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第1章 第3話 張り巡らされし道
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「本来人がいないエリアなのにユーザー反応があって気になったから、調査しに来てたんだ」
愛莉達を助けた巴は、彼女達と共に暗い通路を歩いていた。あちこちにデータ処理用のチューブが張り巡らされていて、余計に狭いと錯覚させられる。
「あの…助けてくれて、ありがとうございます」
「ま、放っておけないでしょ。さっきの穴はもう塞がってるから、追手が入って来る心配はないよ」
愛莉は巴に感謝していたが、今歩いている通路は何なのか疑問に思っていた。本来アナザーアースでは、そもそも"壁が物理的に崩れる"という現象事態起きないはずだが…
「この通路ね、私が作ったの」
「アナザーアースの壁の中に道を…特に権限は持ってないですよね?」
「持ってないよ。プログラムを壊して道を作ったけど、許可は取ってないな」
「…それって違反行為じゃないですか」
「この辺り、ちゃんとメンテナンスが行われてないから…私の勝手でしょ」
(この人…大丈夫なのかな?)
アナザーアースの利用規約に違反している事を気にしていない巴を見て、朱音は不安になっていた。愛莉よりも小柄な体格の巴が何者なのかも、朱音は把握できていない。
「愛莉さん…この人は誰なんです?」
「私は西園寺巴、アカデミーの研究者だよ」
「アカデミーの研究者?愛莉さんより年上なんですか?」
「そうだよ。ちょーっとだけ背が低いから分かりにくいかもしれないけどね」
(割とちっちゃい気が…)
「君が何考えてるか分かってるよ。その内私も、大人らしい体型になるさ」
西園寺巴は小柄な体格な上に幼い顔立ちだったので、中学生と間違えられても無理はないだろう。19歳の彼女がこれから背が伸びるというのも、非常に怪しい話である…
「さて、と…それじゃあ早く鼎と合流しないとねね」
この通路を通れば、賭場の追手に追いつかれる心配は無いだろう。愛莉は足止めをしてくれた鼎の所に早く行きたかった。
「この辺りに来てるのは、賭場の連中だけじゃなさそうなんだよね…」
「どういう事ですか?」
「データが改竄されているせいでよく分からないユーザーがこの辺りを出入りしている…賭場とは関係ない妙な奴らもここを出入りしてる可能性があるんだ」
「…危険な人の可能性が高いんですよね?」
ユーザーデータを改竄している人は、大抵が後めたい事情を持つ者だ。そうした者がこのブロックで良からぬ事をしようとしている可能性が高いのだ。
「私たちも監視されている可能性がある」
「え…何の目的で?」
何者かに監視されていると聞いた愛莉は、不安になっていた。彼女は、自分にも危害が及ぶ可能性がある事を恐れていた。
「早く鼎と合流して、その子をログアウトさせないとね…」
ーー
「はぁっ…ぐっ!」
「よく頑張るなぁ」
鼎のアバターは既に関節がいくつか破壊されていて、満身創痍の状態だった。美しい体つきをしたアバターだったが、既にあちこちでノイズが発生して痛々しい見た目になっていた。
「あの子に手を出させは…」
「俺らはロリコンじゃねえよ。依頼人に引き渡すだけさ」
アバター売りに雇われた男達は、既にボロボロの鼎を放置して朱音を探しに行こうとした。鼎は立ち上がるのも困難な状態で、彼らを止める事は不可能だった…
ガンッ!
