んだ。

「……名前ね。ユヅキでいいや」
 深く考えるのが面倒臭かった俺は、自分の名前をそのまま入力した。
『名前は『ユヅキ』でよろしいですか』という確認メッセージにYESを押す。
 どうせ長くやるわけじゃないから、そんなに名前に拘ることもない。
 後は髪型や服を決めて、ゲームをスタートする。
 軽快な音楽と共に、小さいキャラクターがちまちま歩き出した。
 画面の左上にステータスが載っている。

『ユヅキ。Lv1』

「まぁ、何もしていないから当たり前だな」
 要はコイツをレベルアップさせていけばいいんだよな?
「……ん?」
 ステータス画面に『仲間』という項目があり、仲間1になっている。
(俺は誰とも仲間になった記憶はないけど……?)
 不思議に思ってそのページを開くと、『ヒビキ』というキャラの絵が表示された。

 ……ヒビキ?

 悪友の名前を見つけて、俺は大きなため息をつく。
 奴のメールから登録した俺は、自動的にアイツの仲間になったわけだ。
 しかも……、
 響のレベルは100。
(一体、どれだけやり込んでるんだ!?アイツは)
 ゲーマーなのにも程がある。

「とにかく俺もレベル上げした方がいいよな?」
 本気でやるつもりはないが、いつまでもLv1のままじゃ、響に何を言われるかわからない。

「あれ?」
 草原を歩いていると、宝箱を見つけた。
(宝箱って草原にある物だっけ?)
 不思議に思いながら近づくと『宝箱を開けますか?』というメッセージが表示された。
(普通、開けるよな?)
 でも事前に確認を取るなんて危険物じゃないだろうな、と思いつつドキドキしながら宝箱を開けた。

 ……中から出てきたのは、真紅の指輪。

 爆弾や人喰い箱じゃなかったことに、俺はほっと胸を撫で下ろした。
『装備しますか?』とメッセージが出てきたので、俺は特に考えることなくYESを押した。
 次の瞬間、画面に『運命の指輪、装着完了。この指輪は二度と取り外せません』というメッセージが出て俺は焦った。

「えっ!?」
(もしかして、これは呪いの指輪だったのか!?)
 メッセージが消えると同時に、画面が光り出す。

「……まぶしっ!!」
 あまりの眩しさに目を閉じると、光と共に俺の意識も吸い込まれるように薄れていった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

黒豹陛下の溺愛生活

月城雪華
BL
アレンは母であるアンナを弑した獣人を探すため、生まれ育ったスラム街から街に出ていた。 しかし唐突な大雨に見舞われ、加えて空腹で正常な判断ができない。 幸い街の近くまで来ていたため、明かりの着いた建物に入ると、安心したのか身体の力が抜けてしまう。 目覚めると不思議な目の色をした獣人がおり、すぐ後に長身でどこか威圧感のある獣人がやってきた。 その男はレオと言い、初めて街に来たアレンに優しく接してくれる。 街での滞在が長くなってきた頃、突然「俺の伴侶になってくれ」と言われ── 優しく(?)兄貴肌の黒豹×幸薄系オオカミが織り成す獣人BL、ここに開幕!

俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した

あと
BL
「また物が置かれてる!」 最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…? ⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。 攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。 ちょっと怖い場面が含まれています。 ミステリー要素があります。 一応ハピエンです。 主人公:七瀬明 幼馴染:月城颯 ストーカー:不明 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

アルファの双子王子に溺愛されて、蕩けるオメガの僕

めがねあざらし
BL
王太子アルセインの婚約者であるΩ・セイルは、 その弟であるシリオンとも関係を持っている──自称“ビッチ”だ。 「どちらも選べない」そう思っている彼は、まだ知らない。 最初から、選ばされてなどいなかったことを。 αの本能で、一人のΩを愛し、支配し、共有しながら、 彼を、甘く蕩けさせる双子の王子たち。 「愛してるよ」 「君は、僕たちのもの」 ※書きたいところを書いただけの短編です(^O^)

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

処理中です...