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二章

はつゆき!②

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「ぐぁべこっ!!!」

 ブレイクの投げた雪玉がエスの顔面にヒットした。

「クッ……隊長、良い球です……さあ! もっとこい!!」
「だからアウトだからコートの外に出ろって言ってんだろ。これはお前らの欲求を満たすコーナーじゃねぇの」
「なんと……!」

 エスは愕然としつつも大人しくコートの外に出た。

「よーしこれで邪魔な奴らが排除できたな。これからは普通の雪合戦の始まりだ」
「「え、ひどい」」

 邪魔な奴1と2は呟いた。



***



「あつい」

 雪合戦は中々に白熱し、シロの体を温めるには十分だった。

「パパあつい。これ取っていい?」
「この後も雪で遊ぶなら手袋はしとけ。しもやけになっちゃうからな。マフラーと耳当てはとってもいいぞ」
「は~い」

 微かに汗ばんでいるシロはもぞもぞとマフラーと耳当てを外していく。すると心地よい冷気が首筋に当たりシロを清々しい気分にさせた。


 エルヴィスがかがんでシロと目線を合わせる。

「よーしシロ、次はなにしたい?かまくらに滑り台に雪だるま、なんでもござれだぞ?」
「じゃあね、次は滑り台!」
「おう! 俺達がとびっきりの滑り台作ってやるよ!」
「きゃ~!!」

 何ができるかよく分かっていないがシロは大喜びだ。



 そして約一時間後、特殊部隊作の滑り台が完成した。

「……ちょっと気合を入れ過ぎた気がするな」

 特殊部隊の面々が一丸となって作った雪の滑り台は、皆が力を入れ過ぎて傾斜がほぼ九十度近くになっていた。シロとアニは滑り台の天辺から地面を覗き込んだ。

「……これじゃあほぼ紐なしバンジーだね」
「気合入れ過ぎて高く作りすぎちゃったしねぇ」

 滑り台の高さはおよそ三メートルにも上っている。

「シロちゃん危ないから下りよっか。これはもう滑り台じゃないよ」
「そうだね。あ」
「シロちゃん!!」

 シロが足を滑らせて滑り台から落下する。アニはシロを受け止めようと咄嗟に滑り台から飛び降りた。

 ポスッ

「シロ大丈夫か?」
「あい」
「ぐえっ!」

 シロは見守っていたブレイクに難なく受け止められ、アニは幸いにも雪のクッションの上に落下した……顔面から。
 エルヴィスとシリルが雪に埋もれているアニを上から覗き込む。

「おいアニ無事か?」
「だいじょーぶ?」
「……大丈夫」

 雪からムクリと顔を上げたアニの鼻は真っ赤になっていた。





 雪遊びに一段落着いたところでオッサンが隊舎の中から皆を呼びに出てきた。

「お~いお前ら~、一回休憩しろよ。この前の残りで温かいおしるこ作ったから」
「「「お母さん……」」」
「オッサンだわ」


 一同はおしるこを食べて体を温めた後、かまくらを作ることにした。
 腹ごしらえをして元気になったシロが高らかに宣言する。

「おっきいかまくらを作るの!」
「「「お~!」」」



「うんしょ、うんしょ」

 シロはコロコロと雪玉を転がして雪を集めていった。すでにその大きさはシロの背丈を超えている。

「シロ、そろそろ固めるぞ」
「は~い」

 ブレイク達は協力して雪をかまくらの形に整えていった。

「よし、こんなもんか。あとは中身をくりぬいてくぞ」
「は~い。……ねぇ、ところでエスはどうして薄着なの?」

 エスは時間が経つに従ってどんどん洋服が薄くなっていっていた。朝はコートなどをきちんと着込んでいたが、今ではワイシャツとズボンのみの装備となっている。いくら動いて体が熱くなっているといっても軽装備過ぎる。

「エス、寒くないの?」
「寒いですよ。でもこの最早痛みともいえる寒さが癖になります。こう……背中にゾクゾクッとくるものがありますよね」
「それ多分寒気だよ」

 風邪ひいちゃうから上着着たら? とシロが続ける。
 その様子をエルヴィスとブレイクは少し離れた所から見ていた。

「あんなのを心配してあげるシロは天使かな? てか、あいつそのうち全裸で作業しそうですね」
「シロの教育に悪いから全裸にはさせん」
「風呂は一緒に入ってもいいのに?」
「風呂で全裸になるのと外で、しかも雪が積もってる中全裸になるのは意味合いが違うだろ」
「ああ、確かに」







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