「がはっ⁉︎」
「な、何が…」
朱音を探しに行こうとした男たちが、突然吹っ飛んだ。吹っ飛ばされた男のアバターは、既に頭部の損傷が激しい状態だった。
「ふー、スッキリした」
「桃香…ありがとう」
「どういたしまして。他の追手も全員倒したはずだよ」
「もう…?やっぱり貴方、すごいのね」
ネカマ呼ばわりにブチ切れた桃香は、アバター売りとその部下を既に殲滅していた。関節など重要部分を破壊していたので、追手達は既に再起不能になっていた。
「彼ら…放置して大丈夫かな?」
「その内勝手にログアウトさせられるから、問題ないよ」
アバターが大きなダメージを負っても、現実の肉体に害はない。もちろん、アナザーアース内でした行為について、現実で取り調べを受ける事になる可能性はあるが…
「それよりも朱音チャンは大丈夫なの?ボク、結構広範囲で暴れたけど、見かけなかったよ」
「何ですって…まさか賭場の人間に捕まったんじゃ…」
鼎達は朱音達のの行方を探す為に、愛莉のデバイスに連絡を取ろうとした。しかし繋がらず、今もこのブロックにいるのか分からない状態だった。
「賭場の人に捕まったとしたら、ブラックエリアに…」
ガシャン!
「うわっ!壁が!」
「鼎大丈夫?随分派手にやられてるように見えるけど」
「巴…ついて来ないんじゃなかったの?」
突然白い壁が崩れて、穴から小柄な体格の女性が顔を出した。小柄な女性…巴に続いて、愛莉や朱音も壁に空いた穴から出て来た。
「カナエさん!大丈夫ですか⁉︎」
「アイリこそ無事で良かった…デバイスに連絡がつかなかったから不安になったよ」
「あー…この通路、普通のデバイスじゃ電波通せないからね」
ーー
「賭場の連中以外にも出入りしてる人間がいるのか…」
「運営の人達じゃないの?」
「運営側のユーザーだったら、ちゃんと情報が読み取れる。今回は改竄されていて、まともに読めなかった」
巴は鼎と桃香にも、賭場の人間以外の出入りがある事を伝えていた。桃香は運営側かもと思ったが、それ以外となると深刻だという事も分かっていた。
「それじゃ、さっさとログアウトエリアに行った方が良さそうね。アカネ、もうすぐ現実に帰れるからね」
「うん…大丈夫、だよね?」
鼎達は巴と一緒に、ログアウトエリアへと急いだ。
わずかな不安を感じながら…
愛莉達を助けた巴は、彼女達と共に暗い通路を歩いていた。あちこちにデータ処理用のチューブが張り巡らされていて、余計に狭いと錯覚させられる。
「あの…助けてくれて、ありがとうございます」
「ま、放っておけないでしょ。さっきの穴はもう塞がってるから、追手が入って来る心配はないよ」
愛莉は巴に感謝していたが、今歩いている通路は何なのか疑問に思っていた。本来アナザーアースでは、そもそも"壁が物理的に崩れる"という現象事態起きないはずだが…
「この通路ね、私が作ったの」
「アナザーアースの壁の中に道を…特に権限は持ってないですよね?」
「持ってないよ。プログラムを壊して道を作ったけど、許可は取ってないな」
「…それって違反行為じゃないですか」
「この辺り、ちゃんとメンテナンスが行われてないから…私の勝手でしょ」
(この人…大丈夫なのかな?)
