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こぼれ話
大人達の会合
しおりを挟むある日の昼下がり、シロが昼寝をしている間に大人達による会合が行われていた。
殿下は優雅な動作でカップをテーブルの上に置く。
「……ブレイク、そのワンコはなんだ」
「俺を差し置いてシロとお昼寝をしようとしてたから無理矢理引きずられて来たクロくんだ」
「なるほど、それは許せんな」
「……ゆるせないのはこっち……」
クロは不貞腐れて地べたに寝そべった。
ふて寝だろうか。
クロの襟首から手を離したブレイクは、殿下の正面に腰掛ける。
「それで?今日は何の用なんだ」
「いつも通りシロと戯れにな。ついでに仕事を持ってきた」
「ついでに仕事なんですね……」
茶菓子を持ってきたエルヴィスが突っ込んだ。ちなみに、この場にはシロ以外の特殊部隊隊員が全員揃っている。
「まあ仕事の話は後だ。それよりも……」
そう言って殿下はアニを見据えた。
「アニ、お前が作ったシロのアルバムをボクにも譲ってくれないだろうか。何なら言い値で買う」
「え、俺王子様からぼったくれちゃう感じ?」
「こらアニ!」
ぼったくり宣言をしたアニにすかさず兄からの叱責が飛ぶ。
だがそんなことは日常茶飯事なので特に気にせずアニは続けた。
「でも殿下が影に命じて撮らせてる写真よりもはるかに枚数少ないですよ?」
「まあそうなんだがな、カメラ目線の写真がほぼないんだ」
「ああ……」
「今ちょっとトンデモナイことを聞いた気がするんだけど!?」
「シロが気紛れに影に向けてポーズをとる時のくらいしかないんだ」
「本人公認なんだ……」
「ウチの娘がそれくらい気付かないわけないだろう」
娘を自慢するブレイクはどこか誇らしげだ。
「最近は影達もシロの魅力に気付いちゃったみたいでねぇ。休日返上でシロの盗さt……護衛に精を出す始末だ」
「盗撮の自覚あってよかったよ」
ブレイクの返答に殿下は誤魔化すようにニッコリと笑って返した。
「はぁ、で、結局殿下はそのストーカー予備軍の撮ってくる写真じゃ満足できなくなったと」
「だって目線の合わない写真だけ持ってるなんてストーカーみたいじゃないか」
「自覚があって何よりだ。あとついでに殿下も影もロリコン臭いぞ。お前達はみんなアニの後継者だな」
「ちょっ!!止めて下さいよ隊長!」
ここで声をあげたのは殿下ではなく何故かアニだった。
「なんだ、お前はロリコンだろ?」
「俺はロリコンですよ!でもそんな影からハァハァしてる奴等と一緒にしないで欲しいです!俺はハァハァするなら正面からハァハァするんで!!!」
「……悪かった」
珍しくブレイクが素直に謝った。その表情はドン引きのそれだったが。
本気で怒った訳ではないので、アニの怒りはすぐにおさまった。
「はぁ、まあアルバムは差し上げますけどね。対価はお金じゃなくて性能の良いカメラとかがいいです」
「手配しよう!」
殿下が喜びの声をあげると、それまで寝ていたクロがむくりと起き上がった。
「……アニ、おれもほしい」
「え?」
「おれもほしい」
「シロのアルバムか?」
アニが聞き返すとクロはコクリと頷いた。
「クロが物を欲しがるなんてっ!!いいぞっ!何冊でもやろう!!」
「ん……」
これまで悟りを開いたのかと言いたくなるくらい物欲がなかったクロの要求に、アニは感動すら覚えた。
「隊長は頼まなくてもいいんですか?」
「あ?娘のアルバムをまず最初に父親に献上するのは当たり前だろ」
「……そうですね」
エルヴィスは一応後でアニに伝えておくことにした。誰でも弟が上司に半殺しにされる姿は見たくない。
「ん……ぱぱ?」
どうやらシロが起きてきたようだ。
あくびをしながら右手にエンペラー、左手にぬいぐるみを抱いてトコトコ歩いてくる。
「シロおいで」
「んん~」
ブレイクが両手を広げて呼ぶと、自らも両手を広げ父に抱きついた。
そしてまだ若干寝ぼけたままブレイクの胸元に頬を擦り付ける。
「甘えん坊だな」
「うにゃ」
シロと接するブレイクは、どこからどう見ても父親の顔をしている。
「殿下、今の心境は?」
「ただただ羨ましい」
殿下は素直な男だった。
「殿下はまだ帰らないのか?」
ブレイクが遠回しに帰れと訴える。
「いやまだ用事が済んでない……って、ああ、忘れるところだった。シロも起きてきたことだし、今のうちに今回頼みたい仕事内容を伝えておこう」
「そういえばそんなこと言ってたな」
どんな仕事なんだ?とブレイクが問う。
「そうだな、仕事内容を端的に言えば、盗賊から盗みをしてきて欲しいんだ」
「「「「……え?」」」」
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