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27 sideスティーブン・俯瞰視点

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ダリーホックは完全な陸の孤島ではあるが、強制労働専用の場所ではないので普通に出稼ぎ労働者もいる。
そのため、罪を公にして仕事をさせているのはごく一部の場所だけである。

そして、ダリーホックでスティーブンに割り振られた仕事は鉱石掘りだった。
場所的には出稼ぎ労働者も一緒に働く中間の場所である。
と言うのもスティーブンが貴族牢にいた頃から移動時まで後悔と謝罪を繰り返していたので様子を見るためにこちらになったのだ。

出稼ぎ労働者も着ている今までとは違う着なれないゴワゴワした服を支給され、朝から晩まで坑道に入り、鉱石を掘った。
部屋は一人部屋だが、とても硬いベッドと目隠し程度の小さなスペースにトイレがあるだけの部屋だ。
風呂場は共同らしく、時間が割り振られている。
食堂も共同で決められた食事をとって席について食べるだけ、メニューは一択しかない。

スティーブンはダリーホックに来てから真面目に働いた。
ほとんどの給金を返済に当てられるため、最低限の収入が手元に残るだけだが、スティーブンはそれさえも貯金に当てた。

朝起きて、整容をし、食堂で朝食を食べると坑道に向かい、鉱石を掘る。
慣れない坑道での仕事に手は豆だらけになり、それが潰れてしまう。
そうすると同じ辺りを掘っている者が気付いて医務室に連れていき、医者に手当てをされる。

「っ!」
「あ!また、無理したな!手の豆は保護しろって言っただろ」
「っ!だけど、保護なんてやり方分からない」
「全く、ほら、医務室行くぞ。早く治さないと化膿してもっと酷くなるからな」
「分かった」
「せんせー!スティーブンの豆がまた潰れた~」
「またですか?!保護しなさいって言ったでしょ!」
「センセ~、スティーブンは保護の仕方を知らないんだって」
「ああ~、訳有り君ね。いいわ、教えてあげるから、ちゃんとするのよ」
「はい」

スティーブンは医務室の番人とされるエルグランドと言う名のオネエさんに豆の保護の仕方を聞いた。
スティーブンはここに来てやっと人の話を聞くようになった。
分からないこともほっとかずに質問するようになった。
そうすると、不思議なことに友人と言える相手が現れた、スティーブンを医務室に案内してくれた同僚たちだ。

何も知らなくて、出来ないスティーブンを心配して色々助けてくれるのだ。
スティーブンはダリーホックに来てから人に恵まれるようになった。

「ありがとう、ジャック」
「良いってことよ!それよりそんなに貯めてどうするんだ?」
「うん。謝らないといけないんだ……私が傷つけてしまった子たちに」
「ふーーん。金を渡すのか?」
「それは別にとってあるけど、これはその子たちに会う時に変な格好ではいけないから」
「あ!服とかを買うためのヤツな!分かる!ここだと支給品があるから気にならないけど、ここを出たら自身の金で生活しないといけないもんな」
「うん。だから、今から貯めておくのさ。出た時にちゃんとしたのを買えるように」
「なるほどな。俺も貯めようかな~。自分のために使う金があっても良いよな」
「良いと思う」

同僚とそんな話もできるようになった。
スティーブンは自身が貴族であったことを忘れて、これからの生活を考えるようにした。
平民として生活しなければならないのだから物の価値やお金の使い方や生活の仕方を学ばなければならない。

スティーブンはその講習にも積極的に参加している。
今まで遊び続けていたのを反省しているのだ。
同僚たちと昼食を一緒に取り、午後の仕事をこなし、講習にも参加し、決められて時間内に風呂に入り、就寝前にはマリリンやエリアンティーヌやフォルクスや両親に向けて懺悔をし、休むと言う模範的な生活を送るようになっていた。

それは見せかけではなく、強制労働期間ずっと行われていた。
やっと自身のやった事や周りに目を向けれるように成長したと言える。
スティーブンは賠償金を返しきるまでしっかりと働いていた。
その後はダリーホックでできた同僚件友人たちと共に過ごすことが多くなった。
スティーブンは改心できたようだった。

スティーブンがマリリンの墓参りやエリアンティーヌたちに会ったかは別の話であるが、スティーブンが改心出来たことは父親には伝わっていた。
父親は手を差し伸べる事はしなかったが、変わることができた我が子に喜んでいたとのことだ。





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