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父さまは母さまを喜ばせたいようです
しおりを挟む「ミィ、ちょっといいか」
「はいです」
コウ君とカードゲームで遊んでいると、なにやらコッソリ現れた父さまに声を掛けられた。
「父さまどうしたんです?」
「今日の仕事はもう終わってな。あとオルトが明日も休みにしてくれた」
オルトとはこの国の宰相さんです。
それにしても、まだ昼食が終わって一時間くらいしか経ってないのに。お仕事が終わるにしては随分早いですね。
「……あ、もしかして母さまが帰ってきてるからソワソワしてたんです?」
「……!」
図星みたいです。
父さまは何も、母さまに怯えてソワソワしてるわけじゃないんです。むしろその逆で母さまに構ってもらいたくて、構いたくて落ち着かないんですよ。意外とラブラブな両親なのです。
オルトさんもそれが分かってるから生温かい目で父さまに休みをあげたんでしょうね……。
「じゃあなんですぐグロリアさんに会いに行かないんだ?」
「間男に言われるまでもなくそうしたいが……」
「俺の呼び方間男に定着しちゃったんだ」
コウ君が父さまに突っ込む。
「グロリアに何か贈り物をしようと思ってな。ミィはまだ赤子だが女子だ。女性はなにをもらったら喜ぶのか教えてもらおうと思ってな」
「ミィはもう赤ちゃんじゃないのです」
むぅ。
「贈り物もいいけど、せっかく帰ってきてるんだから一緒に過ごせばいいいのに」
「やかましいぞ間男」
「ミィもそう思うのです」
「やっぱりミィもそう思うか」
「清々しい程の依怙贔屓だな」
納得のいかなそうな目でコウ君が父さまを見ますが、父さまはスルーです。
「じゃあ明日はグロリアを誘って街に出かけてくる……」
「デートですね父さま!」
「う……うむ……」
父さまは少し頬を染めて頷きました。モフ丸とはまた違ったかわいさがあるのです!
「じゃあデートの終わりに母さまになにか贈りましょ~!」
「そうだな」
カードは片付けて、父さまとコウ君と、母さまへのプレゼントを話し合うことにしました。
「やっぱり身に付けられるものがいいだろうな」
「その心は?」
「ミィは分かってないな。愛する旦那からのプレゼントだぞ?実用的な物とか消えものよりはアクセサリーとかがいいだろ」
「ふむ」
コウ君のアドバイスを、父さまが真剣に頷きながら聞いてます。
「例えばコウ君だったらどんなものを贈るんですか?」
「ふぇ!?……そ、そうだな、俺だったらネックレスとか髪飾りとかかな……指輪とかはまだ早いし……ま、まあ、ミィにやるとは言ってねぇけど!?」
「なるほど、ミィにくれる予定なんですか」
「清々しい程ツンデレだなお前」
「そんな目で見んな!」
コウ君は真っ赤な顔であわあわしてます。ついに真っ白な羽で体全体をすっぽり覆ってしまいました。
そんな使い方もできるんですね。うらやましいのです。
おっと、繭になっちゃったコウ君は置いといて、今は父さまです。
「母さまだったらイヤリングとかどうですか?」
「イヤリングか……いいな。グロリアはいつもイヤリングを着けてるしな。どういうデザインのがいいと思う?」
「それは父さまが決めるべきなのです!ほら!今日のうちに買いにいってください!!」
私は父さまを立たせ、背中を押して部屋から追い出します。
「だ、だが、グロリアが好まないデザインを選んでしまったら……」
「母さまは父さまが選んでくれたらなんでも嬉しいですよ!あ、他の女の人に聞いたりしないで自分で選ぶんですよ!」
「分かった」
「よし、です!」
父さまは覚悟を決めた顔をして目の前から消えた。おそらく転移でイヤリングのお店に向かったんでしょう。
健闘を祈るのです、父さま!
私は敬礼をして父さまを送り出しました。もう既にいないんですけどね。
「でもミィいいのか?」
「なにがです?」
「せっかくグロリアさんが帰ってきたのに、ミィだってお母さんに構ってもらいたいだろ?」
コウ君が心配げな瞳でミィを覗き込んでくる。
……そうでした、コウ君は前世でもこうやって細かいことを気遣ってくれる子でしたね。
「いいのです。明日だけは母さまには父さまを、父さまには母さまを貸し出してあげるのです!」
「そうか」
「はい!」
優しい目をしたコウ君に頭を撫でられる。
「じ、じゃあ、しょうがないから、明日は俺が遊んでやらないこともないぞ?」
「お願いしますなのです!」
明日は相変わらず素直じゃないコウ君と遊んであげましょう。
***
デートから帰ってきた母さまのお耳には、青色に輝くイヤリングが付いていた。
うまくいったんですね!父さま!
父さまとアイコンタクトをとると、軽く微笑んで頷いてくれた。父さまも母さまも楽しめたようでよかったのです!
「ミィおいで」
「はいです!」
父さまに呼ばれたのでテコテコ歩いていく。すると、父さまに抱き上げられた。
「ミィ、今日は父様と母様と寝ましょう」
「いいんですか!?」
嬉しいのです!
「もちろんよ。母さまに甘えて頂戴?」
父さまの肩越しにコウ君と目が合った。わたしと目が合うと、コウ君はニッと笑う。
……もしかして、コウ君が父さまと母さまになにか言ってくれたんでしょうか……。
口パクでコウ君にありがとうと言うと、コウ君は軽く微笑んで頷いてくれる。
その日は父さまと母さまの二人に挟まれて寝ました。
二人とも、ミィのほっぺにおやすみのちゅーをしてくれました。でも、お互いにはしないから「二人はおやすみのちゅーしないのですか?」って聞いたら父さまも母さまも赤くなってました。
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