アナザーアースの利用規約に違反している事を気にしていない巴を見て、朱音は不安になっていた。愛莉よりも小柄な体格の巴が何者なのかも、朱音は把握できていない。
「愛莉さん…この人は誰なんです?」
「私は西園寺巴、アカデミーの研究者だよ」
「アカデミーの研究者?愛莉さんより年上なんですか?」
「そうだよ。ちょーっとだけ背が低いから分かりにくいかもしれないけどね」
(割とちっちゃい気が…)
「君が何考えてるか分かってるよ。その内私も、大人らしい体型になるさ」
西園寺巴は小柄な体格な上に幼い顔立ちだったので、中学生と間違えられても無理はないだろう。19歳の彼女がこれから背が伸びるというのも、非常に怪しい話である…
「さて、と…それじゃあ早く鼎と合流しないとねね」
この通路を通れば、賭場の追手に追いつかれる心配は無いだろう。愛莉は足止めをしてくれた鼎の所に早く行きたかった。
「この辺りに来てるのは、賭場の連中だけじゃなさそうなんだよね…」
「どういう事ですか?」
「データが改竄されているせいでよく分からないユーザーがこの辺りを出入りしている…賭場とは関係ない妙な奴らもここを出入りしてる可能性があるんだ」
「…危険な人の可能性が高いんですよね?」
ユーザーデータを改竄している人は、大抵が後めたい事情を持つ者だ。そうした者がこのブロックで良からぬ事をしようとしている可能性が高いのだ。
「私たちも監視されている可能性がある」
「え…何の目的で?」
何者かに監視されていると聞いた愛莉は、不安になっていた。彼女は、自分にも危害が及ぶ可能性がある事を恐れていた。
「早く鼎と合流して、その子をログアウトさせないとね…」
ーー
「はぁっ…ぐっ!」
「よく頑張るなぁ」
鼎のアバターは既に関節がいくつか破壊されていて、満身創痍の状態だった。美しい体つきをしたアバターだったが、既にあちこちでノイズが発生して痛々しい見た目になっていた。
「あの子に手を出させは…」
「俺らはロリコンじゃねえよ。依頼人に引き渡すだけさ」
アバター売りに雇われた男達は、既にボロボロの鼎を放置して朱音を探しに行こうとした。鼎は立ち上がるのも困難な状態で、彼らを止める事は不可能だった…
ガンッ!
「がはっ⁉︎」
「な、何が…」
朱音を探しに行こうとした男たちが、突然吹っ飛んだ。吹っ飛ばされた男のアバターは、既に頭部の損傷が激しい状態だった。
「ふー、スッキリした」
「桃香…ありがとう」
「どういたしまして。他の追手も全員倒したはずだよ」
「もう…?やっぱり貴方、すごいのね」
ネカマ呼ばわりにブチ切れた桃香は、アバター売りとその部下を既に殲滅していた。関節など重要部分を破壊していたので、追手達は既に再起不能になっていた。
「彼ら…放置して大丈夫かな?」
「その内勝手にログアウトさせられるから、問題ないよ」
アバターが大きなダメージを負っても、現実の肉体に害はない。もちろん、アナザーアース内でした行為について、現実で取り調べを受ける事になる可能性はあるが…
「それよりも朱音チャンは大丈夫なの?ボク、結構広範囲で暴れたけど、見かけなかったよ」
「何ですって…まさか賭場の人間に捕まったんじゃ…」
鼎達は朱音達のの行方を探す為に、愛莉のデバイスに連絡を取ろうとした。しかし繋がらず、今もこのブロックにいるのか分からない状態だった。
「賭場の人に捕まったとしたら、ブラックエリアに…」
ガシャン!
「うわっ!壁が!」
「鼎大丈夫?随分派手にやられてるように見えるけど」
「巴…ついて来ないんじゃなかったの?」
突然白い壁が崩れて、穴から小柄な体格の女性が顔を出した。小柄な女性…巴に続いて、愛莉や朱音も壁に空いた穴から出て来た。
「カナエさん!大丈夫ですか⁉︎」
「アイリこそ無事で良かった…デバイスに連絡がつかなかったから不安になったよ」
「あー…この通路、普通のデバイスじゃ電波通せないからね」
ーー
「賭場の連中以外にも出入りしてる人間がいるのか…」
「運営の人達じゃないの?」
「運営側のユーザーだったら、ちゃんと情報が読み取れる。今回は改竄されていて、まともに読めなかった」
巴は鼎と桃香にも、賭場の人間以外の出入りがある事を伝えていた。桃香は運営側かもと思ったが、それ以外となると深刻だという事も分かっていた。
「それじゃ、さっさとログアウトエリアに行った方が良さそうね。アカネ、もうすぐ現実に帰れるからね」
「うん…大丈夫、だよね?」
鼎達は巴と一緒に、ログアウトエリアへと急いだ。
わずかな不安を感じながら…
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