前世は猫、今世は(文字通り)魔王の箱入り娘です!

雪野ゆきの

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モフ丸とお勉強

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「ミィ、今日こそお勉強するよ」
「や!なのです!!」
 クッションに顔を埋めてリーフェ兄さまの視線から逃れる。

 背後でモフ丸がため息を吐いた気配がしました。
「ミィ」
「なんです?」
「我は今までずっと人界にいたから魔界周辺のことは知らんのだ。だからミィが教えてくれぬか?」
「ぬ……」
 ミィ、教えを請われちゃいました。今までこんなことなかったからちょっと嬉しいのです。

「いいでしょう!ミィがモフ丸に教えてあげるのです!」
「助かるぞミィ」
 モフ丸に抱き着いていたミィは、その後ろで二人がこっそりアイコンタクトをしていたことなんて知る由もありませんでした。

「いいですかモフ丸、この世界は魔界、人界、そして天界の三つからなってます」
「うむ」
「モフ丸も知ってるとは思いますが、人界と魔界は仲が良くないのに対して人界と天界は結構仲良しです。でも、それと同じくらい魔界と天界も仲が良いのですよ」
「ほう。それは意外だな」
 人界の物語の大半は魔界と天界の仲は悪く書かれてますからね。
「魔界人は天界の、天界人は魔界の空気が合わないからあんまり移住とかはしてないだけなのです」
 私の話を肯定するようにリーフェ兄さまが頷いている。
「ほお」
「ミィの母さまも天界人なのですよ」
「なんと!」
 モフ丸ビックリしてます。
「ではミィは魔界と天界のハーフなのか」
「ハーフ!」
 いい響きです。確かにそう言われるとミィはハーフですね。
「ではミィは天使のように羽が出たりするのか?」
「残念ですけど、ミィは父さまの血が濃いみたいで羽は出ないのです」
 母さまは羽ありますけどね。母さまの羽はフッカフカで包まれるとほっとするのです。

「……母さまに会いたくなっちゃったのです……」
「すぐには会えぬのか?」
「母さまは天界の方でお仕事してますし、あまり長い時間魔界にはいられないからあんまりあえないのです……」
 しょぼん。
「そうだったのか。ミィの母上はどのような仕事をしているのだ?」
「はて? どんなお仕事でしょう」


「さあ、じゃあ今日は母上がどんな仕事をしているのかをお勉強していこうか」
「うげっ……!」
 リーフェ兄さまがニッコリ笑ってます。普段は癒されるはずの笑顔なのに今は威圧しか感じません。
「ミィ? 逃げちゃダメだよ? モフ丸にかっこいい所を見せようね」
 うっ、兄さま、ミィに勉強させる絶好のチャンスだって顔してます。逃がしてくれそうにない気配です。
「ミィ、我と一緒に勉強しようぞ」
「……はぁい」
 ミィは大人しくリーフェ兄さまのお膝に座りました。逃げ出さないようにか、後ろからギュッと片腕を回されます。
 しょうがない。今日は真面目に勉強することにするのです。

「モフ丸!ミィの勇姿をちゃんと見てるのですよ!」
「うむ」
 モフ丸は、まるで孫を見守るおじいちゃんみたいな目をして頷いた。


 ……兄さまとモフ丸に上手くのせられた気しかしないのです。














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