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28 sideナディア・俯瞰視点
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貴族牢に入れられたナディアは荒れ狂っていた。
自身がアバント伯爵家を失墜させかねないことをしていたと聞かされてもナディア自身はそこまで重く受け止めていない。
そこを守るために奔走し、ナディアのために動くマリリンと言う構造は変わらない。
それがマリリンの役割だとナディアは思っていたからだ。
ナディアが受け入れられないのは子爵令嬢であったナディアよりマリリンが上の位・王族だったことだ。
「嘘よ、嘘よ、嘘よ!あの女が、あの女が…王女だなんて!ましてや、あの女の娘も王族だなんて……あり得ない!」
ナディアにして見ればスティーブンと結婚して伯爵夫人となり、生まれた子供をより上の貴族に嫁がせて自らの地位を上げること企んでいた。
勿論、スティーブンの事も愛していた。
そうでなければ、ナディアは分不相応にもっと上の位の男を漁っていただろう。
しかし、王命とは言え、スティーブンに別の女との結婚話が上がったのだ。
ナディアの心中は荒れ放題だった。
スティーブンもそんなのを納得できなかった、そのために相手であるマリリンの本当の位も聞いていなかった。
伯爵家に王族が嫁ぐことなどほとんどない。
伯爵家は王族と関われる最下位の貴族である、その下の子爵や男爵などはほとんど目にかかることなどない。
あるとすれば、叙爵や襲爵される時か降爵や奪爵される時ぐらいなものだろう。
あとは学園ぐらいだ。
学園には貴族の子息令嬢が集まる。
学園では確かに身分を隔てた付き合いを認めているが社交界前の練習という意味合いが大きい学園生活ではあまりその恩恵は少ない。
第一それは下の身分でも優秀な者を拾い上げる為の処置の一つでもある。
だが、稀に何を勘違いしたのか、下の身分の令嬢が上の身分の子息を手に入れようとする事件がある。
第一家同士の婚約で学園に入学する前から婚約者が決まっている場合が多いので大きな問題にもなる。
今回の件に関しては王命であるので関係ないが。
「私の方が切り捨てられていた……スティーブンを愛しているのは私なのに、サリフィアも失っていた……」
ナディアはブルリと震えた。
信じていた幸せが本当は手に入らなかったのだと教えられて。
そして、屈辱でもあった。
自身の行動がアバント伯爵家を貶めそうになり、最も憎い相手であるマリリンとその娘のエリアンティーヌに守られていたのが。
しかし、ナディアの気はすまなかった。
本当ならマリリンをもっと下にしたかった。
もしくは追い出したかった。
でも、出来なかった。
マリリンが嫁いできた時に連れてきた侍女や従者たちがそれを阻んだ。
食事の輪に入れたくなかったが、第一夫人であるマリリンやエリアンティーヌが来なければ食事が自分たちの前に運ばれなかった。
どんなに言っても、命令しても、怒鳴っても来なかった。
エリアンティーヌが来なければフォルクスも現れない始末だった。
マリリンやエリアンティーヌが自室で食べると事前に言っていた時だけ運ばれていた。
パーティーにマリリンではなく、ナディアを連れていっても二人とも入れて貰えなかった時もある。
第二夫人であるナディアは呼んでないと、ちゃんと招待状に書かれているように第一夫人のマリリンを伴うように苦言を呈された時もある。
パーティーで恥をかかせようとドレスを注文できないようにした時もあったが失敗した。
マリリンの侍女たちが事前に調べていつの間にかドレスを調達していた。
そして、そのドレスはパーティーで評判に成る程だった。
宝飾品も買えないようにしたがいつの間にか手に入れていた。
それも最先端のものを。
アバント伯爵家のお金はマリリンやエリアンティーヌに行かないようにしたのに必ず手に入れていた。
しかし、当たり前であった。
マリリン自身は商会を営む商会長である。
お金なら自身のがあるのだ。
むしろ、アバント伯爵以上の財産が。
屋敷内の使用人の半分はマリリンが連れてきた者たちなのでナディアやサリフィアたちの言うことなど聞かない。
唯一できたのが招待状を隠す事だったとも言える。
それだって見つかってしまう時があるので嫌がらせはだいたい失敗しているため、ナディアは消化しきれない不の感情が渦巻いていた。
それに来て今回、マリリンもエリアンティーヌも隣国の王族籍を持ったいることが判明し、当主として育てているつもりだったフォルクスにも切り捨てられた。
「何で、何でよ!フォルクスを産んだのは私よ!私が母親なのに!何で……あの女の娘にとられるの…………」
ナディアは分かっていなかった。
確かにフォルクスを産んだのはナディアだ。
だが、乳飲み子の際は同時期に出産したメイドに世話を任せ、三つになると国からも教育者に適さないとブラックリストに載っているような相手をちゃんと調べもせずに家庭教師として付け、助けを求めたフォルクスを叱り、出来ても誉めることもせずに当たり前だと、もっとちゃんとやれと言い続け、エリアンティーヌに懐くと憎たらしく思い、エリアンティーヌと同じように邪魔者のようにすればそれは嫌われる。
むしろ、暴力から助けてくれ、甘やかしてくれ、時に厳しくも導いてくれるエリアンティーヌにフォルクスが懐くのは当たり前でもある。
ナディアは自分のしてきた事がフォルクスを思っての事だと本気で勘違いしている。
両親に愛され、甘やかされ、誉められるサリフィアという比較対象がいながらそこに愛情を見出だすなど誰にだって出来ないことである。
たとえ、比較対象がいなかったとしてもナディアの行動のどれを取っても愛情を見出だすなど無理だ。
ナディアは自分の行動に反省はしていない。
何で、どうして、と頭を抱えていた。
自身がアバント伯爵家を失墜させかねないことをしていたと聞かされてもナディア自身はそこまで重く受け止めていない。
そこを守るために奔走し、ナディアのために動くマリリンと言う構造は変わらない。
それがマリリンの役割だとナディアは思っていたからだ。
ナディアが受け入れられないのは子爵令嬢であったナディアよりマリリンが上の位・王族だったことだ。
「嘘よ、嘘よ、嘘よ!あの女が、あの女が…王女だなんて!ましてや、あの女の娘も王族だなんて……あり得ない!」
ナディアにして見ればスティーブンと結婚して伯爵夫人となり、生まれた子供をより上の貴族に嫁がせて自らの地位を上げること企んでいた。
勿論、スティーブンの事も愛していた。
そうでなければ、ナディアは分不相応にもっと上の位の男を漁っていただろう。
しかし、王命とは言え、スティーブンに別の女との結婚話が上がったのだ。
ナディアの心中は荒れ放題だった。
スティーブンもそんなのを納得できなかった、そのために相手であるマリリンの本当の位も聞いていなかった。
伯爵家に王族が嫁ぐことなどほとんどない。
伯爵家は王族と関われる最下位の貴族である、その下の子爵や男爵などはほとんど目にかかることなどない。
あるとすれば、叙爵や襲爵される時か降爵や奪爵される時ぐらいなものだろう。
あとは学園ぐらいだ。
学園には貴族の子息令嬢が集まる。
学園では確かに身分を隔てた付き合いを認めているが社交界前の練習という意味合いが大きい学園生活ではあまりその恩恵は少ない。
第一それは下の身分でも優秀な者を拾い上げる為の処置の一つでもある。
だが、稀に何を勘違いしたのか、下の身分の令嬢が上の身分の子息を手に入れようとする事件がある。
第一家同士の婚約で学園に入学する前から婚約者が決まっている場合が多いので大きな問題にもなる。
今回の件に関しては王命であるので関係ないが。
「私の方が切り捨てられていた……スティーブンを愛しているのは私なのに、サリフィアも失っていた……」
ナディアはブルリと震えた。
信じていた幸せが本当は手に入らなかったのだと教えられて。
そして、屈辱でもあった。
自身の行動がアバント伯爵家を貶めそうになり、最も憎い相手であるマリリンとその娘のエリアンティーヌに守られていたのが。
しかし、ナディアの気はすまなかった。
本当ならマリリンをもっと下にしたかった。
もしくは追い出したかった。
でも、出来なかった。
マリリンが嫁いできた時に連れてきた侍女や従者たちがそれを阻んだ。
食事の輪に入れたくなかったが、第一夫人であるマリリンやエリアンティーヌが来なければ食事が自分たちの前に運ばれなかった。
どんなに言っても、命令しても、怒鳴っても来なかった。
エリアンティーヌが来なければフォルクスも現れない始末だった。
マリリンやエリアンティーヌが自室で食べると事前に言っていた時だけ運ばれていた。
パーティーにマリリンではなく、ナディアを連れていっても二人とも入れて貰えなかった時もある。
第二夫人であるナディアは呼んでないと、ちゃんと招待状に書かれているように第一夫人のマリリンを伴うように苦言を呈された時もある。
パーティーで恥をかかせようとドレスを注文できないようにした時もあったが失敗した。
マリリンの侍女たちが事前に調べていつの間にかドレスを調達していた。
そして、そのドレスはパーティーで評判に成る程だった。
宝飾品も買えないようにしたがいつの間にか手に入れていた。
それも最先端のものを。
アバント伯爵家のお金はマリリンやエリアンティーヌに行かないようにしたのに必ず手に入れていた。
しかし、当たり前であった。
マリリン自身は商会を営む商会長である。
お金なら自身のがあるのだ。
むしろ、アバント伯爵以上の財産が。
屋敷内の使用人の半分はマリリンが連れてきた者たちなのでナディアやサリフィアたちの言うことなど聞かない。
唯一できたのが招待状を隠す事だったとも言える。
それだって見つかってしまう時があるので嫌がらせはだいたい失敗しているため、ナディアは消化しきれない不の感情が渦巻いていた。
それに来て今回、マリリンもエリアンティーヌも隣国の王族籍を持ったいることが判明し、当主として育てているつもりだったフォルクスにも切り捨てられた。
「何で、何でよ!フォルクスを産んだのは私よ!私が母親なのに!何で……あの女の娘にとられるの…………」
ナディアは分かっていなかった。
確かにフォルクスを産んだのはナディアだ。
だが、乳飲み子の際は同時期に出産したメイドに世話を任せ、三つになると国からも教育者に適さないとブラックリストに載っているような相手をちゃんと調べもせずに家庭教師として付け、助けを求めたフォルクスを叱り、出来ても誉めることもせずに当たり前だと、もっとちゃんとやれと言い続け、エリアンティーヌに懐くと憎たらしく思い、エリアンティーヌと同じように邪魔者のようにすればそれは嫌われる。
むしろ、暴力から助けてくれ、甘やかしてくれ、時に厳しくも導いてくれるエリアンティーヌにフォルクスが懐くのは当たり前でもある。
ナディアは自分のしてきた事がフォルクスを思っての事だと本気で勘違いしている。
両親に愛され、甘やかされ、誉められるサリフィアという比較対象がいながらそこに愛情を見出だすなど誰にだって出来ないことである。
たとえ、比較対象がいなかったとしてもナディアの行動のどれを取っても愛情を見出だすなど無理だ。
ナディアは自分の行動に反省はしていない。
何で、どうして、と頭を抱えていた。
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